ウタをめぐる冒険。〜郡上白鳥 2017初夏〜 その1

6月10日〜11日と岐阜県郡上市の白鳥に行って参りました。もはや何度目だという感じですが、今回は岐阜でクリーニング屋を営みながら、異様に郡上〜白鳥界隈に顔のきく&お囃子グループをやっている&いろいろ東京の白鳥おどり好きに気をかけてくれて、面白い人を紹介してくれたり、踊りや唄の作法を教えてくれたり、お世話になりまくってるダンディ「なっきお」さんが「よかったら、僕らのお囃子グループが公開練習会を開催するので踊りに来ませんか」とのご招待で、総勢7名のメンバーでレンタカーに乗り込み出かけました。

ちなみに道中の車の中では、延々と途切れることなく郡上一円の民謡音源が流れ続け、それに合わせてメンバー一同が大合唱のカオス状態。

パーキングで牧場のアイスクリームをねぶりまくる男たち。夏感。ちなみに、人がアイスクリーム食べてる顔って、どこかトンマな感じがしてよくないですか? 余談です。

7時間ほどのドライブで郡上八幡に到着。白鳥に行く前にちょっと観光です。.......すみません、免許なし太郎の私は地蔵のようにシートに座っているだけでした。ドライバーのみなさん、ありがとうございます。

旅メンバーの中で「鶏ちゃんが食べたい!」との熱狂的なコールが巻き起こったので、お昼ご飯は八幡の町中にある「泉坂」で「鶏ちゃん定食」。ちなみに「鶏ちゃん」とは、鶏肉を味噌や醤油やらのタレで野菜とともに焼いた郡上の郷土料理であります。これを食べると「郡上きたな」って感じがする。

結局、全員「鶏ちゃん定食」を食べる。

メシを食った後は、「郡上木履」さんを訪問。郡上木履さんは、オシャレすぎて頭がどうにかなりそうな下駄を取り扱っている専門店です。お店に足を踏み入れた途端、「あれも欲しいこれも欲しい」で脳内CPUが一瞬でパンクしてしまうでしょう。かくいう自分も、ニュートラルな状態で来店したにも関わらず、数秒後には「これください」とお店の方に話しかけていました。

続いては、「郡上八幡といえば水やろ!」ということで、川に向かいました。最初は「川遊び? まだ、寒いやろが......」とローテンションでしたが。

川、めっちゃ、楽しい!!!!!

わかりやすく、ストレートに楽しい。なにこれ。川、ごめんな。お前、めっちゃ楽しいじゃん。最高じゃん。夏は川じゃん。最終的にはオタマジャクシを探し出すメンバーもいて、完全に小学生の夏休みでした。

メンバーの一人から「明宝フランクフルトが食べたい」という熱い要望があったので、そのフルトを売っているという「郡上八幡城下町プラザ」に向かうと、なんと売ってない。「だめだ、いま口の中が完全にフランクフルト」と既に禁断症状を発していたため、別の店で明宝フランクフルトを取り扱っているお店を探して訪れる。「アンテナショップぶなの木 セルプの店「町家千代」」は、日用品や雑貨を売っている小さなお店。手作り感のあるのぼりが可愛い。店の奥にカフェスペースがあり、そこで食べることも可能だとか。

イベントとかもやっているよう。なんとなく西荻窪の「信愛書店」と雰囲気がかぶる......。

喫茶スペースでフランクフルトを待っていると、素敵な出会いが。仲良くお茶を飲んでいたお母さんと息子さん。手前にある店の方だそうですが、「これから白鳥に行って唄を習いに行くんですよー」と言うと、「実はお母さんは白鳥の出身なんです。僕も生まれたのは白鳥」と息子さん。さらに我々が習う曲目が「嘉喜踊り」であることがわかると「そうなんですか。お母さんは中津屋(「嘉喜踊り」が伝えられている町)の生まれだから、嘉喜踊り歌えるよ」。そう水を向けると、静かにゆっくりではありますが、お母さんがとても優しい歌声で「嘉喜踊り」の歌詞を誦んじ始めたのです。「東西 東西 おお 鎮まりたまえ......」

「お母さんの父親は歌い手だったから、小さい頃から嘉喜踊りを聞いていたんだよ。だからお母さんが生まれて初めて覚えた歌が嘉喜踊りかもしれない」

歌い終えた後に、ニッコリと笑うお母さん。認知症だと伺ったのですが、これだけスラスラと歌が出てくることにビックリ。なにより、何の約束もなく偶然出会った女性の口から、まさかこれから習いに行く「嘉喜踊り」の唄が聴けるとは。もう、これは何者かに導かれているとしか考えられない(スピリチュアル発言)。驚きと、畏怖のような感情で、しばらく言葉が失われてしまうほどでした。もう、これは早く白鳥に行かなくては!

