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そして僕は家具職人になろうとした

会社員時代、趣味のオートマタ制作に熱中し、これで暮らしていけたら最高だなーと思いつつも、いやいや現実はそんなに甘くないはず、と心にブレーキをかけていました。でも、もしかしてオートマタだけでやっていくのは難しくても、他に収入があれば、二足のわらじでどうにかなるのではないか??

本屋に行って、「カフェオーナーになる」とか「雑貨屋さんを開く」を買って読んでみました。うーん、大きな借金を背負ってお店を開業したりすると、オートマタを作る時間なんか無さそうだなぁー、ということで却下。次に図書館に行って、「カバンの作り方」とか「石鹸の作り方」の本を借りてきました。オートマタ用に木工の道具を揃えたばかりなのに、また全然違う道具を揃えるのも、何か無駄な気がするなぁ。。。ということで却下。

あ、そうだ、家具にすればいいじゃん!!とそのときは名案を思い付いた気がしました。ネットで調べると、仕事を手伝いながら家具の作り方を学べる工房が2件あったので、仕事を辞めてそこにお世話になるのもいいかもしれないと本気で考え始めました。家具制作の修行をして、独立。家具で生活費を稼ぎ、空いた時間でオートマタを作る。オートマタが認められたら、少しずつ家具とオートマタに割く時間の割合と変えていく。我ながら完璧なアイデアではないか!

思い立ったが吉日の言葉の通り、すぐに1件目の家具工房にメールをしてみました。しかしなぜか返信なし。。。まあいいや、家具工房はここだけじゃないんだからと気を取り直し、もう1件目にメールをする前に改めて、そこのウェブサイトや卒業生のブログを見てみました。どうやら、仕上げに漆を使うそうで、みんな最初は漆にかぶれて大変な思いをするらしい、と知った僕は怖気付きました。おいおい、漆を使わない家具工房はないのかっ!!!

本来の目的を忘れ、すっかり家具職人になるつもりで、いろんな家具職人のブログを読み漁る日々が続きました。そしてよーく分かりました。オートマタをやりたいという本心を抱えたまま、やっていけるほど家具は甘い世界ではないと!家具のフィールドにはプレイヤーが多く、並大抵の努力では頭一つ抜けることはできそうにありません。それなら、本当に好きなオートマタだけで勝負したほうが良いに決まっています。何と言ったって、オートマタのフィールドにはプレイヤーがほどんどいないのです!

迷走の日々を抜けて、いつか独立するならオートマタに絞ろうと気持ちが定まりました。現在、家具を制作している友人が何人かいますが、みんなそれぞれ素晴らしいものを作っています。ああ、こんな人たちと勝負することにならなくて本当に良かったなぁー!と心から思います。

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