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世界中で村正と正宗の話をしまくってます!

皆さんは村正と正宗って聞いたことありますか?

村正と正宗は有名な日本刀を作る刀工です。まあ、昔の鍛冶屋さんですね。

僕はたまにベトナムの朝礼で日本刀の話をします。ベトナム人に刀工の職人さんたちの仕事に対する向き合い方を紹介したいからです。今日はそんな話をしようと思います。

人類の歴史は戦の歴史です。世界中で様々な武器が作られてきました。特に刀や剣は基本的な武具なので世界中にありました。

その中でも日本刀の切れ味と強靭さは他国の刀や剣とレベルが違います。

多くの国で作られた刀や剣は鉄鉱石を溶かした鋼のみで作られたシンプルなものですが、日本刀は素材と製法が全く違うのです。

そもそも鉄という素材は切れやすくすれば折れやすくなってしまうし、折れないように柔軟性をもたせると今度は曲がりやすくなってしまう。というトレードオフの関係にある性質があります。なので、他国の刀や剣は重く、叩き切るような目的で使われていました。

なぜ日本刀だけがそのトレードオフを克服し、いいとこ取りの切れ味が鋭く強靭な刀を作ることに成功したいのでしょうか。

答えを言ってしまうと、日本刀の刀鍛冶の職人がとんでもない鉄オタクで何百年にもわたって最強の刀を作ることに人生を費やし、周りも天皇から将軍から金持ちの商人までスゲー、スゲー、と囃し立て、本人たちもなんとか「鉄」という物質のトレードオフを超越し最強の刀を作るんだと没頭し研究し試行錯誤して途方もない時間を費やして努力した結果生まれました。

そして恐ろしいことにそんな鉄オタクがどの時代にも日本中にいましたw

まさに国ごと中二病w

「俺はまだ世界にない最強の武器を作ってみせる!」ドンッ!
→ジャンプの連載化待ったなしw

切れ味と強靭さを兼ね備えるために具体的にどんなことをしているかと言うと、日本刀の材料の鋼は鉄鉱石から作るのではなく不純物の少ない砂鉄を使って日本独自の製鋼法「たたら吹き」で作ります。これを玉鋼(たまはがね)と呼びます。

たたら吹きで作った玉鋼を「水減し」「積沸かし」「鍛錬(下鍛え)」という工程を経て、含有炭素量が異なる心金(しんがね)、棟金(むねがね)、刃金(はのかね)、側金(がわがね)の4種類の鋼に作り分けられます。(この辺はほとんどWikipediaを参考にしています)

「折れず、曲がらず、良く斬れる」の3要素を日本刀で実現するために4種類の鋼を作り合わせていくというのが日本刀のミソです。

4種の鋼を合わせるためにも「鍛錬(上鍛え)」「鍛接と沸延べ」「素延べ」「火造り」「空締め」「生砥ぎ」という工程を経ていきます。

さらにまだ仕上げの工程もあります。(詳細は省きます)

日本刀はなんかの拍子に偶然発見された発明とは違うのです。鉄と真摯に向かい合った鉄オタク(刀匠)が数百年の努力の末に勝ち取った研究成果なのです。

この製法、工程にたどり着くまでにどれほど多くの刀鍛冶が試行錯誤を繰り返したのでしょうか?彼らの日本刀に費やした研究時間を全部足したら途方もない時間になるでしょう。

そう考えると、そこまでして日本刀は必要だったのでしょうか?いや、鉄鉱石から鋼を作ってちょっと重い剣で戦っていればよかったのでは?と思ってしまいます。

他の国で日本刀のような武器が生まれなかったのはむしろ自然で、合理的に鍛冶屋が仕事してたらこんなもの作らんわな、と思うわけです。

玉鋼っていう材料作るもの大変だし、その後の工程多すぎて複雑なので、その製法にたどり着くまでに時間がかかりすぎるということです。たかだか刀を作るのにどんだね執念かけてんだよとw

しかもそれを競うように日本中の鍛冶屋がやっているわけでしょ、何百年もw もうアホかとw

だけどね、まだある、話は終わってない、、、

刀身ができたら、今度は刀身全体を研師が研ぎ、鞘師がその刀に見合った鞘を作成し、塗師、蒔絵師、金工師、白銀師などの職人が仕上げていく。

刀工(とうこう):刀身を作る。「刀匠」、「刀鍛冶」とも呼ばれる。
研師(とぎし):刀身の研ぎを行う。
鞘師(さやし):鞘の作成を行う。
白銀師(しろがねし):はばきや鍔などの金属部分を作成する。
柄巻師(つかまきし):柄部分に紐を巻く。
塗師(ぬりし)、蒔絵師(まきえし)、金工師(きんこうし):鞘や鍔などに装飾を施す。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/日本刀

