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あやしいものではございません

オートマタ作家になるために会社を退職して、広島でイギリス留学の準備をしていた頃の話。オートマタで暮らしていけるようになるのか、全く自信がありませんでした。

今ならSNSで作品を発表して、世間の反応を知ることもできますが、2000年代前半当時はSNSと言ってもmixiくらいだったような。自分の作品に商品としての価値があるかどうかを知るには、直接、お店に行って聞くのが早いのではないかと思い、早速実行に移すことにしました。

個人でされている雑貨屋さんに狙いを定めてハシゴしていきました。店に入って、いきなり話しかけるのは不自然。ポストカードとか文房具をレジに持って行って、会計のときに感じが良さそうな店員さんだと判断すると、
「あのー、実は僕、こういうものを作っていまして。。。」
とおもむろにバッグからオートマタを取り出すのです。
今、思えば完全に不審者そのもの。
僕は「作品に商品として価値があるかどうか」を聞いてみたかっただけなのですが、店員さんから「わー、変なやつがアポなしで売り込みに来たぞー!」と警戒されているのが、ありありと伝わります。

自分の作品を見てもらうって、ものすごく勇気がいるのに、ドン引きされて、適当に「まぁ頑張ってくださいね〜」とか言われるだけでは割に合いません。数店舗回って「あーこれは意味ないなぁ」と気付き、最後のつもりで行ったお店が『CASICO』。店主の岸くんは、とても作品を気に入ってくれました。さらには、そのときギャラリーを始める計画があったそうで
「原田くんが展示したいと言ってくれるようなギャラリーにするねー」
とまで言ってくれたのです。
「岸くんに展示して欲しいって言ってもらえるようにイギリスで頑張ってくるねー」
とエモく誓ったのでした。

帰国してから、これまで何度もCASICOで展示をさせてもらい、岸くんとは今も変わらぬ友情が続いています。突撃お店訪問はオススメはできないけど、素敵な出会いもあったというお話でした。

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