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土楽窯へいったら、土鍋がもっと好きになった。

今日は三重県伊賀市にある、土楽(どらく)の窯元へ。

奈良から伊賀までは電車でいったのだけど、スマホを見るのをやめて外の景色に見入るくらい、緑豊かできれいなところだった。周りの人もみんな、ぼーっと外の景色を見て電車に揺られていた。

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土楽は、伊賀焼の土鍋やうつわをつくっている陶芸集団のこと。

私は、ほぼ日の「生活のたのしみ展」アルバイトで土楽担当になったことをきっかけに知り、深くハマッていった。そのときに初めて土鍋を買い、接客をし、価値観や行動が大きく変わったのだった。だから私にとって、土楽には強い思い入れがある。


私は土楽の土鍋をつかうようになってから、「土鍋は冬に使うもの」というイメージが変わってオールシーズン使うようになったし、土鍋の「じっくり熱が通る構造」を理解していくと煮込み料理はもちろん、焼き、ソースづくりなど色んなことに応用してつかえることが分かった。レパートリーが格段と広がり料理するのも食べるのも楽しくなった。

また、土楽の商品を買いに来るお客さんの真剣さを初めて見たときの衝撃は今でも忘れられない。1つの土鍋やうつわを時間をかけてゆっくり選ぶこと。今までものを買う行為の中で、私はそんなに真剣に向き合ったことがなかった。だからその価値観に触れたときの驚きと、もう少し深く入ってつくる人や使う人たちの感性に触れてみたい、と好奇心が刺激され陶芸をはじめうつわの世界にのめりこんでいったのだった。

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佐那具(さなぐ)という駅に降り立った。土楽へは普通、電車でいくものではない。車がベターなんだけど何もわからなかった私は、空気が読めず電車で来てしまった。

円(まどか)さん(土楽窯の三女)が駅まで迎えに来てくれて土楽に連れてってくれた。車中ものどかに広がる伊賀の景色に、なんだかとても不思議な気持ち。「いつか、土楽窯をみてみたい!」って思って、それがちょっと叶っちゃうんだから内心、どきどきである。

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敷地内は瓦屋根のお屋敷がいくつかあった。ギャラリー、うつわを成形するところ、焼く前の作品を置くところ、釉薬をつけるところ、焼くところ...

「うわぁ」
「すごい!」
「かっこいい!」

をひたすら連呼。つくづく、自分の語彙力のなさに絶望である。

道歩(みちほ)さん(土楽窯の8代目当主、四女)が窯で作品を焼いているということでその様子を見学させてもらった。

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これは、穴を掘ってつくる穴窯(あながま)という窯。

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石で築き上げられたこの窯は迫力満点だった。いま、この窯の中には200個ほどの作品が入っているんだそう。ここに薪を入れて、1,200度の高温で焼いていく。私が行ったときは800度くらいで、徐々に温度を上げていくとのこと。

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中をのぞくと、作品がたくさんあった。直接火に当たっているうつわもあったんだけど伊賀の土は頑丈だから火に当たっていても平気なんだそう。ここに入って焼かれながらうつわは完成していくんだと思うと何だか感慨深かった。

ところで薪はバシバシ入れるのではない。温度計を見たり、煙の様子を見ながら少しづつ入れていく。煙があがっているときは薪を入れても温度が上がらないので、煙がおさまった頃合いを合図に入れていく、と円さんは説明してくれた。

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これ、どのくらいの時間をかけて焼くと思いますか?

1日以上なんです、24時間以上。その間、窯から離れられないので円さん・道歩さんは交代しながら寝ずに火の番をするんだそう。「焼いている間、なにをしているんですか?」と聞くと、円さんはいつも読書をしていることが多いと話してくれた。
パチパチと焼かれる火の音を聞きながら待ち続けるの、きっと大変なことだと思うけど作品への思い入れがより一層深まりそうだなぁと思った。

前にほぼ日のコンテンツで道歩さんがインタビューに答えていた記事に「穴窯」について書いてあったんだけど、


わたしが今回つくったのは、
窖窯(あながま、穴窯)とも呼ばれる、
もっとシンプルで古代からあるタイプの窯です。
昼夜、何日にも渡って薪を投げ入れ、
火の流れを作り、焼き上げていく方法です。
人にはコントロールすることができない
土、火、水、風などの自然が相手ですから、
どんな焼きものができあがるか、
予想がまったくできないんですが、
それだけに、唯一無二のかたちや焼き色、
景色が生まれるおもしろさがあります。

