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LINE開発の舞台裏について話してきたこと

#pmconfjp にてLINE開発の舞台裏とプロダクトマネージャーというテーマで登壇してきた。

こんな強そうなテーマになったのは、プラチナスポンサーなのに肝心の登壇で下手うったら承知しないぞという社内からの闇の圧力があったことは想像に難くないだろうが、そんなことを書くとまた怒られるのでやめておこうと思う。

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以下のようにスライドも公開してあるが、会場の空気を掴みに行くために意図的に端折って書いた部分とか、そこだけ読むとミスリーディングなように思ったので、誤解の無いよう発表内容を補足したいのがこの記事の趣旨となる。

私自身について簡単に自己紹介すると、今は主にiOSとAndroid向けのLINE(メッセンジャー)アプリ全体をPMという立場で見ている。

LINEについては多分説明不要だと思うが、日本・台湾・タイ・インドネシアの4ヶ国合わせてMAUが1億6500万くらいのメッセージングアプリだ。
アジアでしか使われてないと思われがちだが数百万人くらいの規模で使われている国は実は欧米等でも割とあったりする。
なので世界全体でのユーザー数はもっと多い。

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LINEのPMについて話すにあたり、採用面接などでLINEで働きたい動機として言っていただくポイントが3つくらいあって、それをネタに中の人から見える景色を解説してみた。

・海外展開しているサービスなのでグローバルな環境で働ける
・フラットな組織とカルチャーでみんなの意見が尊重される
・多くのユーザーから大規模なフィードバックを受けられる

分かる。どれも間違ってはいない。

グローバルな環境で戦うということ

LINEは日本・台湾・タイでNo.1のメッセージングサービスだ。
逆に言うとこれらの国では大多数の人が既にLINEを使っていて伸びしろに限界がある。我々が鮮烈な新機能をリリースしようが劇的にUXを改善しようがMAUへの短期的な影響はほとんど無いと言っていい。
LINEがMAUを伸ばすためには、これら以外の国で既に競合サービスが囲い込んでいるソーシャルグラフに食い込んでいく必要がある。
そしてそれは相当に険しい道だ。

フラットな組織でみんなの意見が尊重されるということ

・フラットなので誰もPMの言うことなど聞かない()

多分資料の中でここが一番誤解を与えやすいと思うゴメン。
これは単にプロジェクトメンバーの立場が対等であるということを言いたかった。

この登壇を終えた後にエンジニアとかQAの人たちが

「俺らのこといい感じに話してくれたんか?」
「なんか言うこと聞かないとか言われてたらしい」
「エー」

みたいな感じで不服そうに絡んできて、お前らホントそういうとこやぞと思ったが、それを別にしても実際LINEの開発現場は非常にフラットだ。

企画だけでなく開発・デザイン・QAメンバーまでもがプロダクトをより良くするために活発に意見を出し合い、それぞれの主張がユーザー観点で説得力を持っていることが多い。
そんな中でPMの立場としては飛び交う無数の意見を尊重しながら最終的な意思決定をしなければならないし、何故そう決めたのかという説明責任も負うことになる。

大規模なユーザーフィードバックを受けるということ

とにかく熱量の高いユーザーの声がインターネット上に溢れている。
例えば日本におけるLINEのアクティブユーザーは月間で7千数百万だが、ネット上ではそのうち数百人くらいがLINEに対してネガティブなことを発言するとそれだけで結構炎上っぽくなる。
つらい。

あと、老若男女問わず使われているプロダクトなのでユーザー像とかペルソナを絞りこめない。
ITリテラシーにしても、スマートフォンのことはちょっとよく分からないけどLINEは使ってますみたいな人が結構いる。

圏外になるとトークできなくなるバグを早く直してください

この☆1つのユーザーレビューをApp Storeで見かけたとき、さすがの私も膝から崩れ落ちた。

LINEのPMに求められること

ネガティブなことばかり書いてきたが、翻ってこれらの事柄に向き合っていけることがLINEのPMに求められる資質だと思っている。
スライドにも書いたが、

・目に見える数値の変化だけでなく、文化の違いや変化を理解し続ける努力
・意見を尊重した上で結論を出す決断力&時には自分の意見を曲げる柔軟性
・熱量の高い市場の声に耐えながら、本質と向き合い続けるタフさ

みたいなことに集約されるんじゃないだろうか。

ユーザーリサーチから学べること

ここまでLINEならではの環境とか文化について書いてきたが、LINEで3社目になる私のキャリアと照らし合わせると実際のプロジェクトの進め方とかは他の会社と大きく変わらない。

特徴的なのはユーザーリサーチで、オフィスの中に立派なリサーチルームもあるし、年に1回くらいの頻度で海外にもリサーチに出かける。

これは私が真冬のバンコクへリサーチに行った時に撮影した写真だが、よく見てほしい。雪景色のように見えるが彼らはみんな半袖なのだ。
冬でもタイは結構暑いし雪は降っていない。

LINEでは数年前からクリスマスになるとトークルーム背景に雪を振らせる演出をしていて、タイの現地法人からタイでも雪を降らせてほしいと頼まれたことがあった。
その時は何言ってんだお前と思ったが現地に行くと理由が分かる。
真冬に半袖短パンの国でもクリスマスはやっぱり雪のイメージなのである。

この他にも怪しい自動販売機で買ったプリペイドのSIMカードを使ってみたり、めちゃくちゃ遅いWi-Fiに繋がってみたり、現地に行って体感することではじめて理解できる環境・文化がたくさんある。

送信取り消し機能、その開発の裏側

抽象度の高い話やPMとはこうあるべき論みたいなテーマは多分ほかの登壇者の方が話されるだろうと思ったので、あえて取り消し機能の開発舞台裏という具体的すぎるテーマを選ばせていただいた。
聴衆のニーズに応えられたのかどうかは未だにちょっと自信がない。

これは割と丹念にスライド上にしたためたので詳細な内容に興味のある方は上の方に貼ってあるスライドを見ていただけると幸いだ。
単純に誤送信したメッセージを取り消すというだけのシンプルな機能だが、私が経験した炎上案件の中でも1,2を争うモメっぷりだった。

・LINE上で交わされた大切な約束が取り消しによって反故にされたら?
・いじめや犯罪の証拠が取り消しによって隠滅されたら?
・いつの間にかメッセージが消えてしまう不具合だと思われるのでは?

LINEがコミュニケーションインフラとして抱える社会的責任・プロダクトの根幹と真っ向からぶつかり合うこの機能が、どのような議論を経て現在の仕様に落とし込まれたのか、ありのままスライドに書いてある。

決して無闇に取り消してほしいのではない。
取り消せる時間に制限はあるし、取り消したらその痕跡が残る。
そんな不十分な制約を持たせることで、本当に必要な時にだけ使われるように、決してLINEでのコミュニケーションが無意味なものにならないように、最後は私たち作り手の想いで仕様を決めた。

愛されるプロダクトを作るために機能開発を超えて

今回のカンファレンスのテーマは愛されるプロダクトを作ろうだった。
取り消し機能はLINEとして非常に重大な決断だったが、この機能の必要性をユーザーの皆さんに思い出していただく意図も含め、過去にやらかした誤爆を募集するというユニークなキャンペーンを行うことで、重苦しくならないようにリリース告知を行った。
愛されるプロダクトを作るために、時にはモノを作るだけでは足りないことがある。よく連携してくださったマーケ・PRの皆さんにも今更だが感謝したい。

そして実はまだみんなの黒歴史は残っているので以下のリンクからどうぞ。

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