Yahoo!広告からアフィリエイトサイト排除!市場インパクトに関する簡単な考察など

Yahoo!プロモーション広告からアフィリエイトサイトが排除されることが発表された。

この影響について、私の認識を簡単に記しておく。

なお、私はストリクスというサービスを通じて不正リスティングアフィリエイト対策を仕事にしている人間である。それらの不正広告による経済的インパクトについて日々考えていた。

ひとりでやっていた仕事であるので、あまり大きな自信は無い。ただ、たぶん意味のある論説にはなっていると思う。

不正なリスティング広告の市場規模について

リスティング広告を使った不正なアフィリエイトの市場規模を、私は年間200億円と見積もる。根拠は以下。

1.ストリクスで検出した不正サイトによる不正アフィリエイトの報酬金額総額は、年間約10億円。これは事実を基に仮定を重ねて算出した数値である。計算の考え方は下記。

2.ストリクスによるアフィリエイト業界のカバー率を5%と仮定する。

3.上記1.の10億円を2.の5%で割り戻すと年間200億円になる。これが、私が仮定をもとに計算した、不正なリスティング広告を使ったアフィリエイトの市場規模である。

Yahoo!プロモーション広告からアフィリエイトサイトが排除されるとすれば、この私の考えを信じるのであれば、年間200億円ぶん、市場規模が縮小するということになる。

一方、アフィリエイト業界全体の市場規模は年間2933億円である。出典は矢野経済研究所

年間200億円という金額は私の主観としては大きな金額と感じるが、一方でアフィリエイト業界全体に占める割合は6.8%だ。小さくもないが莫大でもない、という感じだろうか。

twitterでの反応を見ると動揺している人が結構いらっしゃるように見えるが、大雑把な議論としては、アフィリエイト業界全体に対するインパクトは大きくないと思われる。

ただ、売上の6.8%という割合は、企業の営業利益率の感覚と被る。これまで黒字を出してきた企業が赤字転落する、ということは散発的に発生するように思う。会社は潰れないけれど、利益は消滅するということだ。

なお、上記試算は検索結果画面のリスティング広告のみについて考察したものである。Yahooサイト内の記事下や、Yahooが外部サイトへ配信しているレコメンドウィジェット広告は含んでいない。それらの中にもアフィリエイトサイトへの動線となる広告が多数含まれているが、上記の6.8%はそれらを含んでいない。

ASPごとの不正比率

なお、ASP(アフィリエイトサービスプロバイダー)ごと、広告代理店ごとに、この不正による売上比率は大きく異なると思われる。

アフィリエイト業界に居る人であれば、ASPごとにさまざまな色があることを肌で感じているだろう。その感覚が、たぶん正しい。

既に不正対策をしているASPであれば、今回のYahooの施策で受ける影響は大きくない。一方で、不正PPCに売上の多くの部分を頼っているASPもいるように見える。小規模ASPの中には、壊滅的な打撃を受けるところもあるだろう。

遵法的なPPCアフィリエイトと不正なPPCアフィリエイトの比率

上記で書いた数値等は、あくまでも「不正PPCアフィリエイト」についてのみ考察したものであり、遵法的なPPCアフィリエイトについては言及していない。それらは、上記数値の外数としてインパクトに加わる。

私は遵法的なPPCアフィリエイトの市場規模を考察する手段を持っていないので、この点は私にはわからない。

私の肌感覚としては、不正なPPCアフィリエイトの方が、遵法的なPPCアフィリエイトよりも多いだろうと感じている。もしその感覚を信じるのであれば、アフィリエイト業界全体に対するインパクトは大きくないということになる。

ただ、やはりこの点については感覚的な話にすぎない。

アフィリエイト的であるがアフィリエイトではないサイトについて

アフィリエイトっぽいがアフィリエイトではない広告サイトも多数存在している。

狭い意味でのアフィリエイトサイトとは、いわゆるASP(アフィリエイトサービスプロバイダー)のシステムを使ったリンクを貼り付けてあるサイトを指すことが多いと思う。

しかし、Yahooの広告内には、ASPを介さず、広告代理店が広告主と直接アフィリエイト的な契約を結び、報酬体系としてはアフィリエイトと同様のお金の動きをしているらしきサイトが多数ある。

それらのサイトが、今回のアナウンスで記述されている「アフィリエイトサイト」に含まれるのかどうかも疑問だ。

レコメンドウィジェット広告に含まれている薬機法違反等の違法サイトのうち、ASPを介したアフィリエイトサイトが占める割合は、私の調査では全体の3分の1である。

残り3分の2の違法サイトは、おそらく企業体の広告代理店が作っていると思われる。もし、今回のYahooの施策が狭義のアフィリエイトサイトしか対象としないのであれば、違法広告はあまり減らないという結果になりそうな印象を持つ。

実効性を持つのか

今回のアナウンスの内容を、Yahoo!としてどこまで本腰を入れて対応するつもりなのか、という点もよく見えない。実際どうなるかは、適用開始日である2019年6月3日になってみないとわからないだろう。

不正PPC広告の出稿者は、これまでも様々に知恵をこらして色々なプレイヤーの監視をかいくぐってきた。これから、Yahooと不正PPC出稿者がガチで化かし合いをすることになる。この勝負にYahooは勝てるのか、という論点もある。

Yahooはどこまで本気なのか、という論点と、Yahooと不正PPC出稿者の本気のバトルでどちらが勝つのか、という論点があり、どちらも予測不能に思える。

やはり、2019年6月3日になってみないとどうなるかはわからないだろう。

検索結果がキレイになることは歓迎

私の、いち検索ユーザの視点としては、Yahooの検索結果広告の品質は高くなかったという印象だ。広告をクリックしてみたら無価値なサイトに飛ばされて、イラっとした経験を持つ人はたくさんいるだろう。

今回のアナウンスは、Yahooとして検索結果広告の品質が高くなかったことを認め、改善するスタンスを見せたということになる。

悪い現状を追認するよりはずっと良い。だから今回のアナウンスは歓迎したい。ただ、実効性を持つのかは注視したい。

以上

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