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週刊金融日記 第102号 最近まで知らなかったことを10年前から知っていたかのように語る技術、プーチン大統領によるクリミア奪取作戦完了、銀座の鮨屋から学ぶディスる技術と褒める技術、ナンパにおけるフォロースルーの大切さ、他

// 週刊金融日記
// 2014年3月24日 第102号
// 最近まで知らなかったことを10年前から知っていたかのように語る技術
// プーチン大統領によるクリミア奪取作戦完了
// 銀座の鮨屋から学ぶディスる技術と褒める技術
// ナンパにおけるフォロースルーの大切さ
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 今週は、小保方晴子物語の後編を書こうと思っていたら、僕が先週のメルマガを書いた後に出版された週刊誌が、全て小保方晴子の記事がトップになっていて、理研の人間関係ネタはやり尽くされてしまった感があります。
 その中で読む価値がありクオリティが高かったのは、やはり週刊文春でした。他は、はっきり言ってネットに出ている情報の「切り貼り」だけで記事にしたような内容でした。時間ができたら、週刊文春の記事で明らかになったこともふまえて、このメルマガかブログに物語の後編を書きたいと思います。
 STAP細胞捏造事件に関しては、税金が無駄遣いされたこと、日本の科学技術研究の信用が傷ついたことなど、僕も色々と憤りを感じましたが、結果的には、僕は生命科学にものすごく明るくなれたので、個人的に良かったです。

『いまさら人に聞けない小保方晴子のSTAP細胞Nature論文と捏造問題の詳細 その1 TCR再構成と電気泳動実験』
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52004635.html

 さて、今週号では冒頭でビジネスに役に立つことを書いたので、恋愛工学の論考はレストラン紹介のコーナーに書きました。

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.最近まで知らなかったことを10年前から知っていたかのように語る技術

 世間というのは、専門家というものについて大きく誤解していると思う。
 まず、現代社会では、どんな分野でも専門がものすごく細分化されてしまっていて、世間で話題になるような新しい事件に対して、ピンポイントで専門分野であるという人が誰もいない、ということはよくあるのだ。
 たとえば、僕は表向きには、外資系投資銀行で10年近く働いてきたわけで、金融・経済の専門家ということになっているが、僕が実際に実務でやっていたことは、本当に専門的な細かいことで、金融・経済という言葉がカバーするものすごく大きな範囲を100としたら、そのうちで僕が直接的に業務でやっていたことは1とか2ぐらいである。
 だから、僕は金融・経済の問題に関してブログを書いたり、本を書いたりしてきたが、僕の本当の専門分野に関して書いたことはほとんどない、というのが実情だ。たとえば、僕が経済学の本を書くと、いちおうそういう専門家的なポジションなのである種の信頼があると思うかもしれないが、ぶっちゃけた話、僕が経済学の勉強をして経済学の本を書くのと、僕が細胞生物学の勉強をしてバイオの本を書くのも、そんなに大差がなかったりする。実際にやっていた業務のことを書いても、あまりにも細かい話過ぎて、ほとんどの人は関心がないので、商業的に全く成り立たない。
 また、僕は物理学の一分野の研究をしていたのだが、となりの分野の物理学の論文ですら、読んでもすぐにはよくわからないものである。
 このように現代の専門家は、本当に狭い分野の極めて細分化されたことだけが専門なのである。

 ということで、次から次に出てくる新しい話題に対して、たまたまそれが自分の専門分野である、と期待するのは根本的に間違っているし、専門分野じゃないからわからなくていい、なんて言い訳は通用しない。ビジネスでは、99%のケースで、自分の専門分野でないことを理解し、決断を下していかなければいけないのだ。そして、自分の専門分野であったら、正しい決断をできる、というものでもない。今度は逆に、全体を見通せなくなるし、ある意味でこだわりがあり過ぎて冷静に判断できなかったりする。

 僕が金融・経済についてコメントしていたのは、じつは本当の専門家としてではない、ということは、要するに、みんながメディアを通して聞いている専門家の意見というのは、ほとんどがじつは専門家の専門分野の話ではないのである。専門家風の人の専門分野っぽい意見である。
 たとえば、今回のSTAP細胞捏造の問題について、僕が気がついたことは、分子生物学の専門家でさえ、捏造問題の細かいことはよく理解していないことだった。STAP細胞の論文で使われたさまざまな計測技術や実験手法について、分子生物学の専門家でさえすぐには理解できないのだ。分子生物学という言葉はすでに大き過ぎて、非常に多くの細分化された専門領域をカバーしてしまい、その全てに詳しいということはありえないのだ。
 つまり、かなり近い専門家でも、やはり新しく勉強しないといけないのである。

 ということで、今日は読者からの質問に答える形で、新しい分野の知識を、「専門家」と同等のレベルまで、すばやく引き上げる方法について解説しよう。

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