見出し画像

コギャルと私。

自己紹介:妻の転勤の機に福祉施設の施設長を退職し、持ち家も処分。当時13歳の娘と家族3人で2023年夏にオーストラリアに移住の48歳。現在子育てと家事全般を行う完全専業主夫。ワーホリのタグ付けをしているが、ワーホリではなく働く予定も特になし。一応、社会福祉士だが外国ではなんの意味もない。吉本芸人チャド・マレーンがオーストラリアを「ラリア」と呼ぶことに感銘を受け、そのまま使用する。


夕食時の12歳の娘の一言をきっかけに、どーでもいいことを真剣に講義をする47歳。これはその記録です。

第一章

娘12歳「こればかりはパァパに聞いてもわかんないと思うけど、試しに聞いていい?」

夕飯を食いながら12歳がいう。ほう、パァパにわからないことがあるとお思いか、チミは。チミは今までパァパから何を学んできたかね。

「いや、いくパァパでもこればかりは・・・。あのさー、次のダンスの衣装のテーマが〈ギャル〉だって言ったさー、あたしの髪の長さでギャルっぽくするにはどうしたらいいかと・・・」

それで悩んでおるのかね?

「うん、流石にパァパでも・・・」

頭にバカみたいにデカイ蛍光オレンジの花飾ればOKよ。

「何それ」

いいからネットで探してみそ?

「わかた!ちょいなちょいな、ポチッとな。・・・あ!ホントだ!ああ、これギャルっっぽいね!ウケる〜!じゃあネットで買ってもいい?」

待たれい!

「はい!」

お前は俺が誰か知っているか?

「は?」

俺はその昔、沖縄の中森明夫と呼ばれた男だよ?

「は?」

お前ね〜、俺がコギャル文化のことを知らない?ふふん。先週、君が「次のダンスのテーマはギャルだからルーソー用意してって先生が言った」から、ショッピングモールに買いに行ったでしょ?

「うん」

その時、パァパは聞いたよね?どのコギャル?って。コギャルにはいっぱい種類があってそれによってルーズソックスのタイプが全っっっ然違うから、どのコギャル?て聞いたさ。で、先生に参考商品の画像送ってもらったでしょ?」

「あ、そうだった」

で、送られてきた画像見てパァパは、あ、これは第2期コギャルですなってことでそれ用のを選んで君に買ってあげたんじゃないか!

「あ、そうでした!そうでした!♡・・・何?第2期ギャルって」

馬鹿野郎!ギャルとコギャルを一緒にしない!これは似て非なるものだよ!

ギャルは80年代からいた。女子大生ギャルとかサーファーギャルとか。その時代に流行った文化に乗っかった女子を〈なんちゃらギャル〉というのだよ。それに対してコギャルは90年代の山手線西側にしかいない!亜流として神奈川にもいるがその程度。そしてこれが一番大なとこだが

「だが?」

コギャルはコギャルそのものが文化なのだよ。誰にも乗っかっていない、コギャルはコギャルとして単体で存在するのだよ。サーファーがいないと存在しないサーファーギャルとはものが違う。

「は?」

詳しく聞きたい?

「どっちでもいいけど」

じゃ、詳しく話してもいいけど

「うん」

ウンコしたいからしてきてからでもいい?

「どっちでもいいけど」

おう、じゃあ心して待てぃ!



ふん、パァパに聞いてもわからない、だと?たわけた事を。俺を誰だと思ってるんだ。コザの宮沢章夫と呼ばれた男だよ?よし、早くウンコ終わらして12歳にコギャルの何たるかを叩き込んでやる。

第二章

ふ〜出した出した。・・・もう飯食った?お、髪切った?

「タモさん。切らないよ、髪わ」

よし、じゃあいよいよ、登川の杉作J太郎と呼ばれた俺が、日本服飾史のエポックメイキング、ジャパニーズカルチャーの金字塔、90年代男子の永遠の心の痛み、コギャルについては教えてあげようかね。・・・図で説明するから紙とペン持ってきて!」

「・・・メンドくさい?」

いや!パァパは何もメンドくさくない。君に何かを教えるのをめんどくさいと思ったことはない!

