見出し画像

ラスボスが高人さんで困ってます!36

小鳥の囀る声が聞こえる。風が木々を揺らし、その葉の朝露を振り落とすと、俺の頬をピシャリと濡らした。

「ん……。」
その冷たかに目を覚ました俺は、チュン太に擦り寄ろうとする。
しかし隣にチュン太の気配はなく、眠い目を擦りなら辺りを見回した。
「あれ……ちゅんた?」 
目の前には湖があり、紅葉した木々が美しく湖面を彩る。瑞穂国とはまた違う植生に、やはり遠い国なのだと、少しだけ心細くなった。

俺は、ていた毛布を畳み立ち上がると、辺りにチュン太の気配を探す。けれど、近くに彼の気配は感じられない。
「どこ行ったんだあいつ……。」

洋服の上にはチュン太のマントを着たままになっていて、彼の匂いがフワリと香った。甘い香りだ。
ほわん……、と表情が緩んだ自分に気付いて、顔を赤らめブンブンと顔を振った。
「ったく、惚れすぎだろ。無駄に良い匂いさせやがって……――ん?」

甘い香りって……。

俺はハッとして、慌てて彼を探し始めた。
「チュン太ッ!チュン太どこだ!!」
大きな声で呼んでみるが返事は無い。まさか、湖に入ったなんて事は……。ここは神水でも温泉でもない。秋も深まるこの時期の行水なんて身体が凍てついてしまう。

目を凝らして湖面を見るが、特に水面が揺れている様子も無くホッとする。

きっとそんなに遠くには行けないはずだ。しばらく彼を探して鬱蒼とした森を歩いてみる。

「ちゅんたー!おーい!」

クンクンっと香りを頼りにしてみると、少し歩いた先に大きな木を見つけた。広く枝を広げた紅葉樹は、ハラハラと葉を落として、地面は赤や黄色の艶やかな絨毯になっている。

その大きな木下で何かに包まって眠るチュン太を見つけた。

俺は慌てて駆け寄ると、見覚えのある紺色の着物を毛布代わりに使い、身体に巻いて寝ているようだった。

俺はクスリと笑い、優しくチュン太を起こす。
「チュン太、大丈夫か……?」
そうして彼に触れると、ビクリと身体を揺らし、ぱっと顔を上げた。

「あ……ッあの……。」
目を赤く腫らして、涙の跡が見受けられる。
ああ、やっぱり。
「発情期だろ?そろそろ半年だもんな。」
俺は隣に座りチュン太を抱き寄せ、頭を撫でてやると、ギュッと抱きついてくる。
「こんな時にすみません……。」
「俺の着物だけで満足できたか?」
「なんとか……夜は耐えられました。」
本人はかなり苦しんでいるのだろうが、涙声で縋るように擦り寄ってくる姿はなんとも可愛いものだ。

昨晩、俺が眠った後から異変が起きたのだろう。
発情期が来ても俺を起こさなかったのは、海を渡るために丸一日飛んでいた俺を気遣っての事か……。

俺の隣に居ればそれほど辛くは無かっただろうに。

ふぅ、と息を吐く。
さて、これからどうしたものか。
こんな山の中で交わるのはさすがに怪我をしそうだが……。
かといって、このままという訳にもいかない。

「チュン太、ここから町って遠いのか?」
彼はこちらを向かず、一時も離れたく無と言う風に俺に抱き付いたまま答えた。
「ああ……えっと、あの湖はミストルの南の端に位置するので、首都を目指しながらだと、北に歩いて七日程の場所にフィノスという港町が……。首都よりは、少し近いかな……。」

七日か。遠いな。
とりあえずはそこに向かって、チュン太が落ち着くまでそこで過ごすのが得策なのだろうが、それまで彼が保つはずがない。
まぁでも、とりあえずの行き先はそこだろう。「じゃあ、そこに向かうか。」
「……はい。」

ぽんぽんと彼の背を叩き、立ち上がろうとするが、彼が離してくれる気配が無い。

「「………………」」

チラリと、ギュッと掴む彼の手を見やる。離したくないというよりは、離せないのだろう。

俺は、息を吐いて、彼のふわふわの髪を撫でてやる。
まぁ、もう仕方ないだろう。彼を満たしてあげなければ。もう我慢する事も無い。発情期とは関係なく彼とは想い合っている。

「チュン太、こっち見ろ。」

そう言うと、ひょこりと顔を上げて俺を見上げる。
今は獣耳は無いが、あったらペッタリと畳んであるのだろうなと、想像できて、愛しくて髪を撫でる。

その頬を持ち、チュッとこちらから口付けてやると、チュン太は目を見開き、そしてすぐに熱っぽく辛そうな表情で、グッと唇を押し付けてきた。
彼の舌が口内を弄り、舌を絡めとられる息もできない。
「ふっ……んぅッ」
彼は自分が羽織っていた着物を俺の頭から被せ、ゆっくりと枯れ葉の敷き詰まる柔らかな地面に寝かしてくれる。
「俺……もう前みたいに我慢しませんよ。いいんですか?」
俺を組み敷き、見下ろす彼の瞳が苦しげにこちらを睨みつける。熱を帯びた捕食者の瞳。

