嫌な予感は当たる

忙しい時間帯は
店長が
ホールとキッチンをカバーする役目だが、
それが不在になったため、
キッチン担当だった副店長格のベテランが
店長の役目を代行し、
私が不慣れなキッチンに入ることになった。

あと 30 分で団体が入る。

ぜんぜん用意が追いつかない。

誰が何を用意するのか
繰り返し声を掛け合うが
根本的に手が足りない。

どんどん精神的に追い込まれ、
注意力が散漫になっていく。

長ネギが足りていない!

冷蔵庫を確認して気づく。

私は長ネギをスライスする機械を取り出し、
直ちに作業に入る。

ところが
この機械の調子が悪く、
すぐに詰まって刃の回転が止まってしまう。

長ネギを押してあげないと
何度も作業が止まってしまう。

キッチンの動きを気にしているため、
視線が手元から外れてしまう。

そんな時、
長ネギを無理やり押し込んでいたら
勢い余って
人差し指が機械に入ってしまった。

不気味な音と共に激しい痛みが走った。

直感的に指先を失った…と思ったが
幸いなことに深い裂傷で済んだ。

しかし、
出血が多く、止まってくれない状況。

そんなタイミングで店長が戻ってきたが、
「救急車は呼ばないで!」
それが第一声だった。

常務上の事故になると
消防から警察に連絡が行く、
そうなると店長としての成績に影響する。

業務を放棄した上に自らの保身を最優先。

怒る気にもならない。

私は自力で患部をハンカチを巻き、
タクシー乗り場まで移動し、
時間外の病院に駆け込んだ。

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