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電動キックボードで北風になった日 | 2023.11.27

・こんにちは!

・でっかいポークステーキ。かなり良かった。ステーキはポークなのかもしれない。


・先日、もにゃもにゃしながら終電間際の電車に揺られていたら、自宅の最寄り駅をとっくに通り過ぎてしまったため、別の手段で帰途につく必要に迫られた。

・タクシーを使うのは何となく悔しかったので、ア!と思い立って電動キックボードのシェアリングサービスである"LUUP"を使うことにした。

・改札を出た駅構内でアプリをダウンロードして、クレジットカード情報を登録し、運転免許証を読み取り、10問ほどの交通ルールテストに正答すればもう利用できる。スマートフォンとインターネットはすごい。

・あまりの簡単さに、何か騙されが発生しているような気がしてならなかったし、なんなら今もそう考えている。こんなあっさりと、公道を20km/hの速さで走る権利が手に入るはずがない。そう思いませんか?

LUUP(ループ)https://luup.sc/

・近場の住宅街にあるポート(読んで字の如し、LUUPのキックボードが乗り捨てられたポイントが街中に点在していて、そこからアプリを通じてピックアップする)に向かうと、何らかの事情により大声をあげてすすり泣く若い女性と、それを黙ってじっと見つめるスーツの中年男性にエンカウントした。異様な空気の重さを確かに感じながら、明らかに場違いな電子音と共にキックボードのロックを解除する。

・地元を出て以来、公道を何らかの乗り物で走る体験を一切してこなかったため、恐る恐るアクセルのレバーを押し出す。拍子抜けするほど滑らかに最高速度に到達したそれを駆って、路の端っこのほうを外れないように午前0時過ぎの東京を疾走した。

・ナビはもちろん、サイドミラーもバックミラーもない。窓ガラスを通さない視界と音が肌をちょっと粟立てる。

・その日は特に風が強く吹く日だった。電車移動を前提とした、最低限の防寒性能しか持ち合わせない服装だったから、指先や耳たぶに鋭い冷たさが刺さる。それと比例して、得も知れぬ快感が身体の内側を満たしていく気がした。齢25にもなって、冒険することの楽しさを脳の引き出しから再発掘したのだ。ぐんぐんと眼前の景色が迫り変化していくその様子は、知っているのに知らない街のようだった。そのとき確かに、自分は風と同化していた。

・徒歩で1時間のところ、およそ20分で自宅近くに到着した。立ち上がった前髪をほぐしながら、もはや相棒と言って差し支えないそいつを今度は自分の手で押して歩く。ポートに正しく返却した証明として、役目を終えたキックボードの写真を撮影して送信する。乗り始めたときからバッテリー残量は少なかった。労りの言葉を心の中でかけながら、格好良く撮ってあげた。

・自らが20km/hで動くことによって獲得した強く特別な寒さを、洗面所の蛇口から出るぬるま湯でほぐしていると、その感覚が北海道に住んでいた頃の日常を思い出させた。

・顔を赤くした幼い頃の自分がぼんやりと見えた。背丈ほど積もった雪の壁をくぐり抜けて帰宅した彼は、ワンサイズ大きいダウンコートとニット帽を被ったまま洗面所に駆けていき蛇口をひねった。しばらく待ち、ようやっとぬるくなった湯で手洗いをしはじめる。居間のテレビでは、ゴールデンタイム前の夕方のローカルニュース番組が映っている。そんな光景が見えた。

・"LUUP"の電動キックボードで故郷を想うことができるなんて想像もしていなかった。まだまだ人生捨てたものじゃない。

・これなんの話?

・電動キックボードは楽しいし便利なので、たまに活用すると良いです。


・もうすぐ12月になっちゃう!

・今年はインターネットを破壊することが叶わなかった。来年こそはインターネットを破壊したい。

・どうも人というのは思った以上に喋りたがりっぽくて、別にそれは構わないのだけど、喋るというただそれだけのために何かを好き勝手に断定しまくるのは良くない。その暴力性がギリギリ許容されるのは、やかましい居酒屋の席くらいのものであるはずなのだ。

・Twitterなどはもう既にやかましい居酒屋よりも深い地獄に変容しているのだが、インターネットの全部がやかましい居酒屋の席になったらそれはもうやばい。どう考えてもやばいので、もうインターネットを破壊するしかない。


・パイの木

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