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それでも湘南ベルマーレを気にかけてしまう俺がいる

以下に書くことは、あくまでも長年ダラダラとベルマーレにシンパシーを抱き続けてきたおっさんの独り言という名の戯言、程度に受け止めていただきたい。

この夏、湘南ベルマーレは大揺れに揺れた。

チョウ・キジェ前監督が、いわゆるパワーハラスメントに該当する行為を、この数年の間に幾度となく繰り返し、その結果、ベルマーレを去らざるを得なくなったりするなどの目に遭った人々がいるという。

自分は最初、この報知の記事で見たのか、日刊スポーツの記事で見たのかはいちいち覚えてないし、そんなものどうでも良いのだが、ともあれ、そういう事案があることを把握した。
ただ、この事案を把握した日は・・・

こういうことをしに行ったので、正直、あまり深入りはしないようにしていた。
でもまあ、日頃のTwitterに於ける自分のツイートを知っている人ならわかると思うが、概ね脊髄反射に毛の生えたような物言いで、いい歳をして論考も軽く浅薄なものが圧倒的に多い自分が、まして、湘南ベルマーレは自分にとって現時点でのメインではない(ご存知の通り、メインの推しはガイナーレ鳥取である)のに、本件に深く立ち入るべきなのか、とも思っていたりした。
まあでも、いろいろな意見を見た。

自分は最初のうち、湘南ベルマーレが何らかの理由で疎んじられているのではないか、と考えたが、そうされる理由が思い浮かばない。
チョウさん(敢えてそう呼ぶ)を気に入らない、例えばRIZAPからの出向者だったりがチョウさんを弾き出そうとしてこういうのを言い立てたのかな、みたいに思ったこともあるが、だったら、結構早い段階でRIZAPが否定リリースを出すわけもない。
ならば、いわゆる「アベガー」の人たちが、「圧勝」でお馴染みの現防衛大臣(当時は外務大臣)が気に入らないので、追い落とすために仕掛けているのでは?などと陰謀論じみたことさえ考えたが、もしあの大臣が気に入らないのだとしたら、そんな回りくどいことなんかしないで(だってあの人、そんなの屁とも思ってなさそうだし)、連中なら直接本丸をぶっ叩くよな、と思った。
だからとりあえず、調査をするならしたら良いし、その結果に委ねりゃ良いじゃん、と思うようになった。

ただ、リーグ側にしろ何にしろ調査がもしもあるとするならば、それは大いにやれば良いと思ったものの、一部のメディアが、それを大騒ぎしてみせるのだけは、どうにも辟易してしまった。

そんなモヤモヤした気分を抱えつつ、月日は容赦なく流れていった。そうするうちに、とうとうJリーグ側から審判が下る日が来た。

↑はリリース。

↑は会見。

チョウさんによるパワーハラスメント行為はあったと認定された。誰かがチョウさんを追い落とすどころの騒ぎではない。他ならぬチョウさん自身に落ち度があったんじゃないか。

裏切られた、とまでは思わないにしろ、何ていうか、頭をでっかいハンマーでぶん殴られたような気持ちだった。どっちかといえば、ベルマーレについては薄いファンを自認する自分ですらこれだ。
自分よりも愛し方の度合が深い、それこそBMWスタジアムをはじめとする会場に通ったり、DAZNなどで中継を毎度のように見ていたり、ユニフォームなどのグッズを高頻度で買ってしまうような、または強く推してる選手がいたりするような、練習見学やファンイベントなどにも積極的に馳せ参じるようなサポーターの人たちにしてみれば、天地がひっくり返るぐらいの大騒ぎだっただろうことは、想像に難くない。

その心情は痛いほどわかったし、それでもチョウさんを信じたい、それどころか現場に戻ってきてほしいと思う心情もあることはわかる。自分も最初はそれに近いことを思っていた。

だが、ことはパワーハラスメントである。やはりそれを看過して通るわけにはいかない。
自分の無駄に長い社会人経験の中でも、そういう上司が何人かいた。そういう上司に苦しめられたことは、澱みたいにこびりついてしまっている。

