2018.03.12

お店の常連客のケイ氏は謎が多い。

一度来店されると2時間は居るのだが、いかんせん掴みづらい。
それは接しにくいという訳じゃなくて。むしろあたしみたいな根暗頬痩け眼鏡にも気さくに話しかけてくれるとても良い人だ。

それでもやっぱり謎が多い。

仕事を何しているのか知らない、結婚してるのかも知らない、来店される時間は日中が多いけど曜日はまばら。とりあえず知っていることは“40代・男性”だけだ。

…それはそれで知らなすぎじゃね?

いやいやいや、会うと雑談をし過ぎちゃうから何も個人情報が残んないのよ。博識で学ばせてもらうことも多いので会話を遮ってまで聞こうと思わないし。

そんな感じで会話をしてるとあっという間に2時間。プライベートな話は触れずじまい、別にずけずけと土足で踏み荒らそうと考えてるわけではないんだけど…って、根暗頬痩け眼鏡はあんまりじゃね? こっちにだって心はあるんだよ? 見た目の悪さはしょうがなくない? 容姿の調子はどうしようもなく泣く泣くこうして辿り着いた現・在・地っ! オーイエー。

閑話休題。

と、いうわけでケイ氏が来たのだ。
いつものように雑談。あたしが新しく変えたこともあり今日はスマートフォンの話から始まった。そして話は“10代のスマホ事情”になったとき、ケイ氏は最大のヒントをあたしに投下してきた。

『俺の生徒も授業中にスマホをイジってる奴がいてさ~その時も…』

ん? 生徒? それはどーいう意味? 素直に受け取って良いの? 卑猥な方じゃなくて?
『(下腹部辺りを見ながら)俺の生徒にも…保健体育の授業を『言わせねーよ』のヤツじゃなくて?(我が家はこんな雑なネタをやったことはない)

んーっと…ケイ氏は…先生ってことなのかな…でもそれなら今、ここに居たらダメですよね…なんてったって平日の真っ昼間ですから。あっ そうかっ 今こそケイ氏の仕事を聞くベストタイミングか! ズレた間の悪さもそれも君のTimingっていう歌があるもんね!(だとすれば今がベストなタイミングではない)

よし聞こうとしたその時、ケイ氏のスマホが鳴った。『おっと…普段鳴らないのにこんなときに限って…すみません、ちょっと電話出ます』あータイミング逃した~僕の心惑わす、なんて不思議な力~(脳内でビビアン・スーが出現)。

『もしもし…お世話になっております』
『はい、はい…水道管の工事ですね…はい』
『それは××号室の方で…はい』

ん? ××号室?

『居住者には僕の方から…はい、はい、よろしくお願いします』

え~っと…え~っと…

『いやぁ、最近よくゲーム実況とか見ちゃうんだけどさ~』

話が、変わっちまったぜ。話題を戻す話術は、あたいにはねーぜ。はいはい、ゲーム実況ですね。あたしは見たことがないのであまり知らない世界ですが。

『そこでさ、アプリゲームの実況やってる人が課金ガチャで300万つぎ込んでる動画があって』

え? 300?!

『そう! すごいよね? 別にさ、趣味にお金を使うって考えれば釣りに使おうがゴルフに使おうが課金に使おうが別に良いんだけどさ…簡単に稼げるお金じゃないからやっぱりちょっと驚くよね』

いやいやいや…驚くどころじゃないよ…引いちゃうよ…まだ物として残る何かに使われた方が良いよ…

『まぁ、そんな俺も最近30万課金したけど』うぉぉぉぉぉいっ! 何やってんすかっ!! 『ひゃひゃひゃひゃひゃ』

ケイ氏曰く「年末ジャンボで30万が当たり、どうせ降って湧いたようなモノだから課金しちゃえ」となったそうな。1ミクロンも理解できん。

『さすがに30万は可愛いけどさ、300は行き過ぎだ『どっちも何も変わんねぇっす』『ひゃひゃひゃひゃひゃ』

生まれて初めて“ひゃひゃひゃ笑い”する人に出会ったよ…余計にケイ氏が解らなくなってしまった。

そんなケイ氏は帰り際に『そういえば、買ったバレンタインジャンボをまだ当選確認してないな』と言ったので『心から当たってないことを願ってます』と伝えた。

やっぱりケイ氏はひゃひゃひゃと笑って『じゃあ、また』と言って帰って行った。

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ゆたにず

ひろふみっき(エッセイ)

日常あったことを(多分)脚色なしの完全ノンフィクションを信条につらつらと描いていきます。
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