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青江三奈「恍惚のブルース」を聴く

青江三奈は昭和30年代後半から活躍したシンガーです。「日本のブルース」というジャンルがあるとして彼女はその中のトップの人です。
恍惚のブルースはいきなり80万枚の大ヒットをした名曲です。

先日溝の口駅そばの線路側の例の書店の前で青江三奈さんのベスト盤を見つけましたので購入。あのエリアすごいね、中に入ったら酒の入ったコップを持ったおじさんがいて「声枯れてるからね!」って僕にいう。知ってるよ、はい、青江三奈さんは元祖ハスキーボイスなんですよ。

「恍惚のブルース」は1966年の作品。ビクターの築地スタジオでの録音でしょう。僕子どものころ聴いたことがあって意味がわからないなりに好きだった。
この頃には録音そのもの技術は熟していていい音を録ることはできました。この頃の機材にプロツールズを繋いでレコーディングすれば最新の録音にでも対応ができるようなマイクやアンプ類が揃っていたという意味です。でもその作り方の工夫がまだ途中で、たとえばステレオの左・真ん中・右、は理解されていましたがその中間の概念ができるのはまだ先です。スタジオには3チャンネルの録音機があったくらいで、オケはステレオ、歌はセンターがデフォルトだったのでしょう。

「恍惚のブルース」では左側にギターと弦楽器、右側にドラム・ベース・サックス、センターにはボーカルとモノラルのリバーブのみがあります。サックスにディレイがついていますが、もちろんテープ式の機材でしょう。リバーブは当時はエコーと呼ばれていましたが、これはエコールームというよく響く部屋にマイクとスピーカーを置いて、響かせたいチャンネルの音をスピーカーから出して響きをマイクから拾って混ぜていました。築地スタジオのエコールームの話はここなんか読んでください。
苫米地さんのブログ

絶妙なスローミディアムテンポにある緊張感が凄くなにもかも丁寧!ヒットを産もうという気迫モリモリの録音です。皆さんも良ければきいてみてください。
Apple Musicで青江三奈の「恍惚のブルース」を聴く

聴きましたか?すごいでしょ。スローな4ビート、オシャレで緊迫感があって。

マイク的にはRCAの44や77DXといったリボンマイクが多用されていたなかでノイマンの真空管式のコンデンサーマイクM49なんかがフラッグシップな時代です。ソニーの38や東芝・アイワなんかもありましたし、元祖骸骨マイクもあったはず。ボーカルはM49かもしれませんね。こんなに柔らかくて抜けが良いくて心地よすぎる声はどんな風に録音されたのか先輩に訊きたいですねー。

この録音、音の整理がとてもよいのは余計な音が無いせいてしょう。アレンジと演奏の素晴らしさ。いまみんなが使うプラグインシンセの音は贅沢な空間厚みや広がりなど発音そのもの以外の音が多すぎてアンサンブルを作りにくいと思います。こんなに機材もマイクも音源も安く簡単に手に入るようになったのにむずかしいなんてねー。

キャラクターを活かして、一つ一つの音を大切にするような音楽づくりをしていきたいとあらためて背筋がのびました。

追伸
僕がビクタースタジオに入った時にいた上司の佐藤技師がおそらくこれ録った人だじゃないかという情報が入りました。怖かったなぁ、佐藤技師。

参考
青江三奈(1941-2000)
恍惚のブルース 1966年ビクターレコード
作詞 川内 康範(1920-2008)
作曲 浜口庫之助(1917-1990)
編曲 寺岡真三(1925-2007)

#アナログレコード #ビニール #流行歌 #浜口庫之助 #青江三奈 #ビクターレコード


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