穴窯は、ガス窯のように温度をボタンひとつでコントロールできない。火の状況は気候によっても変わるし、作品ができあがるまでずっと見ていなければいけない、言ってしまえば手間のかかること。

でも、この窯でつくると、

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こういう作品ができあがる。
普通、うつわは釉薬(うわぐすり)をかけるんだけどこの作品は「焼締め(やきしめ)」といって、釉薬をかけないで窯の中でうつわに灰をかぶせてつくっている。灰が溶けて自然釉となって、うつわの表情をひとつひとつつくっていく。これが薪で焼く面白さなのかぁ...と作品を見て大興奮。

窯のなかで火がどう走るのか、
いままで見られなかったことも
登り窯では見ることができます。
対話ができるっていうんでしょうか、
器とやっと近くになれる、そんな感覚があるんですね。
そんな体験を通じて、
「本当に自分のものができてきている」
という実感を得ることができました。

大自然の中でこうやってできたうつわは気持ちがいいんだろうなって、その過程を見れて知れて、なんだかとても感動した。

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窯を見せてもらったあとは工房も見学させてもらった。

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これから本焼きする土鍋やうつわたち。

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毎日、なんらかの作品を焼いているガス窯、

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(↑これ、写真だと伝わりにくいのですがめちゃくちゃ大きいです)

ロクロを回して一つずつ手挽きで成形する土鍋をつくる作業場、

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作業場に置いてある道具や粘土のかたまり、つくりかけのものを見て、土楽の作品は機械じゃなくって、ひとつひとつ丁寧に手作りでつくっているのをその空気からひしひしと感じた。伊賀の土は粗めで、普通の土より空気が含まれているようで、そのせいで耐久性や保温性がある分、成形しにくいものだと他の記事で読んだことがある。それを10年以上ものキャリアの職人さんたちが集まり日々、粘土と向き合いながらあれだけの作品をこの作業場でつくっていると思うと「すごいな、かっこいいな」とひたすら心の中で思ったし、この空間に圧倒されてしまった。職人さんにとってこの場所は、日々集中して作業をする繊細でプライベートなゾーン。そんな貴重なところを今回、見学させてもらってありがたい気持ちとともに胸が高まった。

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できあがったものはギャラリーでじっくり見学することができた。

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艶やかでかっこよくてガシガシつかえる土楽の土鍋。大自然の中で、人の手で、伸び伸びとつくり出される様子を見て土楽の作品が長く全国で色んな人に愛用される理由がわかったような気がした。

この日私は、前から欲しかった「洋風片手鍋」をゲット。

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これでたくさんシチューやカレーをつくるんだ。

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工房を見せてもらったあとは、裏山に。柿やくり、ゆずがたくさんなっていて、道歩さんに許可をいただいてちょっとだけ採らせてもらった。

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図々しくも花摘みまでさせてもらって、大事に自宅まで持って帰ってきた。
家に帰っても伊賀の空気を感じられる、心地よい1日になったなぁ。

円さん、道歩さん、本当にありがとうございました。また、遊びにいきます!

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最後に、「勝手に土鍋Q&A」。こんな質問をいただきました。

Q:洗い方について

土鍋は柔らかいスポンジなどで丁寧に洗うのがのぞましいとのことです。たわしなどで洗ってしまうと傷がついてしまうので注意してください。私は、ご飯炊き用の土鍋をつかっていますが、ご飯がひっついてしまったときは、少しだけぬるま水につけてしゃもじで表面を優しくこすって取っています。こげがついたときも同じで、ふやかしてからこするときれいに取れますよ。
ただ、水につけすぎるのはおすすめしないようなので要注意です。

↓ここに詳しく書いてありました。

Q:スパイスを使うと匂いが取れなくなっちゃうけどどうしたらいいか?

A:お湯を入れて、お茶葉を入れて煮立てると匂いが取れるそうです。これも書いてありました。

8分目まで水を入れ、茶殻を一つかみ入れて、
弱火から少しずつ加熱して10分くらい煮立てます。
お茶の成分がいやな匂いを吸収してくれます。

なるほどなことばかりですね。

伊賀焼の土鍋やうつわ、もっとたくさんの人に魅力を知ってもらいたいなぁ、とますます思った土楽訪問になりました。

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