特に最初に出会った2番目の職場のやたら厳しいその人物のことは今も忘れない。職場そのものには恨みはない。同僚はほぼいい人たちばかりだった。こんな生意気なだけの男に分け隔てなく接してもらえた。
だが、その人物だけはどうにも許容できない。他にもパワハラじみたことをする上司はいたが、特にそいつは許せない。言葉と態度で圧された。最初の若い上司がのほほんとしていただけに、あとから来たそいつはキツかった。
それでも、しばらくはガマンしていた。だが、ある日、ふと緊張の糸みたいなものがぷっつりと切れてしまった。高校の時にいじめを受けた時もそうだった。
そういうものを吐き出すのがてんで下手な自分は、ため込むだけため込んでしまい、それがある時に、フッと溢れ出てしまうのだ。両親には心配をかけてしまうのが怖くて相談できなかった。自分にも勇気というか、そういう相談をするような思い切りがなかった。
結果、相談の上で出たであろう結果以上のことになってしまった。ボブ・ディランの「Like a Rolling Stone」みたいなことになってしまった・・・と言えば話が早いか。
今思うと何でこんなことをしたのかと自分でも驚くが、当てのない放浪の旅に出てしまった。こんなこと、滅多に話さない。今後もたぶん話すことはないと思う。積極的に話したいことじゃないもの。自分の人生の恥部・・・というか、暗部みたいなものだぜ。こんな風に徒に語句を重ねてごまかすのが関の山だ、ぐらいに思っておいてもらいたい。

・・・という経緯があるので、やはりチョウさんの行為は容易に許容できかねる、という方向性にシフトしていった。
ただ、そうは言ってもチョウさんは一方で湘南ベルマーレの中興の祖みたいな人物であることも否定できない。
だから、揺れた。チョウさんを評価したい自分と、容認できない自分と。その双方で激しい大波に揉まれる小舟みたいに、とことんまで翻弄された。ある程度の結論を出すための、それは通過儀礼だったのかもしれない。

だが・・・

これを見てしまった時、やはりチョウさんの行為そのものを許容してはダメなのだ、と確信した。あれはあれだし、オミットして論じるべきものではない。
J1の世界を見せてくれて、こういうチームでも決して逃げずに指揮を執ってきたことには敬意を表するし、その結果として得られたことにも謝意は表したい。

だが・・・、なのだ。

彼がその道中に用いたパワーハラスメントという方法論だけは、断固として許容するわけにはいかない。そこはキッチリとけじめをつけておこうではないか。

その上で、しかし、結果を出した、という事象については、謝意を述べる用意もあるし、それは誰にも止め立てできるものではないと思う。その点については後述したい。

だから、例の報告書が出てきた直後から見えていた擁護論には、どうしても安易に乗れない自分がいた。
そして、同時に思った。チョウさんだけを放り出して「ハイ、お終い」ではなく、中の(特にチョウさんを庇護するだけの、クラブの中にいる偉い立場の)人々にもある程度の責任を取ってもらう必要があるのではないか、と考えるようになった。

チョウさんの退任の可能性が報じられ始めると、自分は「この場は潔く辞めた方が良い。現場に戻ってくるにしても、しばらく時間を置いてから、彼もその間にいろいろと見つめ直して、もう一度出直していくという考えで行くだろう。それなら、何年後であっても迎え入れることに吝かではない」と思ったので、こういうツイートをした。

もちろん、この件について、いろんな考え方がある。そのどれも頭ごなしに否定されるべきものではない。賛否があって当たり前だ。正解は1つではないとさえ思う。なるべくベストに近い答えを、彼らなりのスピードで見つけていければいい。

そして現実的には、程なくこうなった。

結局、チョウさんの退任の他、真壁潔会長・水谷尚人社長・坂本紘司スポーツダイレクターにそれぞれ処分が下った。チョウさんの場合は、退任というよりは、もうほぼ解任と言っても良いと思う。言い方はどうあれ、チョウさんはベルマーレを去ることになった。

ベルマーレは今回の事態を受けて、大きく分けると以下4項目の再発防止策を発表している。
要約すると・・・

1:強化体制を強化し、まずGM(ゼネラルマネージャー)職を設置、その下にスポーツダイレクターが面倒をみる現場と、SDからは独立したメディカルチームとの2班に分けた体制を構築する。
2:選手・スタッフ・メディカルスタッフなどから直接のコンタクトが可能で且つ秘密の保持も守られる相談窓口を設置する。その際、この窓口にはメンタリストも併せて置く。
3:コンプライアンス研修を実施し、上は経営執行者から、下は末端のスタッフまでの全員がコンプライアンスを学ぶ場を設ける。
4:選手協会などとも協議し、協力して、湘南ベルマーレとしての基準を作る。

それらが有効たり得るかどうかは、その後の運用次第だろうと自分では考えている。

そして・・・

こうした人事が発表になった。監督・コーチ、そして懸案だったGM職が一気に決まった。
監督やコーチを今の段階で外から探してくるなんて、よほどのばくち打ちでもない限り、しないと思うので、今回のような判断はとりあえず歓迎されるべきだと思う。
浮嶋さんと石川さんは、どちらもU-18チームで仕事をしてきた仲のようなので、コンビネーションとしては何も心配していない。
関口さんはベルマーレの前には横浜FCで仕事をしていたそうだし、そういう意味で言えばクラブ運営についてもご存知なはずなので、これもあんまり心配はしていない。

