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第4回神田松鯉のこのネタが聴きたい~秋の夜長に悪党伝

2023年10月12日
浅草・浅草見番へ行ってきました。
当日の公演は『第4回神田松鯉のこのネタが聴きたい』

年1回開催されている、人間国宝・神田松鯉先生の公演です。
今年も木積さんよりご招待いただきました。
ありがとうございます!!

今回は『秋の夜長に悪党伝』と題し
畔倉重四郎より『御坊殺し(栗橋の焼き場殺し)』です。



演目

神田松鯉 畔倉重四郎『御坊殺し』

~仲入り~

芸談(聞き手・木積秀公)


まとめ・感想

約1年ぶりの松鯉先生の高座。
まずはお元気そうで何よりでした。

御歳81。
お米のジュースを飲まれているようなので
まだまだお元気でご活躍されるでしょう!

今回の芸談は、松鯉先生のパーソナルな部分に迫る質問もあり
意外な一面を知ることができました。

松鯉先生のファンが集まる公演なので
マナー知らずの客はおらずとてもいい雰囲気。
来年もあれば、是非参加したいと思います。


畔倉重四郎『御坊殺し』

物語についてはwikipediaや伯山ティービーがあるので
そちらをご参照いただくとして…

以前拝聴した怪談でも感じたのですが、
松鯉先生は淡々と話を進めているのにとても怖い。

『おい三五、弥十もやっちまおうぜ』
すでに三人殺めている重四郎が
悪びれもなく言うこのセリフに身震いしました。

誇張表現がなくても
情景が強烈に伝わってくるものなんですね。
またひとつ勉強させていただきました。



芸談

主催・木積さんとの質問回答形式です。
いくつか聞き漏らしているところもありますが、ご容赦ください。

木積(以下・木):(畔倉は)寄席ではできないネタ…
松鯉(以下・松):寄席でやったら○されますよ。お客に。

木:悪党伝をリクエストしようとしたきっかけは…寄席は笑いに来る場所だから、悪党伝ができない。そういう救われないネタをやるきっかけがあってもいいじゃないかということで企画した。
松:寄席でもできるネタはある(河内山宗俊・玉子の強請 他)。いい部分があれば寄席でもできる。


以下、参加者からの質問
木積さんが代表して質問を投げかけます。

木:昨年の荒川十太夫に続き、今年は俵星玄蕃が歌舞伎上演。講談を歌舞伎にするときの脚本として気を付けている事、またどのような舞台にしてもらいたいと考えてるか?
松:脚本自体は私が書いているわけではない。狂言作者(竹柴潤一さん)がお書きになっている。ただ、目は通している。ここは直した方がいいとか、講釈の基本的な考えを注射する。

木:(松鯉先生)俵星はやるのか?
松:やらない。ネタは全部知っている。講談は6000席あると言われているので全部やれない。が、有名なネタは(講釈本・)速記本をを読んでいる。このネタは元々『杉野十平次(次房)』。赤穂義士銘々伝・杉野十平次の中に俵星玄蕃が出てくる。
今回俵星玄蕃にスポットを当てたいので資料を調べたら、『赤穂義士外伝・俵星玄蕃』があったので、そちらを採用した。

木:どのような経緯でこの話が来たのか?
松:松竹の製作担当者から話が来た。荒川十太夫のヒットで味をしめたらしい?松竹の製作者が講談を読んでいるようだ。

木:講談にはいろいろなネタがあるから、掘り起こしていけば出てくる。
松:嬉しい現象。幕末から明治にかけて河竹黙阿弥が、二代目松林伯圓先生とつるんで講釈を芝居化していた。もしかしたらその時のような現象・ブームが来るかもしれない。そうすれば講談にもスポットが当たる。

木:そうなれば、先生は功労者の架け橋に。
松:この歳だからいつまでがんばれるかね…

木:お差し入れにもらって嬉しいものは?
松:決まってますよ!お米のジュースです!ただ持って帰るのも重いので、できれば家に送ってもらいたい(笑)
木:銘柄は問わない?
松:獺祭を送ってくれる方が多い。どこかで言ったかな。名酒送ってもらえるので家計が助かっている。

木:狼の鳴き声が聞こえる『狼退治』を聞いてみたいのですが、もう聞けないのでしょうか?
松:寛永と天正宮本武蔵伝両方読むが…。神田派の寛永宮本は、『寛永御前試合』をもじっている。
木:DVDで先代山陽先生の狼退治を観たが、軽い。
松:師匠のような軽さが出ない。落語界で育っている師匠は軽さが身についている。一時期『絵本宮本武蔵』としてやっていた。

木:先生はご自身の講談を映像・音源に残したいですか?人によっては嫌という方もいますが…
松:出来がいいのは残したい。が、出来が悪いことが多い。終わった後自己嫌悪を感じることが多い。文化財研究所にデータが残っているが、コロナで3年中断している。
木:今は柳沢昇進禄と祐天吉松をやっている。
松:第一回目はお目通りという事で、『勧進帳』と『扇の的』をやった。文化財研究所で使っている釈台は、三代目神田伯山が使っていた。高座布団は杉村春子さんが使用していたもの。

木:ネタを読んでいて頭が真っ白になってセリフが飛んだことはあるか?
松:二度ある。
一度目は独演会で『扇の的』をやっていた時、言い立てでつっかえた。「忘れました」と言ったら客席から拍手が。それで思い出した。
二度目は寺坂の口上(二度目の清書)、その時は高座を降りた。


おまけ
当日の写真です。




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