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動物病院のカルテ 元わんぱくが役に立つ

羽尾先生はどうぶつたちに包帯を巻くのが上手です。
実は、人間相手よりもどうぶつ相手の方が、包帯を巻くのが大変です。
まず、じっとしていません。
痛いところを触って何かを塗ったり巻いたりする行為は、どうぶつにとってただの恐怖になってしまいます。
また、人の場合は包帯がきつ過ぎたり緩んだりすると、それを伝えることが出来ます。そして、自分でまき直したりもします。
しかし、どうぶつの場合だと、そうはいきません。
手がまるでグローブのように腫れてしまっても、何も言わない(言えない)場合もあります。
そこで、ちょうど良い強さで巻く必要があるのです。

その日も羽尾先生は看護師さんに動物を抑えてもらいながら、クルクルと手際よく包帯を巻いていきました。
「先生いつも包帯巻くの上手いですね」
「小さい頃からよく巻いていたからね」
「そんな昔から獣医だったんですか?」
すると羽尾先生は苦笑しながら言いました。
「いや、自分にだよ。子どもの頃、しょっちゅう怪我をしていてね。自分で自分に包帯を巻いていたんだ」
「へー!」
看護師さんはニッコリ笑って、処置されている犬の頭を撫でました。
「良かったね、先生が小さい頃にいっぱい怪我をしてくれてて!」
そしてさらに言いました。
「センセ!苦虫を噛み潰したような顔って、今の先生みたいなのを言うんですよね」
ニコニコしながらそういう看護師さんをみながら、包帯を巻くのがキツすぎないように、羽尾先生も無理矢理笑顔を作りました。

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