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献血ルームでオニオンスープを

年末の恒例行事のひとつに献血がある。毎年仕事納めが終わったあとに行っていたのだが、先日「A型と!!!O型が!!!足りないんです!!!!!」というメールが赤十字社から届いたこともあり、ちょっと早めて今日献血ルームへ行ってきたのであった。

※本当に足りないそうです↓

ときどき献血に行くんです、と話すと、たいていの場合「なんで献血に行くのか?」と聞かれる。理由は主に2つある。
①できる体を持っているから
②献血ルームの雰囲気が好きだから

まず①について。
私は女性の中ではそこそこ体が大きい方で、身長も体重も女性の平均値を上回っている。さらに健康診断はここ数年オールA、持病もなし、禁忌の服薬もなし。つまるところ私は献血の採血基準を全項目余裕でクリアする健康優良不真面目アラサー女。だから献血に行くのだ。
※私が服用している低用量ピルは問題ないとのこと。なお禁忌の服薬はそれなりにあるらしいので、献血に行く方はお薬手帳を持っていくことをオススメする。

次に②について。
献血ルームは病院とも違う特別な雰囲気の場所で、年に数回しか行かないものだからちょっとした非日常感を味わえる。問診でOKを受けて気合を入れなおしたり、検査の採血でちょっとドキドキしたり(最近400ml献血は指に針を刺して検査の採血をするようになった。これがちょっとばかり痛い)。
本チャンの採血をしているときは、管の中を流れゆく自分の赤い血をボーっと見ながら、「私の血はどんな人の体の役で働くんだろうか」と思いを馳せている。そんなことをしていると、あっという間に採血は終わる。
少し余談にはなるが、献血は注射針が怖い・・という話をしばしば聞く。確かに本チャン採血用の注射針はかなり太い(シャープペンシルの先っちょくらいはある)。けれど、私はこれまで十何回献血をしてきて痛い思いをしたことはほとんどない。献血ルームのスタッフさんはもれなく注射が非常に上手なのだ。だから心配することはないと思っている。

特に私は献血し終わった後にオニオンスープをキメながら新聞や雑誌を読むのが好きだ。
献血が終わったあとは必ずしばらく休憩するように言われるので、血を抜いてだる目な体にオニオンスープを流し入れる。セルフドリンクバーから出てくる何の変哲もないオニオンスープのはずなのに、これがやたらおいしい。ちょっとしょっぱめで、それでいてほんのり甘くて香ばしいオニオンスープ。飲んでいるうちに口の中が、喉が、お腹の奥がじんわりと温まって、それはもう、すごくホッとするのだ。私はこの瞬間のために献血ルームに来ているのかもしれない…と思うことすらある。
オニオンスープをちびりちびりとすすりながら、普段読まないような地方紙とか主婦向けの雑誌とかを読む。私が行きつけの献血ルームは駅近くの商業施設の上にあるので、小さな窓からはビルの群れや人や車の往来、その隙間を埋めるような空が見える。そんな時間が私は好きで、気が付けば献血ルームに1時間近く滞在してしまう。

こんなこと言われたら…もう…ネ…

献血は輸血を必要とする人のために行うものだ(だからこそ問診には正直に答えないといけない。嘘ついたり誤魔化したりするのは絶っっ対にダメ)。そんな中で献血に行く理由は人それぞれだろう。「社会貢献がしたい」「輸血が必要な人を助けたい」「家族・友人が当事者だ」「単に褒められたい」「献血したら貰えるグッズがほしい」などなど。
私もそうだが、理由はどんなものであっても「見知らぬ誰かに『自分の体の一部』として『命のバトン』を渡せる」ことにささやか喜びを感じている人は多いのではないだろうか。「できる体」を持つ人すべてがやるべきだとは思わない。それでもこの無償の善意で成り立っている「献血」というシステムを絶やしてはいけないし、献血ができる年齢・健康体を持つ私には、このある意味で脆いシステムを支えるミッションがある、と考えている。

冬場は献血をする人が減るという。この記事を見た(当然「できる体」を持った)どなたかが、献血ルームに足を運んでみようかと思っていただけたなら。そう願っている。


温かいアクエリアスもおいしいです  芳田