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実践 心理的安全性のつくりかた(導入ならびに留意点)

scoutyでHRBPをやっている千田(@320KZCD)です。

最近、いよいよ「心理的安全性」という言葉が浸透してきました。下のような素敵な記事も増え、概要や効果は認知されてきた実感があります。

一方で「効果があるということはわかったが、どうやって心理的安全性を作るのか?」は、ピンと来ていない方が多いのではないでしょうか。GoogleのRe:Workにもツールやポイントが書かれていますが、その分野に精通していないと少しわかりづらいかなと思います。

そこで、今回は「簡単にできる心理的安全性のつくりかた」というテーマで導入時にどこから手をつけるべきかとその際の留意点について書き留めます。わかりやすさを優先するため細かい説明は省いていますが、誤解を招く表現などあれば有識者の方ご指摘ください。

良い組織を築ける経営者やHR、マネージャが増え、良いチームと幸せに仕事ができる人が増やせたら嬉しいです。(ヤバい会社が消えますように)


はじめに

心理的安全性のつくりかたを学ぶ前に、前提知識がひとつだけ必要です。

それは「組織とは何か?」です。ここだけ少しわかりづらいです。

バーナードの3要素では「共通目的のために、コミュニケーションを通じ協働する集団」が組織だと言われますが、昨今では組織は「ディスコース」により意味を生成しつづけるシステムである、とされています。(主題から逸れるため、さらっと流して下さい。ディスコースについては後述)

この「ディスコース」が、心理的安全性をつくるうえで重要です。


ディスコースとは

日本語では「言説」と訳され、これはあるコミュニティの文脈を伴った、言葉で表現された内容の総体としての意味付けです。(ここもちょっとわかりづらいので例を挙げます)

このように、会社の代表者という意味の「社長」という同じ言葉であっても、コミュニティの歴史が重ねてきた文脈によって、認知される意味が変わっていきます。

組織では論理的に正しいことよりも、そのコミュニティで認知されているディスコースが優先されるということを覚えておきましょう。

(このあたりは社会構成主義というジャンルになるので興味がある人は学習してください)


心理的安全性が浸透するためのディスコース

心理的安全性は「我々の組織」という言葉において下の4項目が共通のディスコースとして組織構成員の大半に内在化した時に浸透したといえます。

「我々の組織」は、「誰」の「あらゆる発言」に対しても

 1, 無知だと思われない
 2, 無能だと思われない
 3, ネガティブだと思われない
 4, 邪魔者だと思われない

ことが当たり前である、と信じられている状態。


ディスコースのレベル

組織ディスコースにはレベルがあり、階層で捉えるとどのレベルのディスコースを意識すれば良いか見えてきます。(Alvesson and Karreman,  2000)

例えば、こちらの記事(心理的安全性を0から80くらいに上げた話)は「個人レベル」および「対人間およびグループレベル」を射程としているため、組織レベルでの心理的安全性がなく、筆者さん自身は辛いままです。


心理的安全性のつくりかた

心理的安全性をつくるためには「対人間およびグループ」と「組織」レベルにおけるディスコースへの働きかけが重要となります。

具体的には下の3つから始めれば、ざっくり心理的安全性はつくれます。

1, 他の人を無知、無能、ネガティブ、邪魔者扱いするあらゆるメンバー(当然、経営者も含む)を採用しない&改善する&排除する

Googleのこちらの記事が参考になります。

>ブラウン氏は「どんな意見であっても、自分の意見を共有しても安心だという企業文化が大切だ」としながらも、「その意見が(Googleの)行動綱領、男女雇用の原則、ポリシー、差別禁止法に違反していなければの話だが」と述べていた。

心理的安全性を守るためには、心理的安全性を脅かすものは取り除かれるのだ、というディスコースが必要です。心理的安全性は「優しさ」ではありません。


2, 権力を持つ人間が断固としてルールを守る

ディスコースは文脈を伴うと説明しました。社長が自分を特別扱いすれば、「権力者はルールを破っても良い」というディスコースが生成されます。やがて取締役、部長、課長と広がり心理的安全性は死にます。権力者こそ徹底してルールを守り続けなくてはなりません。

