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答えられなかった質問

「この商品、本当にいいと思っている?」
と聞かれたとき、心臓が一瞬ばくっとして何も答えられなかった。

私は、『この商品は素晴らしい』という前提で、ずっと仕事をしていた。

この商品は実績のある〇〇先生が開発したから、
良い職人を使っているから、
原価は低めで利益は確保できるから、

いいんだ!と思い込んでいた。

その思い込みは「きっと」や「なんとなく」であって、本当に自分がいいと思っている?と改めて聞かれるとドキリとする。

この問いを真摯に受け止めてみて深掘りしていくと、なんでうちのブランドがこの商品出しているんだっけ?という疑問がわいてきた。

うちのブランドにはどういうコンセプトがあって、商品とどう繋がっているんだっけ?
使う人の目線に立って作られているんだっけ?
そもそも、うちのブランドってなんだっけ?なにがいいんだっけ?

さらに、その商品が世の中にヒットして売れ始めると、もっと厄介なことになる。今度は、「買ってくれるお客さん」の方向だけ向いて商品開発が進んでいくようになる。

中国人に売れるから、中国人はこれが好きだから。
これを入れといたらなんとかなる。

どんどん中国人向けの商品開発が進んでいく。

企画・開発側と、お客さんに対面で売る側に大きな溝ができてしまうだろう。

ただ、この問いを追及していくとパンドラの箱を開けるようにブランド根本の姿勢から見直さなければいけない。それは数千、億単位で時間とコストがかかるとても壮大なプロジェクトになってしまう。すぐに目に見えて結果が出るものではないからこそ経営者としては即答でyes!とは言えない複雑な問題だ。
でもそれをやらなければ、どんどん傷が深くなって働いている人の気持ちがバラバラになっていってしまう。

同じ想いを共有する、ってすごく大切なことだと思う。
「良い」と思う価値観は人それぞれだけど、それをお客様に提供する立場である以上は決してブレてはいけないのではないだろうか。

昨日読んだ最所さんの記事が今のもやもやを全て言葉にしてくれていてとてもスカッとした。

特にこの部分になるほど!と思った。

もちろん、いいものが安く手に入る世の中は素晴らしい。しかし、単に素材や工賃といった目に見えるコストだけがそのモノの価値ではない。
むしろブランドやデザインの思想性にこそ多大な労力が注ぎ込まれ、そうやって作り上げられた夢の世界に私たちはお金を払っているのだ。
ファッションであれインテリアであれコスメであれ、百貨店で扱われるものにはすべて思想がなければならない。そしてその思想の蓄積を、私は『文化』と呼ぶ。

ブランドやデザインの思想性を築き上げてこそ、はっきりわかる形でお客さんと価値を交換でき、それが生活に染みわたるように根付くことで初めて『文化』となっていくということなんだ。文化が最終目標だとしたら、やっぱりこれは時間をたっぷりかけて築き上げていくものだと。

目先の利益ばかりチラついちゃって楽な方に、楽な方にいってはいけないんだと分かっているけど、とはいえ、その価値を会社に浸透させるのはとても難しいな・・と平社員の私は感じるのであります。

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