こうした人事を配したことで、劇的に効果が出るなんて甘い見通しなど、もちろん立てていない。人が変わって、ましてやGM職を新設したぐらいで何もかもドラスティックに変化するほど、世の中甘くはできていない。
次に対戦する横浜F・マリノスだって、厳しい相手には違いない。シーズンの残り試合で対戦するチーム立ちも同じように厳しい。
それどころか、J1のレベルにあるようなチームは何処だって厳しい相手に決まっている。たまたま運がいいから勝ったりするだけだ。

ただ、何処と試合をするにしてもそうだと思うけれど、相手をナメることなく、敬意を持って挑戦し、持てる力を尽くして対戦していくしかないだろうと思っている。
コアなサポーターの方々からは、そんな甘ちゃんみたいなことを、と言われるかもしれない。

でも、考えてみてほしい。この一件があっても、チームは形はどうあれ、恙なく続いていくことになった、ということを。
その歩みは長足のそれではないかもしれない。もどかしいような歩みだと言えるかもしれない。

だけど、今の自分の心情としては・・・

これじゃないけど、「走らされる前に歩き出していくぜ」って心情であることだけは間違いない。湘南ベルマーレだって、1つの意思を持った立派なスポーツ集団だ。その意思を理不尽に曲げられたくはない。
だからこそ、走らされる前に歩き出すのだと思う。

とりあえず、大きな嵐は去った。無論、これからが本当に大変なことは論を待たない。成績的な話だけでなく、クラブやチームが負った様々なダメージをどうやって修復するか。チームのことで言えば、厭戦気分でさえあると思われる現状から、どうやって上昇志向のある集団に再び戻していくのか。
チョウさんは確かに何度かすごい夢を見せてはくれたが、それを見せたバックグラウンドとは違う方法論で同様の成果を築いていくという、大変な労苦が待っていよう。
だけど、湘南ベルマーレに何らかのシンパシーを抱いている人々ならば、その債権の道をお願いなので阻まないでいただけないか。

もちろん、良くないことは良くないとハッキリと明言されるべきだ。パワハラなんてそりゃもう絶対悪だ。

昔、かのビートたけしが、たけし軍団の連中を連れて講談社に殴り込みをかけた事件の時、時の後藤田正晴官房長官が「ビート君の気持ちはわかるが、直接行動は良くない」という趣旨のことを言ったが、自分もこれに近い感じに落ち着いた。
指導者として情熱があるのはわかるが、それがパワーハラスメントのように間違った方向に開花しては絶対にダメだと思う。

ただ、だからこそ、指導者チョウ・キジェには、もう一度キチンと生まれ変わってもらいたいし、そのために、彼自身の指導法や人との接し方が本当に正しいものだったのかどうかを、もう一度徹底的に見直してみることが大切だと思う。主観的にもだし客観的にも、だ。
そうして、あらゆることを見直した結果、もう一度やれると本人も思って、且つ周囲も彼に賭けてみようと思えた時、初めて彼に「お帰りなさい」が言えるんじゃなかろうか。

それにはどれだけの時間がかかるかはわからない。1年かもしれないし、3年、5年、10年・・・、いや、ひょっとして、サッカー指導者としてのチョウさんには、なかなかお目にかかれないかもしれない。
だとしたら、それはもう仕方がない。でも、人知れず何らかの形で研鑽を積み、今一度チャレンジしてみたいと彼が思うならば、そのチャンスを彼に与えることは何ら問題ではないと思う。
そのチャンスを将来的に与えるのが、何処のチームであっても良いし、もしも湘南ベルマーレであったなら、それはそれで初めて一歩進んだと言えるかもしれない。もちろん、それはとても困難であることは理解されるべきと思うが・・・。

兎にも角にも、だ。あれだけの重大事がチームを襲った。大袈裟ではなく本気で、1999年のようなことだってあるかもしれないとさえ思えた。それぐらいの解体的出直しだってあり得るとさえ思っていた。

だけど、そんな状態だったにもかかわらず、湘南ベルマーレには引き続きシンパシーを抱き続ける自分がいる。
自分が初めて好きになったサッカーチームだもの。そんな自分の中で何番目に序列しようと、ベルマーレはやはり、自分の中では気になるチーム。そこだけはこれまでも、これからも変わることはない。
身勝手かもしれないけど、そういう愛し方だってある。そんなヤツもいる、ぐらいに受け止めていただければ良い。

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これからも、湘南ベルマーレのことは気にかけていきたい。だから、もう二度と、こういう類のことで気を揉ませないでね・・・とだけ、お願いしておこう。

基本的に他人様にどうこう、と偉そうに提示するような文章ではなく、「こいつ、馬鹿でぇ」と軽くお読みいただけるような文章を書き発表することを目指しております。それでもよろしければお願い致します。