僕の所属するscoutyは幸いなことに代表の島田がフェアで尊敬できるいい男なので安心ですが、それに加え「ダイアログ」という場を定期的に用意しています。

これは全員参加、特に新加入メンバーを中心に、会社の未来に対して「社長の考えは違いませんか?」とか「ここの意味が分からない」とった発言が出ることを促し、チームの非一致を発見する場です。

ちなみにGoogleは6万人を超えてもいまだにCEOが新入社員からの質問を応えたりしているので、大企業だからできないという事はありません。本気で良い組織をつくる覚悟がないだけだと思います。

 

3, センシティブな話題(給与、プライベートなど)を除き、密室会議、Private Channelなどクローズドな話し合いを許さない

陰口とか社内政治があると心理的安全性は守れません。意見があればフェアに表に出すのが自分たちのルールだと周知し、守られなくてはなりません。

scoutyでは、センシティブな話題(給与、プライベート、1on1の内容、同性限定の話題など)以外はPrivate Channel, DMは禁止です。

scoutyのSlackです。たまたまパブリック100%を達成していました。DM率が高くなっている日は休日で、メンバー同士で遊びに行くときに使っているみたいです。

また、会社の残キャッシュやメンバーのKPIもオープンなので、メンバーは気になるなら誰でも見ることができるようにしています。

加えて、組織の大事な話題(戦略、採用、課題、出来事など)はみんなにしっかりと共有されることも重要です。

心理的安全性を守るためには、アンフェアなことが無く、自分がこのチームの重要な一員である、と信じられる透明性が必要となります。


心理的安全性をつくるまとめ

1, 他の人を無知、無能、ネガティブ、邪魔者扱いするあらゆるメンバー(当然、経営者も含む)を採用しない&改善する&排除する

2, 権力を持つ人間が断固としてルールを守る

3, センシティブな話題(給与、プライベートなど)を除き、密室会議、Private Channel、DMなどクローズドな話し合いを許さない

「組織レベル」=組織のルールとして宣言、厳格に運用される

「対人間およびグループ」=上司部下、同僚の間においてアンフェアなことが起きず、みんながチームの大事な一員であると実感できる

以上が組織の文脈において疑いなく認知できた時、心理的安全性がつくることができるので、まずはここから始めるのが良いでしょう。


心理的安全性だけでは不十分

パフォーマンスが上がる組織をつくるためには心理的安全性だけは不十分で、他記事でも指摘されているように「責任」が必要です。

この責任という言葉も本気で説明すると長いのですが、端的にいうと「Accountability(説明責任)」です。似た言葉でResponsibilityという言葉もありますがこちらは「担当者の責任」、Accountabilityは「責任者の責任」だとイメージしてください。

心理的安全性は、与えられた役割の説明責任を果たす人に認められるものです。裏を返せば、責任を果たさない人に心理的安全性は与える必要がありません。

ただし、ここで注意すべきは「成果を出せていない=責任を果たしていない」ではないことです


本来の成り立ちとしては順序が逆

心理的安全性からスタートするのは順序が逆です。

まず、未来の予測できないVUCAといわれる環境があり、説明責任を持つ人がパフォーマンスを発揮するためには失敗から学習しなくてはならず、学習組織を作るために心理的安全性が必要である(成果にたどり着く学習のための失敗が十分にできる)。というのが本来の順番です。

最終的に成果を出すために失敗が必要である。という前提に立つと「成果が出せていない=責任を果たしていない」ではないことがわかると思います。

大切なことは、Accountabilityを持つひとが自らの矜持を持ち、挑戦し、結果から学び、前進しているのかということです。

それが出来ていない人がいたら、フェアにそう見えていることを伝え、チームで成果が出せるように全力で支援するべきでしょう。(ただし、そもそも責任を取るつもりがないのであれば、早めに責任を外しましょう。)


最後に

今回は、まずやってみようと思えることが重要だと思い、わかりやすさ優先で説明したつもりです。わからない所があったり、本気でそういう組織づくりをやりたい方がいらっしゃればDMとかでご相談ください。

あと、弊社scoutyは心理的安全性とメンバー全員が矜持を持っていると胸を張って言える、控えめに言って最高な環境です。全力を発揮できる環境を求めている方がいらっしゃれば気軽にオフィスに遊びにお越しください。


それではまた。

Photo by alex-shutin on Unsplash

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