「・・・違う。あたしがメンドくさいことになるのかなーって」

君は人に物を教えてもらう分際でなーにがメンドくさいかヽ(`Д´)ノ!早く紙とペン持ってこーい!

・・・よし、じゃあ始める。

まずコギャルには第1期〜第3期がある。第1期の始まりは1990年。あ、そういえばトイレの中でウンコしながら、君に間違った事を教えてはまずい!と思ってネットで検索したが、全然ダメ。いろんなサイトあるけどみんなコギャル誕生は1995年って書いてて、んなアホなことあるかい。パァパはコギャルに会いたくて1995年に上京したんだから、その時すでにコギャルはいたし、渋谷Caveもあった。Cave?渋谷のクラブ。あ、パァパそこでラフィン・ノーズのポンと会って、その時ポンがやっているバンドのデモテープ貰ったんだ〜♡・・・んなことはどうでもいい。

まあ、コギャルは1990年に始まったのだよ。これは間違いなく当時のアメリカの映画、Aシルバーストーンって知ってる?知らない?ダリアンって映画があるんだけど、まあ、それもいい。アメリカのちょとハイソな女子高生に影響された日本の女子高生たちがちょっと背伸びをしたところから始まった。

渋谷の女子高の子たち、ちょいと金持ちの子たちが他の女の子たちとは違うという事をアピールするために始まったのだよ。だからルーソーも元々ルーソーではなく、厚手の長い靴下をちょっと悪っぽくクシャクシャにして履いたのが始まりどす。

だから持っているアイテムも、その後に出てくるコギャル専用ブランドとかではないのだ。代表的なのがラルフローレンのニット。デカめのね。でそしてLe sportsacなんかのちょっと小高い物を持つのが流行ったのだ。買い物はソニプラ一択ですよ。

で、ここが大事なんだけど!カバンは他校の鞄を肩から下げて持つのです。それもくたびれたやつを!で、基本、髪は染めません。染めてもうっすらと。ヤンキーとは違うというアピですよ。化粧も、ケバケバしいのはしません。

ここまで考察をまとめると。

・大きめのニット → 年上の彼氏から借りてきました〜。

・Le Sportsac → 家が小金持ちです〜。

・ソニプラ → 日本のブランド嫌です〜。

・他校の鞄 → いろんなとこに友達います〜。

・髪は染めない → 学校では真面目で成績いいです〜。

・メイク → 基本薄め。

と言うことになる。・・・ここまではOK?(ハァハァ)

「うん。なんでパァパ、ハァハァしてる?」

ん?スケベなこと考えているから🤣

「嘘よ。太り過ぎだからだよ」

ふんだ!まあこれから見ると「私たち、その辺の女の子たちと違うんですけど」アピだよな。で、どこかお高くとまっているイメージがあるのです。これはね、いいことよ。そのお高くとまったイメージがのちに女子高生ブランドという物を高く持っていくからね。わかった?ハァハァ。

「うん、わかったけど、パァパ、ハァハァしすぎ」

うん、うん、ちょっと疲れたね。第2期にいく前に水飲んできてもいい?

「どうぞ」

あ、第三章まであるのか・・・。第四章までいくな、こりゃ。

第三章

はい、今日はコギャルの歴史、第三回ですね。今までのとこをまとめると

・ギャルとコギャルは違う。

そして第1期コギャルとは

・持ち物で「自分達は他の子たちと違う」アピ。

・家が金持ち。

・ちょっと威張ってる。

という感じです。覚えてますか?

12歳「・・・はい」

何で疲れてる!何でお前が疲れる!いいよ、ギター弾きながらでもいいからパァパの話聞いて!聞いて!聞いてくれ〜〜い©️ライス。・・・あ!おもしろかった?今の、聞いてくれ〜〜い、面白かった?ね、パァパの話は面白いんだよ!じゃあ始めるよ!