美濃白鳥に到着すると、あいにくの雨模様。何度も足を運んだ場所とはいえ、やはり久々にくると気持ちが高ぶリマス。ああ、また白鳥に来たのだ。まずは駅前の「上田楽器店」に立ち寄る。その名の通り楽器店であり、音楽教室も経営しているお店だが、独自に「白鳥おどり」関連の貴重音源を録音〜制作〜販売している奥美濃民謡レーベルでもある。個人的にも通販で取り寄せたり、祭りで遊びに行った際には足繁く通っていたのですが、昨年今回と同じ旅メンバーで訪れた際にはお店のお母さんと意気投合し、亡くなった旦那さんが個人的に収集していたという様々な民芸品を見せていただいたのでした。

↑上の写真は昨年、上田楽器店さんを訪れた際のもの。

なんと今日の唄講座にお母さんも参加するのだとか。さらに、明日の朝にもし時間があればお茶をご馳走するからうちに立ち寄ってね、というご招待をいただく。なかなかドタバタのスケジュールではあるのだが、お母さんのお誘いならぜひ!ということで、楽しい予定が追加されました。

続いて訪れたのが「白鳥印刷」という印刷所。少し説明が必要になるのですが、今年の3月に開催された、われらが「のらぼん」チームも参加させていただいたイベント「銀座の恋マルシェ」用ににゃんとこさんが作成したZINE。このZINEの印刷をお願いしていたのが白鳥印刷さんだったのです! 東京から遠く離れた白鳥の印刷所に依頼するとは、にゃんとこさんのこだわり、ズバ抜けすぎ......と度肝を抜かれたわけですが。ご挨拶で伺うと、今日は休業日のご様子。しかし、ミラクルなことに、事務所の玄関に丁寧ににゃんとこZINEが置かれていたのです! うわー、わざわざ飾っていただいているとは! グッときますわ!

駅近くの「角忠旅館」にチェックインして、腹ごなしに定食屋の「大和屋」へ。カレーライス、オムライス、中華そば、うどん、なんでもござれの僕好みの大衆食堂なのであるが、おすすめは「奥美濃カレーカツ丼」。出汁のきいたカレーソースがたっぷりかかったカツを白米と一緒にハフハフと口にかっこめば、そこは天国。美濃白鳥駅周辺で腹が空いたら、迷わず大和屋に駆け込みましょう。

空腹を満たしたら、いよいよ唄講座へ。会場である「白鳥ふれあい創造館」という公共施設に向かいます。この講座は正確には「見付流 唄講座」という名称で、白鳥の拝殿踊りが開催される「前谷白山神社」を取り仕切られている日置正樹さんらが主催されているワークショップイベントです。毎月開催で、月ごとに課題曲が変わるというもの。先生は「白鳥拝殿踊り保存会」の会長である見付義勝さん。御年80歳で、白鳥おどり関連の音源でも数多く歌を吹き込まれているレジェンド的な存在です。そんな見付さんに郡上白鳥の唄を直接教わることができる貴重な機会! これも、今回の旅のきっかけとなった「なっきお氏」のお誘いだったのですが、結果的には本当に参加してよかった! もちろん、なっきおさんも参加しています。

