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今こそ「道」という概念

ポーランドの山の中にご縁あって来ている。

ワルシャワからバスで3時間ゆられたところにこのDojo(道場)という世界的な空手の施設がある。素晴らしい自然の中にあって、そこで「人の幸せのための人工知能」について、講演するためにここにきた。

「サピエンス全史」で有名なユバル・ハラリ氏が最近のインタビューで「人工知能や技術によって世の中の変化が激しくなり、同時に人生100年時代になっていくと、人は一生学び続けることが求められる。これに人が精神的に耐えられるかが社会的な一大課題になる」という趣旨のことをいっていた。

ハラリ氏の主張には、納得するところが多いのであるが、この点にはちょっと違和感があった。その答えが、このポーランドの道場で見つかった気がする。

小高い丘の上に建つ道場の入口に入ると次の言葉が目に飛び込んでくる。「武道とは、精神と肉体の鍛錬に依って、人格の完成を目指す道である」。言葉の真摯さが迫ってくる。日本では失いかけているものが、このポーランドの地にまだしっかりと生きているのに驚かされた。

日本では、一生学び続け、自らを高めていくことを「道」と呼んできた。武道、茶道、剣道、柔道、香道などの言葉にこれが残っている。なにも一生学び続け、高め続けることは人工知能によって始まった訳ではない。実は、我々には大変なじみのある概念なのである。

むしろAIによって、我々が失いかけているルーツを再認識し、再構築する機会ともいえるのである。

この道場では、空手の世界チャンピオンPawet Junusz氏に空手の基本を1.5時間に渡って指導いただいたが、礼に始まり礼に終わり、瞑想の仕方や呼吸さらには気合の入れ方をポーランド人に習うのは大変新鮮だ。

さらにJunusz氏はいう。「武道の目的は、他人に勝つことではなく、自分に勝ち、常に昨日の自分を超えていくことにある」という。以前の日本には自然にあったが、今は失われかけている考え方をポーランド人に教えてもらった。そして、これこそが人工知能時代に我々に求められることなのではないだろうか。


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