銭湯×宴会カルチャーの"お熱い"可能性

昔ながらの健康センターや大型銭湯には、いまだ「宴会場」「大広間」なる、飲んで歌える施設があります。慣れていない人間からすると、かなり異質な雰囲気なんですが、不思議な多幸感に満ちている場所でもあります。銭湯の非日常感と、宴会の祝祭感が生み出す「可能性」について考えてみました。

横浜の「東京園」のこと

かつて横浜市港北区の綱島に「綱島ラジウム温泉 東京園」というパラダイスがあった。もともと、この綱島という地は戦前から温泉地として賑わっていたらしい。「東京の奥座敷」とも呼ばれる立地の良さもあって、多くの温泉旅館があったそうだ。そもそも現在の綱島駅が「綱島温泉駅」というから驚きだ。そんなかつての盛況の名残を唯一とどめていたのが、この「東京園」だった。

<参考記事>
横浜市内全駅全下車の「はま旅」第61回は、かつて温泉地として栄え、「綱島温泉駅」という駅名だったという綱島駅。<はまれぽ>
http://hamarepo.com/story.php?story_id=1096

施設内には入浴施設のほか、大小の宴会場を複数備えていて、これまた施設内の売店で買ったお酒や軽食、おつまみを(持ち込みも可能だった)を楽しみながら、カラオケに興じることができた。

かつての観光地としての賑わいはなくなっても、この東京園は地元のおじいちゃんおばあちゃんたちの憩いのスポットとして愛され、ステージではカラオケの歌に合わせてマダムとダンディが社交ダンスを踊るという微笑ましい光景がみられた。近年になって、この楽園が若者たちに「再発見」されると、若い客層が増えただけでなく、宴会場を貸し切った音楽イベントなども盛んに開催されるようになった。僕は東京園のことを知ったのもこのタイミングだ。オールドスクールな「温泉+宴会カルチャー」と、今でいう「サードプレイス」的な居心地位のいい場所を求める若者たちが、「宴会場」という接点でクロスオーバーして生まれた、その時間と空間はたまらなく面白く、美しかった。(下の画像は、まったく初対面のヤングとマダムが、その場のグルーヴに突き動かされて化学反応的に社交ダンスをはじめた奇跡の瞬間です)

これからますます面白くなっていきそう、という矢先に「東京園」は休業。一部施設は残して数年後に再開されるという噂もあったが、いまだその気配はない。東京園がなくなって横浜に足を運ぶ機会はグッと減ってしまったが、あの宴会場の熱気はいまだに記憶の片隅に残っている。

実はまだある「宴会場」

お湯のある場所と、唄は昔から相性がいいようだ。というのも、銭湯や民謡関連の研究所を読んでいると、銭湯の湯船に舞台を作ってお金をとって人々に民謡を歌わせる商売があったとか、戦後に銭湯施設の舞台で客が代わりがわりに余興を披露する「娯楽温泉」「民謡温泉」が流行っただとか、そんな記述をちらほらと見かけることがある。

まさに先述の「東京園」はその手の場所だろうし、いまだに関東近郊でも銭湯であれば「蒲田温泉」「ゆ~シティー蒲田」「桜館」(みんな大田区だな!)、健康センターなら「草加健康センター」など、自分の知っている範囲でもけっこう広間や宴会場のある施設は残っていたりするのだ。

人を「スキだらけ」させてしまう快楽装置

そういえば、お風呂に入った時に無意識に「ふふ〜ん」と鼻歌を口ずさむ瞬間が、誰にでもあったりしないだろうか。お風呂と歌って相性がいいのかもしれない。そして、さらに一歩考えを深めると、銭湯って暖簾をくぐれば皆素っ裸、強制的に人を丸裸というスキありまくりの状態にしてしまう空間だし、宴会場で不特定多数の前で酒を飲んで歌うという行為も、ある意味では自分をさらけ出す行為ってことになるのではないだろうか。

色々ととりとめもなく書いてしまったが、在りし日の「東京園」のことを思い出しながら、また再び世代を超えて「銭湯×宴会カルチャー」が爆発する場が登場すればなーと思った次第です。

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小野 和哉

サウナと銭湯の日々

銭湯やサウナについての記事です。
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