石倉潤氏撮影__4_のコピー2

嚴島神社「錦包籐巻太刀・腰刀」復元奉納クラウドファンディングプロジェクト公開に寄せて

はじめまして。武田です。note、初投稿です。よろしくお願いします。

 私は、2018年、工芸に特化したクラウドファンディング casanellをローンチし、各プロジェクトの裏方をしている。初のnoteは、2019年11月5日に公開された刀剣の復元奉納プロジェクトとの出会いから公開にいたるまでを振り返りつつ、自分達のビジネスを立ち上げた当初の想いを振り返って書いてみたい。

嚴島神社「錦包籐巻太刀・腰刀」復元奉納プロジェクト

 思い起こせば、三上さんとは、昨年2018年、広島で開催された西日本の漆を守る会に呼んで頂いた際に、初めてお会いした。きっかけは、ツイッターで、漆造形作家のほだかさんからのDMで、この漆の会の主催者の広島の武田さんと繋いで頂いたことから始まる。
 三上さんは、この広島の武田さんからの紹介だった。三上さんのことは、あの人気アニメ、エヴァンゲリオンのロンギヌスの槍を、お弟子さんと作られたというニュースで知っていたので、どんな方なんだろうと期待を膨らませて広島に向かった。

お会いした第一印象は、お話が面白く熱いおじさまだった。

 その時は、特にプロジェクトの話もしなかったし、三上さんも漆の会でのプレゼンテーターでもあったので、名刺交換で少しお話した程度。

それから、約半年後、2019年5月のある日の朝、運命の電話が。

携帯に電話がかかってきて、今週、東京にいくので、途中、横浜で新幹線降りて、我が社に来ると。クラウドファンディングの話を聞きたいと。

え?どんなプロジェクトなのだろう?刀剣関係だろうか。
でも、何より覚えていてくださったこと、わざわざお電話下さったことが、とにかく嬉しかった。早速、お会いして、三上さんがやろうとしている今回のプロジェクトの話を伺い、鳥肌が立った。

熱い、熱い、熱い。

そして、めちゃくちゃポジティブ。すごい熱量を感じる2時間くらいの打ち合わせだった。その時の紙の資料からも、想いがあふれていた。

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 私達が、工芸に特化したクラウドファンディング casanellをスタートした時に掲げた、コンセプトである「想いをかさねる、出会いをかさねる、技術をかさねる」、そして会社スタート時にあげた「温故知新」を、まさに実践されている、とにかく熱いプロジェクトだったことに、運命も感じた。
7年もの長きに渡り、このエネルギーを絶やすことなく燃えたぎらせ、クラウドファンディングという新しい仕組みすら取り込んで、その想いを実現しようとしている。

なんとか、チカラになりたい。

 それから、約5か月、公開の直前まで、三上さんは、「私は文書を書くのではなく、技で勝負したいんだけどね」とおっしゃりながら、とにかく熱い文案を膨大に送ってくださった。
私達は文書の読解と整理に追われた。一斉に発表するにはあまりにも多い内容であったこともあるが、刀剣だけでなく、織物である錦も含めて、とにかく広範囲の工芸の知識が問われる内容と難しい漢字を読み解く必要があったからだ。

 まだ公開できない内容もあり、活動報告として、後ほど掲載するものと、最初から公開するものとを仕分け、一緒に文書を考えながら固めていった。三上さんは刀剣の制作やプロジェクト管理も行いながら、様々な情報を公開しようと、深夜まで頑張っていらっしゃる。今後の公開情報も楽しみにして頂きたい。(内容を拝見してサポートはおこなっているが、なるべく、そのままの文書を掲載頂けるように陰ながらの存在でいることを心掛けている。)

目がしらを熱くする

私自身は、文書と送られてきた太刀の拵えの写真と格闘しながら、何度も目がしらを熱くした。泣けた。
明確に何が涙腺を刺激したのか、感動したのか、そういうことを説明するのは苦手だが、三上さんの文書から、長きに渡り、実現に向けた活動をしてくる中で、職人の高齢化や、新たな調査結果から新たに生まれる課題などとの格闘、そして三上さんが、活動の中で想うようになった、

「地方の文化財は、地方で守り、復元・修復できる人材育成と仕組みをつくる」

その実現に向けての押し寄せる想いが節々から伝わってきたからと自己分析する。

電話で話をしていても、明るく、前向きな発言の中に、笑っているけど、様々な悔しさも伝わってきた。そういった二次的情報も加わってかもしれない。

そんな三上さんの熱い想いの一部が切り取られ、早速クラウドファンディングの活動報告に掲載された。これを読む方々がどう思われるか、三上さんの言葉をとにかく読んで頂きたい。

なぜ文化財を復元しなければならないのか?

