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ゴール裏

かつて自分もそこにいた人間として「ゴール裏」というのは、単に熱狂的に応援する人間たち「だけ」の場所でないことをお伝えしておかなければなるまい。

なお、鳥取での自分の初めてはこの辺に書いてますのでご参照を。

ゴール裏にいる人々

まずだいたい、ゴール裏にいる人々はその大部分が「ごく普通の人々」なのだ。特殊な人らではない。市井に普通にありふれた人々の集合体だと自分は解釈している。それがたまたまあの場所に集まって1つの何かに向かって、声を出したり踊ったり飛び跳ねたり。その末にやっているのが応援行為であるというだけのこと。実はそれだけの話だ。

そこに集うのに、こう何というか、高尚な目的というか、そんな大仰なものはない。すんごくカジュアルな気分で、贔屓にしているチームを奮い立たせてみようとして、声をかけたり、歌ったり、踊ってみたり、旗を振ったり、タオルをぶん回したり、まあ、そんな具合にいろんなアクションをしたりして、贔屓のチームに寄り添おうとしているだけのことに過ぎない。

そりゃ試合に勝ってハッピーエンドになれるものならなりたい。それは誰でも同じだと思う。でも、現実には勝てることもあれば、勝てないこともあるし、その中でも引き分けてみたり、負けてしまったりすることもある。

贔屓のチームが目前で出した結果に恨み言を言うのを止め立てはしない。それは皆さんの自由だ。しかし、止めることはしないけれど、興奮状態の中でそれのみを一方的に言い立てることには益がないと思う。

ならば、結果の良し悪しにかかわらず、まず口に出すのは「お疲れさん」で良いと思う。言いたいことはグッと呑み込んで、まず労えば良いじゃないかと思う。結果についての憂さやモヤモヤは贔屓のチームで、試合を行った当事者たちに直接ぶつけるのではなく、訴える方法や時宜・対象となる人々はいるはずだ。それを見誤るべきではないと思う。

長いこと鳥取でそこにいて

もちろん良いことばかり経験したわけじゃない。でも、自分として総じて考えてみると面白かったし充実していたと言っても良い。負けたら悔しいに決まってるし、勝ったら嬉しい。そういうものだ。

これは、まだJFLにいた頃の動画だと思うのだが、今でも試合前の選手入場のタイミングになると歌われる「鳥男」である。原曲はガガガSPの「弱男」であることはもうすっかり有名だろう。

この曲については、福岡ソフトバンクホークスの一部の応援団が「鷹の道」という同じ原曲を使った応援歌を歌っていることも知られている。どちらが先なのかは知らないし、別に知る必要もない。そんなことは大して重要なことではないし、そもそも今は「鷹の道」の話をしたいわけではない。

さて、この「鳥男」。聞いたことのある人ならご存知だと思うが、歌われるのは試合開始前の選手入場時。シュプレヒコールのような煽りを合図にこれが歌われ始める。最初はゆっくりと、そしてあるところからテンポアップする。

自分がゴール裏の一員だった頃は、この曲が精神的なウォームアップの材料になっていた。この曲が始まると、何とも言えない高揚感が己が身を包み、そして「やったるで!」と気分も乗ってくる。

少なくともこの動画の時は自分もこの渦中にいた。バカでかい声を出して歌っていたものだ。自分はジャンプしたりとかはしない人だったので、専ら声出しだけやっていた。でも、別にそれで咎められた記憶なんて一度もないと思う。

跳んだり跳ねたりこそしなかったけど、それでも最低限のアクションぐらいはしたと思う。何よりそこにいることが楽しかったし、得点でも決まろうものなら、周りの人たちと喜び合ったりしてね。

結果が伴うと、遠距離を帰る疲れも、今みたいな道路事情じゃなかったこともあって、随分とあったけど、だいぶ精神的負担は軽減されたと思う。白兎や酒ノ津辺りをウキウキの気分で帰るのと重たい気分で帰るのとは、やっぱ違うものだ。

そんな精神のレールに乗っけてくれるのが、あの「鳥男」なわけだ。言ってみれば音楽で言うプレリュード、前奏曲みたいなもの、という位置づけだった。

長年、鳥取のゴール裏を体感してきて、辛いことも多かったけど、今は概ね楽しかったと言える。勝った試合も負けた試合も引き分けた試合も、どれもみんな大事な試合だった。2013年12月8にちのあの、カマタマーレ讃岐戦までは。

あのカマタマーレ讃岐戦

この時、既に最初の脳梗塞をやった後で、その少し前のザスパクサツ群馬戦にはお邪魔してゴール裏に久々に参加したのだけど、もうあそこは自分の居場所ではない、と思うようになって。

今よりはずっと身体も動いた方だし、声も出せた方だったけど、あの頃は既に身体のバランス感覚を喪失していて、90分の応援はとても辛かった。群馬戦で何となくそう思って・・・。

