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酒役 ~しゅやく~

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連載小説「酒役~しゅやく~」のマガジンです。 カバーイラスト提供:とよたま(酒っ子)さん
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第0合『もくじ』:酒役〜しゅやく〜

第0合『もくじ』:酒役〜しゅやく〜

連載小説【酒役~しゅやく~】の目次です。
随時更新します。

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第1升『はじまりの酒』
 第1合『美女の涙は吟醸酒』

 第2合『酵母は筆を誤らない』(越後鶴亀 純米吟醸酒 ワイン酵母仕込み)

 第3合『宝石好きのイタリア人』(翠玉 特別純米酒)

 第4合『わび酒』(千利休 純米吟醸酒)

 第5合『添加の日本酒さま』(射美 吟撰)

 第6合『酒も見た目が9割』(龍勢 特別純米酒 

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第1合『美女の涙は吟醸酒』:酒役〜しゅやく〜

第1合『美女の涙は吟醸酒』:酒役〜しゅやく〜

 ゼミの飲み会は、大学近くにある格安居酒屋で行われている。
 俺は、たまたまイタリア人女性の隣に座り、顔を赤らめている。決して照れているからではない。お酒を飲んでいるからだ。
 留学生のソニアは成績優秀で、加えてスタイル抜群。立って並ぶと、彼女の腰の位置が、俺の顔の高さと同じになるほど脚が長い。

「日本人は、あまり日本酒を、飲まないのですか?」
「いぇー、いえす。おー、のー」
 急に外国人に話し

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第2合『酵母は筆を誤らない』:酒役〜しゅやく〜

第2合『酵母は筆を誤らない』:酒役〜しゅやく〜

 イタリア人留学生ソニアに連れてこられたのは、大学通りに唯一ある酒屋さんだ。通学路なので、その存在は知っていたが、中に入るのは初めてのこと。お酒を買うなら、いつもスーパーやコンビニへ行く。

「なんか薄暗いけど、この店、ほんまに大丈夫なん?」
「坂倉くんは、中が明るいワインセラーを、見たことが、ありますか?」
「たぶんない。というか、ワインセラーを見たことがないかな」
「じゃあ、閉まっているときも

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第3合『宝石好きのイタリア人』:酒役〜しゅやく〜

第3合『宝石好きのイタリア人』:酒役〜しゅやく〜

 大学通りに唯一ある酒屋さんでは、老爺の店長さんがこの上ない笑顔で、僕たちに日本酒を試飲させてくれている。
「さぁさぁ、お兄さん。次は、これなんかどうですかぃ?」
 店長さんが、日本酒の瓶を冷蔵庫から取り出しながら、ソニアに微笑みかけた。
 ソニアも微笑みに応じ、歳の差推定50歳のアイコンタクト劇場が、俺の目の前で繰り広げられる。

 店長さんが新しいプラカップを取り出し、いま俺たちが手に持ってい

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第4合『わび酒』:酒役〜しゅやく〜

第4合『わび酒』:酒役〜しゅやく〜

 日本酒サークルのメンバーは、代表のソニアをはじめ8人。俺が加わったことで9人になった。これでいつでも野球ができる。
 男女比は、男4:女5と、意外にも女性が多いことに驚く。

 今日は、月に1度の全体ミーティングの日で、サークルのメンバー全員とは初顔合わせになる。
 メンバーがみんな、「事務所」と呼んでいる日本酒バーは、平日の夕方だというのに満席だった。

「日本酒って、人気があるんやな」
 ソ

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第5合『添加の日本酒さま』:酒役〜しゅやく〜

第5合『添加の日本酒さま』:酒役〜しゅやく〜

 俺たち日本酒サークルが事務所として利用している、日本酒バーでは、30種類以上の日本酒が常備されている。

「ところで、修三は、『純米酒系』しか飲まないの?」
 あいかわらず馴れ馴れしい男前マスターの質問に、俺は口ごもった。質問の意味が分からなかったのだ。
 そんなとき助け船を出してくれるのが、さすがに日本酒サークル代表のソニアだった。
「日本酒は、水と、お米と、米こうじから、できていますよね」

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第6合『酒も見た目が9割』:酒役〜しゅやく〜

第6合『酒も見た目が9割』:酒役〜しゅやく〜

 俺たち日本酒サークルのメンバーは、事務所として利用している日本酒バーで、ミーティングをしている。
 サークルのメンバーは、それぞれに個性があって、なんだか日本酒と同じだな、なんて感じる。

 俺が、どのお酒を注文しようかと、メニューを見ながら迷っていると、代表のソニアが声を掛けてきた。
「まずは、飲んでみることです」
「え?」
「メニューには、いろいろな、じょうほうが、書かれています。ですが、飲

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第7合『真面目な大人の娯楽酒』:酒役〜しゅやく〜

第7合『真面目な大人の娯楽酒』:酒役〜しゅやく〜

 おいしいお酒を選ぶ基準の1つとして、自分のイメージと似たお酒を選ぶといいと、代表のソニアから教わった。
 とは言えど、30種類以上を取り揃えるこの日本酒バーでは、自分のイメージと似たお酒をすぐに見つけるのは容易ではない。

 俺の向かいの席に座る4年の女性、壇光子さんは、なにを頼むのだろうか? 参考にしてみる。
 胸元が大きく開けたカットソーから覗く、豊満なボディー。先ほど自己紹介をしたときの話

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第8合『責められる快感酒』:酒役〜しゅやく〜

第8合『責められる快感酒』:酒役〜しゅやく〜

 俺たち日本酒サークルの事務所でもある日本酒バーでは、全体ミーティングという名の飲み会が続いている。

 俺は、次になにを注文すればいいのか迷っていた。
 自分に見合った日本酒……わからない。頭を抱えていると、代表のソニアに言葉を投げかけられた。
「早く決めてください。早く決めないと、この章が、終わりますよ!」
 この章ってなんだ。
「早く決めないと、読者は逃げてしまいます! 『坂倉修三』から『優

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第9合『ももももももも桃の酒』:酒役〜しゅやく〜

第9合『ももももももも桃の酒』:酒役〜しゅやく〜

 俺たち日本酒サークルの全体ミーティング兼、飲み会は約2時間続いており、そろそろ終盤に差し掛かっていた。
 メンバーそれぞれが、気持ちよく酔っている様子が窺える。

「それでは、次を、最後のオーダーに、しましょう」
 代表のソニアが告げると、メンバーは同意する代わりに、数人が近くに置かれているメニューに手を伸ばした。
 最後の1杯を急いで決めようとは思わなかったのだけど、たまたま俺の左側に置かれた

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第10合『お酒に一升をかけ升』:酒役〜しゅやく〜

第10合『お酒に一升をかけ升』:酒役〜しゅやく〜

 サークルの全体ミーティングを終え、俺たちはそれぞれ帰路に就く。
 終電が迫るメンバーは最寄駅へと歩を進め、ここから家が徒歩圏内のメンバーは2次会へと足を運んだ。
 代表であるソニアがオススメするイタリアンバルへ向かったのは、ソニアと俺。壇さんと藤山くんの4人。いや、ジミーこと辺土里くんもいたので5人だった。

 イタリア人が選ぶイタリアンバルということで、期待は高まるばかり。
「着きましたよ」

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