消費税を換骨奪胎する~新しい消費税、こうすれば消費税の問題は一気に解決する!

消費税が悪法であることは、多くの国民が思っていることだろう。
消費税の内容が明らかになるにつれ、消費税廃止の運動も静かながら進んでいる。
だが、真っ向から闘って勝てるだろうか。
廃止活動に水を差すようで恐縮だが、実際にはこのままでは困難であると思う。
理由を挙げよう。
1.       多くの国民は、悪税とは知りながら、「国家財政が逼迫しているなら仕方がない」と考えている。
2.       実際は、国債発行によって問題は解決だが、国民は経済と言っても家計しか知らないから、国債という負債は危険ではないかと考えてしまう。しかも国債発行が国民の負債だと思っている。実際には、良く考えれば国債は国民の資産で、国債を発行しなければ、日本の経済は縮小するばかりなのだが、「国民の負債」であると国民が思っている限り「国債は借金」という呪縛から逃れることは難しい。しかし、国の借金が清算されたら、その時点で多量の円は消滅してしまう。むしろ(自国通貨建ての)国債は発行し続けなければ国は豊かにはならない(民間の信用創造(貨幣創造)に頼るには限界がある)。そのことを政府は言わない。
3.       誤謬であってもこの事実を知らない国民は、渋々ながらも消費税を受け入れてしまう。「財政破綻したら大変だ。消費税は嫌だが仕方がない」と、このような正義感を持っている国民が多くいる中で消費税廃止などと声高に主張しても反感を買ってしまう。消費税の事実を伝えて理解して貰うことは慥かに重要で継続は必要だが、そんな悠長な時間的余裕は果たしてあるだろうか。
4.       そこで、国民の不安を取り除くことを考える。つまり、総税収が新しい消費税でも同じだけ得られるなら先の不安を持っている国民も反対はしない筈だ。そして新しい消費税が簡潔で分かりやすく、税処理も簡単であれば、なおさら支持は増えるだろう。

政府、財務省は、「消費税は、消費者が最終的に負担することが期待された税である」と述べている。だがこれはおかしい。消費税が最終的に消費者が負担するというのであれば、「消費税は、消費者が負担する間接税である」と明確にすべきだ。しかし政府も財務省もこうは述べない。こう言えば嘘になることを知っているからだ。事実、消費税法には、「消費税は事業者に課せられた税」であるとはっきり書いてある。
これは、過去に起こされた裁判の判決によっても確認できある。
●大阪地方裁判所 平成元年(ワ)5180号 判決(https://daihanrei.minorusan.net/l/大阪地方裁判所 平成元年(ワ)5180号 判決)
●東京地方裁判所 平成元年(ワ)5194号 判決(https://daihanrei.minorusan.net/l/東京地方裁判所 平成元年(ワ)5194号 判決)
「消費税法五条一項は『事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等につき、この法律により、消費税を納める義務がある。』と規定しているのであって、事業者が納税義務者であることは明らかである。」
「二  消費税の問題点
1  消費者に対する過剰転嫁の危険性及び事業者間の不公平(請求原因2(一))について
(一)  仕入税額控除制度
(1) 先に述べたように、消費税の納税義務者が消費者、徴収義務者が事業者であるとは解されない。従って消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しないから、事業者が、当該消費税分につき過不足なく国庫に納付する義務を、消費者に対する関係で負うものではない。
もっとも、消費税の実質的負担者が消費者であることは争いのないところであるから、右義務がないとしても、消費税分として得た金員は、原則として国庫にすべて納付されることが望ましいことは否定できない。」
 ここで少し話しが逸れるが、「もっとも」以降の文を強調し、消費税を擁護する者もいるが、「もっとも」以降の記述は当たり前の事を言っているだけだ。事業者に税を掛けるのであるから、その皺寄せは一部消費者に及ぶのは当然である。しかし、その消費税が明確にすべて負担している訳ではないことは前半の「消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまでも商品や焼く者提供に対する対価の一部」と述べていることから明らかである(つまり、例えば消費税率10%のどの程度負担しているかは明確にはできない。事業者が耐えられるなら、仮に消費者に負担させなくても問題はないのだ)。あくまでも、消費者は、商品購入代金を支払っているに過ぎずその中に消費税分(あるいはその一部)が上乗せされているということなのである。商品代金に1.1%を掛けて払っているわけではないのだ(形式的にはそのようにされ、騙されているのだが)。

この判決は、控訴されなかったので確定している裁判例となる。

ここで気付いたことがある。輸出業者に対する、輸出戻し税は、輸出業者には還付される。海外に販売したとき、それを外国に消費税を乗せることは出来ない、ということからだ。しかし、「消費者が事業者に対して支払う消費税分はあくまで商品や役務の提供に対する対価の一部としての性格しか有しない」というのであるから、輸出品であろうとも「この値段で取引します」という契約があれば、税の問題など存在しない(なぜなら、その価格には法人税の一部も載せられていることを考えれば、消費税に置いても全く同じことだ。つまり、商品代金には何らかの税が含まれているのは当然だからだ)。