そして、問題のカマタマーレ讃岐戦で、当時の自分のできる範囲でやり抜いた結果、こりゃもうダメだと思ったので、潔くゴール裏から退こうと考えるに至った。讃岐戦のあと、自分は精も根も尽き果てるような感じしかしなかった。

その後のことは再三、noteやTwitterなどでも触れてるけど、写真撮りながら気楽に試合を見る立場になろう、と宗旨替えをして、今に至っている。宗旨替えはしたが、ゴール裏自体は決して嫌いではないし、今の自分が満足に応援行為をできるような身体の状態だったなら、喜んで参戦すると思う。

ゴール裏満員プロジェクト

今度のロアッソ熊本戦で、こういうプロジェクトが行われるのだという。元ゴール裏民として、その趣旨は大変に意義深いと思う。これを機に、ゴール裏に足を運んでくださる人が増えてくれたら、とも思う。

ゴール裏というエリアは「コアゾーン」とも呼ばれることもあるようだが、自分はもっとイージーなエリアなんじゃないかと思っている。

皆で一緒に楽しもうぜ!

ぐらいのことを宣言して、実際に楽しむためのエリア、だと今では認識している。日本国の法律や地域の条例、スタジアムやリーグ・クラブが定めたルール以外には別に特定のお作法なんて必要ない。あなたが良識さえお持ちなら、その範囲で楽しむことは可能だ。

常連の人々みたいに是が非でも応援しなきゃいけないとか、そんなことはない。応援のチャントやコールがわかんない、という人だって、それはそれで何にも問題はない。たくさんの人が歌ったり声を出したりした方が良いとは思うけど、わからないものを無理にすることはない。歌詞がわからなければ「ラララ」でも「オーオーオー」でも何でも良い。

それにそんな始終声なんか出していられない。だからしんどくなったらちょっと休憩したっていい。別にそれで咎め立てするようなことなどしない。

アクションだってそうだ。そんな始終跳んだり跳ねたり踊ったりなんかできるわけがない。できると思った時にやったら良い。

何にしろ、無理なことまで要求されまい。できる範囲で楽しめばいい。それがたぶん唯一にして最大のお作法なのだろう。確かにそれは「ヌルい」かもしれないし「甘い」かもしれないが、そんなスーパーマンみたいに何でもできる応援なんかできるわけがない。

それに、様子や具合がわかんなかったら、最初は周りの人たちを観察していればいい。「ああ、こんな風に歌うのか」「こんな時にはこんなアクションをするのか」「この歌はこんな時に歌うのか」など、多くの発見があるだろう。

そして、それらが身についたな、自分には向いてるんじゃないかな、と思った時に、ゴール裏に本格参加したらいい。そういうもので良いんだと思う。今回のプロジェクトではお試し参加のつもりなのだと割り切ったらいい。誰もそんなに最初からガッツリ応援行為なんかできるわけないもの。

その場所に来て体感してみて、「これは自分に向いてる、自分にもやれそうだ」と思えたら、その時に初めてゴール裏の仲間に本格的になったら良いだけの話だ。

もちろん、ゴール裏を覗いてみたけど「ちょっと自分には敷居が高い」とか「簡単にやれる感じではない」とか「そもそも向いてない」とかなる人もいるだろう。それはそれで仕方のないことだ。何人たりとも否定することはできない。無理を強いてはいけない。

「できる」「やれる」「したい」「やりたい」という心情になった人たちが仲間になったら良いのだ。それだけの話だ。ゴール裏に赴くのが初めての、あるいはそれに近い人たちは、そんな感じで良いと思う。

では、ゴール裏に通う頻度が多い、または常連だという人たちは、どうなのか。

元ゴール裏民の自分としては、という前提条件付きの話だけど、ご新規さんに無理強いだけはしちゃいけないと思う。罵声を飛ばす行為とスタジアムのルールに反する行為についてはさすがに注意した方が良いと思うけど、せいぜいそのぐらいで、あとは彼らの自由にさせてあげたい。

彼らに場の雰囲気を味わってもらうことが、恐らくは一番大事なんだと思うのだ。その結果、「ああ、この場所も案外楽しいじゃん」と思ってもらえればしめたもので、結局はそれがゴール裏の仲間に引き込む第一歩になり得ると思う。

最後に

大事なことは、どんな場所でも気持ち良く過ごしてもらうこと。それに尽きると思う。今回のプロジェクトが成功裏に終わり、スタジアムに、いやそれどころか、ゴール裏に定着してくださる人が1人でも増えてくれたら万々歳じゃないか。そんな気がしている。

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基本的に他人様にどうこう、と偉そうに提示するような文章ではなく、「こいつ、馬鹿でぇ」と軽くお読みいただけるような文章を書き発表することを目指しております。それでもよろしければお願い致します。

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KAZZ

サッカー(ガイナーレ鳥取/SC鳥取ドリームス、デッツォーラ島根EC、湘南ベルマーレなど多数)などを愛好中の軽薄で適当で変なおっさん。noteには主にサッカー関係の文章を書くかもしれませんが、そうでないことを書く場合もあります。筆者の文章の多くはあくまでも軽くお読みください。
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