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問い問答

A「人生とは何だろうか」

B「いきなりなんだ。その甚大で抽象的な質問は」

A「甚大は「甚大な被害」とかそういう時に使うことばじゃないのか」

B「そうかもしれないが、お前が今「人生とは?」という質問をしてきたことは俺にとっては甚大なことなんだよ」

A「そういうものなのか」

B「そういうものさ」

A「で、人生とは」

B「うーむ、人の生きる道だな」

A「読んで字の如くとはまさにこのことだ」

B「実際にそう思うのだから仕方がない」

A「もっと何かあるんじゃないか。たとえば「人生はパンクロック」だとか」

B「ロックって何だよ。梅酒でしか聞いたことがないぞ。あと、パンクしてたらもう空気がなくなっちまうぞ」

A「つまらないこと言うんじゃないよ」

B「俺はつまらない人間だ」

A「つまらないのが人間か」

B「そうかもしれない」

A「人生とはつまらないものなのか」

B「そうとは言っていない」

A「しかし、君は人間はつまらないと言った。人の生きる道が人生ならば、人生はつまらないものだ」

B「鋭いやつは嫌いだ」

A「鋭いというよりは、当たり前という方が近い気がする」

B「そういうところだよ」

A「どういうところ?」

B「まぁ、人生なんて深く考えたところで大したことないもんだよ」

A「そうなのか」

B「そうだよ。まだ20数年しか生きていないけど、わかる」

A「達観してるんだな」

B「達観というか諦観に近いかもしれない。境地に達したんじゃなくて、諦めているんだよ」

A「何か嫌なことでもあったのか?たとえば、女に振られたとか」

B「それはない。むしろ、逆。お付き合いできていても、こんなものなのかってさ。上を見ても下を見てもきりがない」

A「どういう意味?」

B「別に意味はないよ。ただ、人と比べても何にもならないし、つまらないなと思うだけさ」

A「何を比べる?」

B「色んなことさ」

A「比べなければいいのでは?」

B「そうできたら苦労はない。人間というものはそういう風に作られているらしい。他人を羨み、妬み、嫉む。嫌になってしまう」

A「俺は君を何とも思わない」

B「お前みたいなやつは一緒にいて気持ちがいいよ」

A「俺は快楽をあまり知らないようだが」

B「俺にとってのお前という存在の話だよ。だから、俺の中で完結していることだから、お前のことはどうでもいい」

A「わかった気がする」

B「何がだよ?」

A「人生とはという問いの答え」

B「ほう、興味深いね。言ってみろよ」


A「人生とは、人それぞれさ」


B「やはり、お前は鋭いよ」

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