【ツイート転載】古市憲寿『絶望の国の幸福な若者たち』再々読

古市憲寿『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社、2011年)再読(原文ママ。再々読でした)。改めて最悪の本だ、と思った次第。そもそも古市は同書で描き出したような「幸福な若者」イメージをもって、ロスジェネ的な「かわいそうな若者」的なイメージの打破を行おうとしたのだと思うが、ロスジェネ論とか貧困論とか(承前)が展開していた問題は単に「若者がかわいそう」という問題意識にとどまらない、例えば就業構造、労働法、働き方などをめぐる多層的な問題であり、その中には政策課題とすべきものもあったはずだ(それ故「若者はかわいそう」的な方向性に規定してしまうことは控えなければならない)。まあロスジェネ論が文化評論に傾きすぎたというのはあると思うが…。

それにいくつかの実証的な研究は、非正規雇用や貧困などの問題は、むしろロスジェネより下の世代においてこそ深刻化しているとするものもある。古市の示す「幸福な若者」論は、それこそ「若者かわいそう論」のような若い世代に関する視座の貧困をそのまま裏返したものに過ぎない。

経済政策的な視点から見ても同書は最悪で、そもそも(かつての自民党政権によって構築され、後の民主党政権にも引き継がれた)デフレレジームを前提としており、デフレレジームのもとで滅び行く我が国というものを超えていない。それ故デフレレジームから脱却すればある程度は光が見えてくるような問題(福祉、少子化など)についても解決されたいことが「前提」となっている。若者論の歴史から見ても経済政策の観点から見ても最悪が重なった本と言える。

あと古市は1970年代頃に若者論の形が完成したと述べるが、その若者論を受容する社会の側の変化については全く触れていない(特に1990年代以降の若者バッシングの興隆を考える上でこの視点は外せないはずだ)。若者論を社会的なものとして捉える視座の著しい欠如もまた問題だ。


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