 このプロジェクトを通じて私は、今の会社を始めるキッカケに想いを馳せた。

 私は、今の仕事をはじめる前から、少しづつ日本各地を周りはじめ、工芸に携わる多くの方々の悔しさや諦めの声をたくさん聞いてきた。(もちろん、楽しい話もだが、それは別の機会に。)

今の時代、芸術や工芸は、趣味、道楽だと言われた。そういったものに、お金も時間もかける余裕はない。一部のお金ある裕福な人だけが関心ある、私は関係ないと。こういった言葉を、直接ぶつけられ続けた作り手の人たちもいた。悔しさがあふれていた。

 誰かが新しいこと、困難なことに挑戦することを応援する社会は、芸術や工芸に対しては無く、自分で勝手にやるしかないのか?勝手にやれば、なのか。

それでいいのだろうか。

 今の時代、他人のやることに関心をもつ余裕はない。私も日々の生活に追われて余裕はない。

 誰とも会話しない、誰とも関わらないでも、生活できるようになってきた日常生活。人と人との接点が薄れていても、生きていけるし、むしろ、接点を持たない方が、生きやすい世界。人との付き合い方って難しい社会になったのかもしれない。

しかし、芸術、工芸活動に携わっている人の中には、後世の作り手のため、未来のために、まず今を生きる自分達自らが学び、それを伝えていこう、作っていこうとしている熱い人たちがいるということをこの旅を通じて学んだ。

彼らの情熱、信念は、現代の人との接点が薄れる現代社会において、生活を楽しむ一つの良薬になるのかもしれない。今こそ、このエネルギーが必要なことだと私は自らが清められたような不思議な達成感と共に悟った。


もっともっと、彼らと自分の残りの人生を一緒に歩みたい。

この想いをもっと多くの人たちに届けていくこと、そのために必要なことを私たちもできるのではないと考えた。その一つが、工芸特化のクラウドファンディングcasanell(かさねる)だ。

casanell(かさねる)のコンセプトはこうだ。

「想いをかさねる、出会いをかさねる、技術をかさねる」

日本に古くからある「かさねる文化」にちなんで、作り手と使い手の想いや出会いを積みかさねること、日本工芸と他ジャンル、そして地域や技法を超えたコラボレーションなど、想いをかさね、出会いをかさね、技術をかさねることで、私たちが生きていく糧となるような、より魅力あるコト・モノが誕生し続けることを期待し、願いを込めてサービス名を「casanell」と、命名しました。(商標登録済)

これを事業としておこなうことの難しさもまた、工芸業界の現状とリンクしているのかもしれない。しかし、私は、そこからのスタートでよいと思っている。今は、一つでも多くの熱く、魅力的なプロジェクトを掲載して、工芸を楽しむ環境作りに貢献したい一心だ。

ここでは、さらに会社スタートにさかのぼる。

私たちは、「温故知新」を掲げて2016年に会社をスタートした。

 個人的に、この原点を振り返るに、自分が生きている現代において、生き方について、自分も含めて、ロールモデルとなる”人”は、どれくらいいるのだろうという問題が潜んでいるように思う。今を生きる自分達の先輩で、その生き様や思想感に感動、共感し、そういった人物に自分もなろうという存在だ。(誤解のないように書いておくが、私は、尊敬する方、憧れる方にたくさんご縁を頂いている、感謝しかない。)

自分が目指す”人物像”は、他の誰でもない自分でしかないという人たち。では、その自分を生きる上で、どこから、誰から何を学ぶのがよいのだろうか。

私たちは、それを、古えより続く、ものづくり、工芸に携わった先人の知識、思想、技に求めた。工芸には、先人達から蓄積された膨大なアーカイブがあり、現在も解明されていないことも含めてたくさん眠っている。

 ネットサーフィンで情報を得ることができるのか?残念ながら、まだまだネット上には、熱量を感じる情報は少ないと思う。

では、それはどこから得るのか? 私たちは、今を生きる人、職人、工芸に携わる人から、熱量ある想いと先人から受け継いできた話をたくさん伺った。そして、こう認識した。

私たちは、情報ではなく、良質の熱量を自らの体に浴びることが必要だ。

三上さんのプロジェクトは、まさに、そういった熱量を感じるものだと思う。

私は、工芸を身近な存在にすることは、決して、工芸の質や価値を下げるものではないと思っている。

立場、職業、肩書きは、何も関係なく、少しでもこのプロジェクトの位置付けや想いを感じてくださる方がいれば、このプロジェクトに賛同し、未来を創っていくための第一歩を共に歩んで頂きたい。

今回、支援者全員の名前が、奉納名簿に記載して嚴島神社に納められる。

奉納するという文化も、僕らの世代、縁遠くなっているのではないだろうか。

この機会を通じて、共に、日本文化、工芸の技、美、そして作り手の熱き想いを感じて欲しい。

 私は、このプロジェクトが成功して欲しいと願い、まずは、2019年12月28日23時59分まで、三上さんのプロジェクトチームと共に走り続ける。

一人でも多くの人の応援、支援が、未来を創ると信じて。これは、私の挑戦でもある。

最後に、我が社が掲げたスローガンを、このプロジェクトに関わる方、そしれ応援、支援してくださる皆様に贈りたい。

私たちの未来はあなたの想いと共に成長する

Our future will grow with your heart


2019/12/28追記:藤巻→籐巻にプロジェクトタイトル変更の連絡があり修正しました。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。 嬉しく思います。頑張って活動していきます。