「ライフガード」という飲み物

「ライフガード」という飲み物がある。迷彩色のパッケージが印象的で、液体は緑色。炭酸飲料だ。商品名に反して、いかにも体に悪そうな風態なのだが、僕はその飲み物が好きだった。

子供の頃、居間でテレビを見ていると、父親が「これで何か買ってきて」と百円玉を何枚か握らせる。その瞬間が、心踊るほど嬉しかった。家を飛び出して、近所のコンビニに向かう。父親は大抵はコーラ(父はアルコールを全く飲まない)、そして自分の分は決まって「ライフガード」を買っていた。

なぜそこまで心惹かれたのかは分からない。飲み干すのがもったいなかったので、ペットボトルのキャップに少しずつ注いで、そのグリーンの透明な液体を愛おしみながら、チビチビと大切に飲んでいた。

大人になってから、さっぱりと手に取る機会がなくなった。子供の頃にだけ見えるという某ジブリのキャラクターのように、目にすること自体が少なくなった。一時はもう消えてしまったかと思っていたのだが、またしばらくするとコンビニなどで見かけるようになった。パッケージなどの装いはリニューアルしているが、迷彩のカラーは変わらない。まだ、この奇妙なドリンクはしぶとく生産されているようだ。

「懐かしいなあ」と久しぶりに飲んでみると、「ああ、これこれ」とは思うが、特別おいしいとも思わない(失礼)。なんの味だろうこれは。何ものにも例えられない、「ライフガード味」としか言いようのない、このテイスト。そもそも「ライフガード」ってどういうことなんだ。何を、どのように守ってくれるんだ。

ライフガードのことをネットで調べようとして、すぐに手を止めた。子供の頃の思い出が揺らいでしまいそうな気がしたからだ。よく分からないけど、大好きだったあの謎の飲み物。ライフガードは僕にとって、そういう存在であって欲しいのだ、これからも。


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小野 和哉

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