【前編】きっかけは「うつわが好き」な気持ち。うつわ屋店主:