第1期で産声を上げたコギャル、恐竜でいえば三畳紀よな。そこから数年を経過し1995年、コギャルは進化します。ジュラ紀ですね。何?いちいち恐竜に置き換えるのがめんどくさい?ふん( *`ω´*)

じゃ、図を見てください。

1995年、これが世間一般的に言われているコギャルですが、これは第2期です。この第2期は何と言ってもアムラーです。聞いたことあるでしょ、アムラー♡。じゃあ、シノラーは?知らない?シノラーは知らない?じゃいいよ。シノラーは電気グルーブの講義の時に話してあげる。今日はコギャル。

世間一般でいうコギャルのイメージは全部このジュラ紀、もとい第2期に作られました。普通の厚手の靴下だったルーソーがこの時代にはアホみたいに長い専用のが売れ始めたの。洋服のブランドはミ・ジェーン、アルバローザ、ちょっと大人っぽい子はセシルマクビー、ラストシーンなんかを着てました。厚底ブーツもここから。

そして驚くことにそのブランドのほぼ全てが109にあったんですね〜。うん、センター街の横の。コギャルはついにセンター街から出てそのテリトリーを広げていったのです。それはまさに太古の昔に魚が陸に上がったように。

それからはもうやりたい放題ですよ。ある意味コギャルの歴史の中でこいつらが一番悪いんじゃない?あ、言い忘れたけど第1期のコギャルの後ろにはチーマーという勢力がいて、そいつらと繋がっているというのが一つのステイタスだったけど、第2期になるともうそんなことはどーでも良くなります。彼女たち自身がもうチーマーみたいなもんだから。

ただ、異常に明るく、第1期のようなお高くとまった感じは薄れてきます。誰とでも仲良くなりたいのが第2期コギャルの特徴です。第3期まで引き継がれる〈はっぴ〜ぱ〜てぃ〜ぴ〜ぽ〜〉なイメージはこの時に作られたんですね。

はい、ここでまとめます。

第2期コギャルは

・アムラー

・買い物は109

・ミ・ジェーンやアルバのショップ袋を普段使いする。

・派手になっていく

・明るい(´∀`)

って感じー。

で、君がルーズソックス買うってんで、どんなの?ってパァパが聞いたじゃん?で、先生から写真送ってもらったじゃん。あれは第2期のルーソーなので、じゃあチミの髪はでかい花飾りでいいんじゃね?って言ったのよ、パァパわ!わかった?今わかった?これが第1期のルーソーならあんなでかい髪飾りはしません。初期ルーソーに大きな髪飾りは、モッズファッションでトライアンフに乗るようなもんです。何?意味がわからない?いいよ、わからなくても。

ちなみにチミのダンスの先生は幾つ?27か28?マジで?わかるわきゃないって!まあ、しょうがないよ。・・・27歳か♡

で、さっきも言ったけど、基本この時代のコギャルはみんな明るくてお利口さんです。威張ってないし。その威張ってない、がぱぁぱには物足りなかったけろ(´∀`)

しかし、彼女たちにはダークサイドもあります。エンコーやブルセラを作ったのもこの第2期なんですね・・・。

コギャルファッションが市民権を得て日本総コギャルになってマーケットが広がった分、お金を稼ごうとする悪い大人が出てきたのです。そして「高校生活は3年間しかない」とかのキャッチコピーで彼女たちを煽って、どんどん商品化したのですよ。

そしてこの時代、ポケベルがJK文化の一つとして爆発的に広がりました。コギャルがポケベルの新しい地平を開いたと言っても過言じゃない。これはいつか「通信機器と若者のコミュニケーション、そして音楽の変化」という講義でやります。どこで?いや、ここで。チミ相手に♡

というわけでコギャル第2期は終了です。今回はなぜか講義口調になってみたり、コギャル文化の闇に触れてみたり、非常にアカデミックな内容でした。

じゃあ、ぱぁぱは洗濯物を干すので君は明日の準備しなさい。物語はいよいよ佳境に入ります。

よし、第四章で終わらす!