「お前の気持ちは変わらないんだろ?」
そんな彼の頬を撫でると、その手を握られる。
「当たり前です。」
真剣な翡翠の輝きは俺を魅了する。
俺は、彼をうっとりと見つめた。もう彼の香りで俺自身も我慢できない。
「ならいい。好きにしろ。」
そう言うと、空腹の獣が獲物を貪り食うように首筋に顔を埋め、ベロリと舐めて甘噛みされる。刺激されるたびに身体が昂っていき、いいようのない幸福感が身体を支配していった。

「はぁ……はんッァ」
右手はシャツを捲し上げ胸を弄られ、擽ったさと共にそれだけではない切なさを感じる。

視界を遮る彼の頭が横にずれた事で視界が開ける。鳥の囀りが心地よく響き、朝の木漏れ日が色付いた木の葉を鮮やかに魅せている。
こんな朝の明るいうちからことに乗じている羞恥心と、種族として強い個体に支配される悦びを同時に感じる。

彼から香る発情の香りが甘ったるく、身体や感情、表向きなモノは全てチュン太に支配さる。今はもう彼の事を受け入れているせいか媚薬の様に俺の意識を絡め取っていく。

発情期の雄を受け入れると、こんな事になるのか。
快楽に浸かっているというのに、まだ頭の芯は冷静に物を考えている。そのうちソレもままならなくなるだろうが。

「はっ……ンッんッ」

いつの間にか下半身は全て脱がされていて、勃ち上がった俺のモノを指で弄びながら顔を上げ、うっとりとした顔でへらりと笑い俺を見つめた。
「はぁッあぁッ」
「高人さん……イイ顔です。」
色っぽく低い声にゾクリと身が震える。

「高人さんのここ、早く俺が欲しいってヒクヒクしてる。」
ぬるりと秘部を撫でられ、その少しの刺激だけで身体がゾクゾクと悦ぶのを感じる。
彼の発情香に当てられ少し触れられるだけで身体は敏感に反応した。
そんな状態の俺の足をグッと開かれ、まだ慣らしもしてもないソコに、彼は自らのモノを押し付ける。
「あっ……あっ、ちょっ……まってッ……」
「誘ったのは、高人さんでしょ?俺が発情してるの知ってて……。ふふ。」
不安になりグッと彼の胸を押し返そうとするが、その手ごと拘束するように抱き締められる。
「……痛く無いはずです。息吐いて。楽にしてて」
その言葉と共に張り詰めた彼のモノが俺の中に押し入り貫いていく。
「はぁッんッ……だめだめッアァッ!」
硬く熱い質量は肉壁を刺激し、ゾクゾクとした快感がせり上がりっていった。ビクッビクンッ身体が痙攣する。
その様子を見て、彼は嬉しげに瞳を細める。
「……まだ挿れただけなのに。そんなに気持ちよかった?」
グリグリと奥に彼のモノを擦り付けられ、その刺激が達したばかりの身体に快楽を植え付けていく。
「はぁ……ッ……。」
チュン太も耐えるように息を吐いている。
いつもなら、苦しくて、でも気持ちよくて、そこからまた導かれるようにゆっくりと上り詰めていくのに、今日は少しの刺激が直ぐに大きな快楽に繋がっていく。

全部こいつの濃い発情香のせいだ。

身体はずっと痙攣し、彼が動くたびに声が出る。呼吸もままならない。喰われている。そう感じた。

「……ばかちゅんたァッちょっと抑えろ……あッアっ」
チュン太が腰を動かすたびに、新たな波が休む間もなく押し寄せては達してしまう。
俺の言葉など聞いておらず、彼は自分の快楽を追うように腰を動かす。
「はぁ、すご……中うねってる……ッ」
彼の香りが濃くなり、俺のなけなしの理性まで絡め取っていく。
「あアッ!んはっ……はぁッ……だめまたイっ――ッっ」
「……――ッ!!」
俺が達すると、その刺激にチュン太もビクリッと身体を震わせ俺の中に精を吐き出した。それはまた俺の身体を熱く痺れさせる。

そうだった。雄の精にも相手を興奮させる作用が……。

チュン太は呼吸荒く苦笑して、俺を見下ろした。
「今、貴方に搾り取られましたよ。高人さん、そんなに注いで欲しかったんですか?可愛い。本当に可愛い。」
顔中に口付けられ、首筋にも吸い付き跡を残される。
けれど、それじゃ足りない。もっと動いて欲しい。
「ちゅんたぁ。」
「ん?昼間からこんなトロトロになって。まだ欲しい?」
まだ彼のモノは中で硬く反り勃ち、俺の中をグリグリと刺激し続けている。
まだ欲しい。まだ足りない。もっともっと。

チュン太の首に手を回し、朦朧とした意識の中で口付けを強請ると、彼はすぐに望むものを与えてくれた。

ああ、凄く気持ちいい。

発情期の雄に抱かれる事がこんなに気持ちいいだなんて、知らなかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?