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価値のデザイン - 雑誌『広告』リニューアル創刊

8月6日にB&Bでで開催の雑誌『広告』リニューアル創刊記念のトークイベントに参加させてもらいました。

特集は価値、テーマはものづくり。「いいものをつくる」

価値と価格

リニューアル創刊における条件はほぼなかったとのこと。

・儲けなくていい、売ろうとしなくていい
・ページ数も装丁も自由
・テーマも自由(広告でなくてもいい)

売り上げても次号の予算になるわけでなく、総務の経費として吸収されるだけだとか。じゃあ無料でいいじゃん、とフリーペーパーも考えたが、0円だと書店に並べることが出来ない。

しかも、1円だと「買う」行為になる。だから価格は最低価格の1円になった。

ものの価値の感じ方は、しばしば価格によって左右されます。価値によって価格が決まることはあっても、その逆はないはずなのに。この雑誌と1円を交換する体験は、「ものの価値」について考える入り口です。

特集が価値だからぶ厚い方がいいんじゃないか、厚いものが1円だったら目を引くのでは。
で、塊感のある厚みに。

雑誌は、装丁<内容であるべき。
だから著者を目次に載せない。著者のネームバリューで売らない。

コンセプトをフォーマットに落とす

価値を5つに分類し構成した視点のカタログだという。

#1 価格
#2 新しさ
#3 無用
#4 コスト
#5 評価

カタログなので、各特集に繋がりがなくてもいい。
だからフォーマティブに。

コート紙以外のいちばん安い紙を片面だけ使用し、ページを稼ぐ。

型面レイアウトは同時にスマホのインターフェースを意識している。
本や雑誌は読まないけど、Webの記事は1万字くらい楽に読めるなと。
それは一度に目に入る文字量だったり、視点を左右に動かさず読み進められる身体的負荷の少なさだったり。

いいものを作るとは

考える人は媒体の垣根を超える、逆に考えない人はどんな媒体でも考えないのだ。いいものはいい。

諦めない。いいと思うことを発言し続ける。
デザイナー間で全員がいいというものになるまで議論し続ける。

常識や慣習ではなくメリットとデメリットで判断する。
常識や慣習に囚われる人からの反発がデメリットであることを認識する。

感想

広告、雑誌、デジタル… デザインのフィールドとデザイナーの役割が広域で複雑になったと言われててから久しいが、もともとデザインの楽しさはそういう所であったはずだ。新しい雑誌『広告』には、一貫したコンセプトがものに落とし込まれている気持ちよさがあり、改めて気付かされた。

だが制作期間も費用も人員もコストが大きく、コストをかければいいものが出来るのは当たり前である。ものづくりのスピードと常に改善し続ける感じは広告やグラフィックデザインよりもデジタルの方が断然軽快だ。大きな豪華客船と水上バイクのように。用途が違う。

尽きつめたデザイン思想のモデルケースとして、とても良いサンプルであると思った。

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