暇かよ、俺🤣12歳もいい迷惑だ🤣


第四章

え〜と、コギャル第3期だっけ?実はもうこの辺はめんどくさいし、つまらないからやりたくないのよ。とりあえず図はかくよ。

1999年、なんで2000年じゃなく1999年にするか。うん、実はこれは非常に重要なファクターなのよ。

第3期コギャル。

ほら、たまにテレビで見るマンバギャル。目の周り白くしてヒュ〜ヒュ〜言ってる子たち、あれが第3期よ。

で、パァパ、さっきめんどくさいって言ったけど、めんどくさくなったのは何もパァパだけじゃなくて、世間ももうコギャルに飽き始めたの。なんでか?

第2期までは流行の発進はコギャルってのがあったけど、大人たちがもう見向きもしなくなった。バブルが崩壊してコギャルと遊ぶどころじゃなくなった。あ、これはふざけてるんじゃないよ?ブランドものや高い服で身を固めていた第1期〜第2期に比べてコギャルまでお金が回って来なくなったのよ。

でも女子高生はいるし、第1期〜第2期に憧れていた女の子たちはコギャルになりたいでしょ。じゃあどうするか?

派手にしよう♡

ってことでマンバギャルです。いや、本当に。

第3期コギャル

・派手であればあるほどいい。

・美的感覚より目立つことが大事。

・ぱ〜てぃ〜ぴ〜ぽ〜に拍車がかかり、おバカ文化になる。

・買い物はドンキ。

・基本的にビンボくさい。

・で、なぜか上下関係とか体育会系のノリになる。

・チャラ男とかも合流して収拾がつかなくなる。

もう、あれ、可愛くないじゃない?だから大人たちが見向きもしなくなった。そしたら彼女たちはどんどんエスカレートして自分達の価値観だけで新たなコギャルを作っていったんだよ。暴走したの。それがあのメイク。ある意味、完全オリジナルの彼女たちのクリエイションだけどね。

そして、ここがすごく重要なんだけど、第1期も第2期も含めたコギャル文化全体に言えるんだけど、20世紀が終わるってんで日本中が世紀末のなんか浮かれた感じになって、なんでもありって価値観になったんだよね。実際は全く「なんでもあり」ではなかったんだけどね🤣

ってトコかな。

何?第1期や第2期に比べて薄い?内容が?しょうがないじゃん、ファッション的にいうと第3期で語れることなんてほぼないよ。買い物ドンキだし。ただ、あれだけ隆盛を極めた「女子高生」というブランドが一気に衰退したのはまた別の理由があって、これは〈imodeからSNSへ 〜闇に潜る10代〜〉の講義でします。どこで?って、ここでってば。夕飯作りながらパァパがチミ相手にやるの!

ということでコギャル講義は終わり♡非常に硬いシメになったけど、あの世紀末の高揚感ってやっぱりどこか変だったし、そこから考えるとコギャルって、戦後、急激に豊かになって、いろんな価値観が濁流のように流れ込んできたデジタルワールド前夜に、バブルが崩壊したと言ってもどこまでも享楽的でオプチミスティックな日本人の狂気が生み出した、馬鹿騒ぎする大人たちの無責任さを肩代わりさせられた10代の女の子たちの文化のような気がするね。世紀末の喧騒が女子高生の体を借りて街に登場し、みんなのオモチャにされたんだよ。

ので最後はこれを聞いて今日の講義はおしまい(´∀`)



あとがき

これを渡豪前から週一回のペースで2年以上やり続けた結果、現在14歳になった娘はシドニーの学校で「ジャパニーズサブカルチャーに以上に詳しい日本人」としてクラスメートから一目置かれる存在である。らしい🤣

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?