多いw 多すぎるw 日本刀作る関係者多すぎるでしょw

だけど、こういうやりすぎなところ嫌いじゃないw


この人達は全部職人さんです。彼らの作るものはどれも素晴らしい芸術的な工芸品です。

文部科学省が日本刀の職人を紹介する動画をyoutubeで公開しているんだけど柄巻師(つかまきし)さんの仕事の動画観てみてください。これはこれで奥が深い世界です。この方も素晴らしい職人さんです。

この文部科学省のチャンネル面白いです。日本刀の職人以外にも和紙職人や宮大工を紹介しています。

どの職人さんも良いものを作るということに真摯に向き合っています。

この職人さんたちはお金や名誉のために仕事をしていたのではないと思います。純粋に良いものを創り出したかった。

刀工の職人としての仕事とは自分と鉄という物質との戦いだったのではないでしょうか。

どっぷりと刀工という職業にハマり、この世にまだない刀を作りたいという情念に衝き動かされて自分の仕事を天職だと感じ人生をその世界に投じていったのではないでしょうか。

そのような刀工を当時の将軍や天皇も重用しリスペクトしますが、彼らを駆り立てたものはそのような名誉ではなかったはずです。

日本の教科書で数百年前の刀工の名を覚えさせるのは、一流の職人を未来永劫語り継いでいくことで当時の人々が彼らを尊敬したように我々も尊敬し続けることで、職業人のありかたを子どもたちに見せているのかもしれません。

「若者よ、面白い仕事にハマれ」
「周りからアホだと思われても没頭できることをしろ」
「良いものを作ったものは、未来永劫この国で尊敬し続けるぞ」
「仕事に貴賤はない。どんな仕事でもその道を極めし者をこの国の誇りとして世界に発信していく」
「鍛冶屋でも大工でもなんでも良い。なんならそれ仕事なのってものでもいい。堂々と日本の伝統文化だと発信していく」

そういうことをこの教科書を通じて子どもたちに伝えているんだと思います。(まあ、実際は受験勉強で記憶力の良い学生だけがいい大学に行くという教育システムなので、実際は違うかもしれませんw)

職人は良い刀を作ることに命をかけて、人々は数百年後もその人物を讃えリスペクトする。
そうやって日本人の子供は職人魂とその価値を学ぶ。

刀鍛冶だけではありません。

日本人で「匠」という言葉を聞いてブルーワーカーの大工を想像する人はいない。匠とは基本的には大工さんなど木工をする人で優れた技術を持つ人を意味します。特に宮大工などは神社仏閣を建てたり修復する神に近い職業であり、神業に近いスキルを持ち、彼らが建てた法隆寺は1300年以上経った今でもこの地震大国日本で世界最古の木造建築として存在している。なんなら法隆寺の耐震構造のメカニズムもいまだ解明されていないけど高層ビルにとりあえず応用したりしている。そんなやばいプロフェッショナルみたいなイメージだと思います。

どの世界でも尊敬される仕事と言えば、医者、弁護士、大企業の経営者、官僚などをイメージすると思います。日本では大工も刀鍛冶も柄巻師もみんな職人としてリスペクトされています。

そして、その仕事に邁進し日々研鑽し良いものを作ることに没頭して天職としている職人さんが日本には今も昔もたくさんいる。

僕はこの精神はとても大事なものだと思うので、ベトナムの社員にも朝礼や会社のイベントの際に話したりして伝えようと努力をしてきました。

言われたことをやるだけの作業員になってほしくない。自分の魂を込めてソースコードを書いて欲しい。創意工夫をして常に最高傑作を作るつもりで仕事をしてほしい。自分の書いたソースコードはあなたの作品です。芸術品だと思って情熱を傾けて作品作りに取り組んでほしい。

それはクライアントのためでなく、会社のためでなく、自分のために自分と向き合って作品作りに没頭してほしい。

うちに入社するエンジニアはトップ大学で情報工学を卒業している社員が多く、数学に強いエンジニアが多いです。素質はあるので、あとはいい環境で仕事ができれば世界トップレベルのエンジニアになる可能性がある。

できるだけ多くのメンバーを世界レベルに育て上げたいと思ってこのような話を朝礼などでするんですが、弊社のエンジニアだけでなくすべてのベトナム人にこの意識を持ってもらいたいと思っています。

ベトナムの国力を上げるのに国民一人ひとりの仕事に対する意識を変えていく必要があると思っています。

日本の職人さんのように仕事に没頭して、一緒に歴史に残るような素晴らしいものを作っていきましょう。みたいな話を朝礼で話したりします。(朝から暑苦しいw)

これからも日本の職人魂の伝道師として世界中で村正と正宗の話をしていこうと思っています。

(トップ画像の日本刀の写真もWikipediaからお借りしました)

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