今日の課題曲は先述の通り「嘉喜踊り唄」。そもそも嘉喜踊りってなんやねん、という話ですが、正直私もうまく理解できていないので、以下引用しちゃいます。

 嘉喜踊は、郡上地区一般に伝えられている祭事芸能である。
村人総参加の華々しいもので、参加人員はときによって異動はあるが、全村民氏子が参加することが原則であろう。行列は、白玉、露払い、薙刀、奴、剣持、田楽、祢宜、おかめ、天狗、花笠、拍子打、笛吹、歌い手、素奴、太刀奴、踊り手の計150人という大がかりのものである。
揖斐川流域に伝わる鎌倉踊りと称する太鼓踊りの原型に、後世になって五穀豊穣、白山信仰、八幡信仰等が加味され、それに太神楽が混交したものであろう。
(参照:岐阜県公式ホームページ

「郡上地区一般に伝えられている」という記述の通り、場所によって「掛踊り」など表記も変わるようです。実際の祭りは僕も見たことがないのですが、映像や写真を見ると、胸に太鼓を抱え、背中に大きなささら?を背負った人々が踊るという感じで、これは東北〜関東の鹿踊や三匹獅子舞に似てるなあという印象。何かしらの繋がりはあるんだろうなあ。

全員で声を揃えて唄いながら、続いては一人ずつ見付さんが目の前に付きながらのチェック。先生が直々、歌詞を鉛筆でなぞりながら、唄うテンポを教えてくれます。カラオケで歌詞の色が変わっていくあのシステムの人力版! しかもレジェンドにやっていただけるとは! 自分の順番が近づいてくると心臓ばくばくなわけですが、なんとか私も唄い切りました。最後に「ここら辺が怪しかったね」と一言コメント。あ、ありがとうございます!

唄の指導の合間に、見付さんの小話もちょくちょく入って来て、それも面白く、興味深い! 歌詞の意味や、唄の由来などなど。昔は、「嘉喜踊り唄」は限られた人しか唄わせてもらえなかったようですが、伝統が消えつつある現在では、これだけ多くの人にこの唄を歌ってもらえるのは嬉しい、という見付さんのお話に胸打たれます。そうなんだ。誰かが唄わなければ、この歌は人間の歴史や人の記憶から消滅してしまうんだ......当たり前のことなのですが、改めてそう考えると、なんとも言えない気持ちが込み上げてきます。だからこそ、こうやって今自分が下手ながらも口づさんでいるということが、とても大きな意味があるような気がしてきます。

講座が終わると、なっきおさんが近づいてきて「もしかしたら、もう話が耳に入っているかもしれませんが......」と切り出します。事前に「唄講座の後に拝殿踊りの練習会をしましょう」という話が聞いていて、公民館の近くの公園などでやるのかな......と思っていたら、なんと日置さんが前谷白山神社を練習用に貸していただけるというのです。うおー、シーズン前に拝殿で踊れるとは! もともと日置さんは初めてお会いした日から「宿がないなら神社で寝てええよ」と提案してくれるくらい器が東京ドーム3杯分くらい広大な方ではあるおですが、本当になんでここまでしていただけるのでしょうか......。というわけで、東京メンバー小躍りしながら車に乗り込み、いざ前谷白山神社に。

講座に参加されていた方々とともに、薄明かりの下で拝殿踊り! 「なんの曲がええ? リクエスト受け付けるよ」と、終始心がカスピ海のようにビッグな日置さんのお言葉に甘えて、たっぷり数曲分を堪能。輪の中の踊り子が交代しながら唄っていくのが拝殿スタイルなのですが、東京組も勇気を出して一人一曲は小唄を披露。私自身も直前に暗記した歌詞を2つほど出させていただきましたが、まだまだ練習が足りませんなと身の程を知った&気合が入ったのでした。

拝殿練習会で収録したライブ音源。後半で日置さんが艶っぽい歌に挑戦しています。こういう下ネタが盛り上がるんです。

宿に帰って、メンバーで打ち上げ。まだ1日しか経ってないのですが、濃厚すぎる内容に、全員がまだここまでに体験したことを整理仕切れていない状態。興奮冷めやらぬまま、唄や踊りのことを語らいます。のらぼんのイベントでいつも音頭取りをお願いしているメンデルさんも、先ほどの唄講座や拝殿踊りでスイッチが入ってしまったようで、やや変なテンションです。

というわけで、ようやく1日目の終了ですが、さらに翌朝にもとんでもないミラクルが起こってしまうわけです......というわけで、続きは次の記事にて。

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小野 和哉

盆踊りデイズ

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