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【酒話】「学び」を「学ぶ」

高校時代の友人と、久しぶりに、サシで飲みにいった。
いつも、待ち合わせの駅だけを決めて、その近所の良さそうな居酒屋に入るのだが、先日も例外なく同様の流れだった。

友人は、「日本酒が美味しいお店」と銘打っている居酒屋を発見し、店先を指さしながら、思わず、「あ」と言った。
僕は、頷きながら返事を返す。「うん」
杯を交わすことで生まれくる呼吸である。

手動扉をガラガラと開けた僕は、ピースサインをつくりながら店内に入っていく。いつだって、らぶあんどぴーすの精神だ。
「2名様ですね? すみません。ただいま満席でして、空きましたらご連絡させていただきます」
待ち時間は1時間以上だということだったので、店員に電話番号を告げ、僕たちは、それまで他の店で杯を交わすことにした。

その店から、徒歩30秒のところに、「珍しい日本酒あります」と店頭に張り紙がある居酒屋を発見した。
僕は「あう」と言い、友人は「ん」と答える。

その張り紙には、いくつか日本酒の名前が載っていたのだけれど、中でも気になる文字列があった。

「澤屋まつもと 純米酒 守破離」

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僕は、この命名にとてつもなく惹かれた。

なぜなら8年ほど前、須藤元気さんの著書の中で、この言葉を知ったからだ。

学びの基本は、「守・破・離」である。
まず、師匠から教えられたことを、忠実に「守り」、基礎ができれば今度はその教えを「破る」のだ。つまりアレンジを加えるということ。そして最終的には、師匠から「離れて」、オリジナル化する。

諸説あるが、元々は、武道や茶道などで大切にされていた言葉だそうだ。

武道家である僕も然り、この言葉を大切にしている。ちなみに、ブドウ科であるブドウのようなフルーティな味の日本酒が好みである。

これまでの人生で、僕は書くことを学んできた。
師は特定しただれでもない。
我以外皆我師(われいがいみなわがし)
和菓子は、日本酒とよく合うが、ここでの「わがし」とは、我が師のことである。

過去に紡がれてきた、先人たちの、さまざまな言葉を、自分の中に落とし込むことで、基礎を「守り」、ユーモアを交えて「破る」ことで、完全なオリジナルな言葉たちへと「離れる」ことができた。

「我が師」である、みなさまのお陰である。ありがとう。
今後とも、いろいろと面白いことを企んでいるので、期待していてほしい。

「守破離」の精神のもと、成長し合ってきた友人とは、このあとも、言わずもがな、素敵なお酒の空間を共にしたのだった。
2人の魂揺さぶる杯は、今後も交わし、続いていく。

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