さて、消費税は、「消費税は、消費者が最終的に負担することが期待された税である」というのであれば、消費税の定義をはっきりさせたら良い。
つまり、「消費税は、消費者が最終的に負担する税である」と定義する。
余計苛酷になるんじゃないか、という疑問を持たれるかも知れないが、現行の消費税でも負担は同じなのだから変わりはない。もちろん現在10%の消費税の負担は苛酷であることは間違いないから、税率を下げるべきであることは間違いないが、この事務手続きも新しい消費税では簡単になる。これについては後述する。
消費税負担者:消費者
納税義務者:小売店(消費者に販売する事業者)
と定義を明確にすると、これで明確に「消費税は間接税」となる。入湯税と同じだ。
こう言うと、財務省は、「なるべく多くの国民に平等に税を負担して頂くために必要な税制です」などと言うだろうが、これは欺瞞であり、頓珍漢な抗弁だ。何故なら、「消費者が負担することを予定した税です」と先に述べているのだから、これとは矛盾するではないか。だいたい消費者にならない国民は存在しないのだからこれ程平等なことはないだろう?

消費者は、販売価格に消費税を加えて商品などを購入する。小売店は、消費税分を預かって,右から左に税を納める。
これなら明確だし、非常に簡潔な税制となる。
このように消費税の定義を変更すれば,消費者以外に税の掛かる業者はいない。小売店は消費税を預かるだけだから、営業形態に何の変更も負担もない。客から「消費税分負けてよ」などと言われても(さすがに今そんなことを言う人はいないだろうが)「当店は消費税をお客様から預かり税務署に納めるのが義務ですからできません。お客様も脱税になっってしまいますよ」と堂々と言うことができるからさすがに客もこれ以上何も言えないだろう。
小売店に納入する業者(更にそれ以前の業者)には、何の税も掛からないことも明確に分かるだろう。これによって現行の消費税が施行される前の状態に戻すことが出来る。業者が消費税に悩まされることは一切無くなる。当然だが、もちろん小売店も消費税を負担することはない。単に消費者から消費税を預かるだけである。
輸出業者も還付金を受け取ることもない。輸出は日本の消費者へ売っているのではないから新しい消費税では元から掛からない。
この新しい消費税によって(ここが重要だが)国が受け取る税額は、現行の消費税総額と変更後の消費税総額が完全に一致する(理論的に)するので国が文句を言うことも出来ない。
この様に消費税を再定義することのメリットは、
 
1.      消費税が明確に簡潔に理解できる。
2.      インボイスが不要になる。
3.      赤字でも消費税を納めなければならないという不合理はなくなる。そもそも業者間での取引には新しく定義した消費税には関係しないから当然である。
4.      輸出戻し税など不明瞭な問題がなくなる。
5.      税務処理負担は、税を預かる小売店でさえ負担にならない。単にレジスタの設定を変えるだけで終わる。
6.      税理士は、複雑かつ繁雑な税務処理から解放される。言わば本来の業務に集中できる。
7.      「益税」だの「税逃れ」などの謂われのない誹謗中傷から解放される。
8.      業者間での消費税に関する問題が雲散霧消する。新しい消費税に、中間業者は関係しないからだ。
等々と良い事だらけである。
国民も、現在のようにどの様に負担しているか分からない複雑怪奇な消費税よりは、納得するのではないだろうか。国民の正義感「予算が足りないからしょうがないよな」に関しても、解消され、後ろめたさは一切なくなる。
取り敢えず、この新しい消費税に変更すれば、多くの問題が解決できる。
しかし、それでも、「結局10%の税は掛かるんだよな」というもやもやした感は残るだろう。慥かにそうではあるが、メリットは途轍もなく大きい。それは、
1.       新しい消費税の税率は、「即座に変更が可能」だという点。今のままでは、消費税率を変えるのは一苦労となるが、新しい消費税なら、それは一瞬で可能だ。極端な話し、周知が即座に行われるなら、翌日からでも税率は変更できる。なんせ小売店と消費者だけが税に関わるのだし、レジの税率を変えるだけの簡単な操作で終わりだからだ。
2.       新しい消費税なら、税率の変更が容易だから、税金の働きである景気の動向に合わせて上げ下げが容易になる(もちろんむやみやたらに上げることには抵抗するが…)。実は、景気状況を安定させることが税の大きな機能なのだ。

どうだろう、むやみやたら「消費税は反対!インボイス反対!」というような対立構造を作って闘うより、より早く換骨奪胎ができるのではないだろうか?

もうお気付きのことだと思うが、この新しい消費税を「売上税」と言うのである。


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