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西の比叡山の魅力とは

「西の比叡山」と呼ばれる兵庫県姫路市の書写山にある「圓教寺(えんぎょうじ)」は、天台宗の別格本山で、西国三十三箇所のうちでも最大の寺院です。

映画「ラストサムライ」、大河ドラマ「武蔵」、「軍師官兵衛」などののロケ地としてもよく知られています。
京都から遠く離れていますが、わざわざ天皇や法皇が訪れたほどの名刹です。

私は神戸に住みながら行ったことがなく、今年紅葉撮影のため初めて訪問しました。
その魅力に触れるため、あえて書写山ロープウェイに乗らず、参道を登ることにしました。
山は豊かな自然が残っており、兵庫県のレッドデータブックで、「貴重な自然景観」にあげられているのも頷けます。
約40分登り、ロープウェイの山上駅に到着すると、比較的新しい展望デッキや休憩所が整備された「ミオロッソ書写」があります。
遠く播磨灘や淡路島を臨むことができました。

山上駅から「一隅を照らす」などの禅語の石碑を見ながら、志納所を過ぎると「慈悲の鐘」がありました。
鐘を撞くことはできませんが、立派な鐘です。

仁王門までの参道の両側に、寄進された西国三十三観音像を模した像が置かれています。
七観音の像がすべてあり、仏像様式の勉強にもなりますね。
写真は十一面千手観音像です。

仁王門に着きました。
仁王像は古びた簡素な像で、運慶などの仁王像を想像すると様式が全く異なります。(姫路市指定文化財)

仁王門をくぐるといよいよ境内に入ります。
境内は東谷・中谷・西谷の三つの区画からなります。
東谷から、後白河法皇が7日間籠ったという「壽量院」の前を通りました。
重要文化財の塔頭は、仏間を中心とした「方丈(ほうじょう)」と台所がある「庫裡(くり)」を組み合わせた構造になっている迎賓館です。
ここでは格式のある精進本膳料理が頂けるそうですが、かなり高価らしいのでパス。

歩きながら気づいたのは、966年に創建されたにもかかわらず、樹齢数百年以上というような大木があまり無いことです。
大昔に大火でもあったのでしょう。
歴史を調べると、1331年に五重塔が焼失、1492年に真言堂・蓮鏡院・如意輪堂が焼失、1921年に摩尼殿が焼失したと記録があります。

小さなピークを越えて権現坂を下ると、本田忠政(徳川家康の重臣・本田忠勝の長男)が寄進した小さな石橋「湯屋橋」があり、その先が中谷の観音堂「摩尼殿」です。
ちなみに本田忠政が姫路城主になってこの地を訪れた時、その荒れように驚いて整備したとのこと。
原因は、羽柴秀吉の乱入や仏像の持ち帰り、さらにそれまで2万7千石あった寺領を500石とされたためのようです。

ここは京都の清水寺のような断崖に建てられた迫力のある構造で、見上げた時の壮大さに驚きます。
数日前(2023年11月末)に、国の重要文化財に指定されることが決まったとのニュースが流れました。

摩尼殿の横の階段からの写真です。
清水の舞台のような美しい姿です。

摩尼殿の内部です。

摩尼殿から西谷の三堂に向かいます。
途中、樹齢700年という「巨大スギ」が大空に向かってそびえています。
樹高35m、幹回り8.4mという巨木で、やはり巨樹には特別なパワーがあります。

大講堂・食堂(じきどう)・常行堂のある広場に出ました。
ここが「ラストサムライ」で撮影に使われた場所のようです。
大講堂は1440年から1462年にかけて建造された重要文化財で、素晴らしい迫力と威厳を感じます。
内部に釈迦三尊像と四天王立像が安置されています。

トム・クルーズと渡辺謙が挨拶を交わすシーンは、3つの堂の一つ、常行堂で撮影されました。
今は写経に使われていて、ちょうど一人の若い女性が写経をされており、静かな佇まいに浸りました。

二つの堂をつなぐように立つのが食堂です。
僧侶は新色をする1階部分は、有料のアート展の会場になっていて入れませんでした。
2階部分に寺宝が展示されていました。
暗い室内のため、ストロボを使用せずに撮影することは困難でしたが、人々の財産である文化財を痛めることはできません。
三脚を使わせていただき、何とか撮ることができました。
写真は創建された性空(しょうくう)上人の像です。

こちらは十二神将の一部です。もともとはインドの神々ですが、密教が仏の中に組み込んだそうです。
生き生きとした表情や仕草が仏像というよりもフィギュアのような可愛らしさに惹かれます。

食堂から常行堂を見た写真です。
歴史のある重厚な雰囲気が伝われば嬉しいのですが・・

ここからさらに奥の鐘楼・金剛堂に向かいました。
目に染みるような紅葉が鮮やかで、鐘楼との風景は圓教寺がどれほどの信仰を集めていたかを物語るようです。

日が陰り、渋い色合いの紅葉を見ることができました。

まだ奥には開山道や不動堂などがありますが、疲れと空腹でここまでとして、帰途につくことに。
摩尼殿には別の道を歩きますが、イチョウの絨毯に目を奪われました。

摩尼殿の手前の崖に、たくさんのお地蔵さまが安置されていました。
水子地蔵のようです。
一体だけ温かい毛糸で包まれていましたが、その方の悲しみや慈しみの心が伝わってきました。

仁王門を出て参道を下る途中に、展望台がありました。
姫路城が見えるとの説明に目を凝らしても見えません。
望遠レンズで撮影すると写真中央付近の山の稜線の上に見つけました。

ズームアップした写真です。見えましたか?

帰りはロープウェイに乗り、4分で下山できました。
遅めの昼食を摂り、近くのヤマサ蒲鉾本社工場でお気に入りの蒲鉾を買って、帰途に着きました。

歴史と素晴らしい伽藍を見ることができ、来年は本格的に撮影に取り組もうと思います。

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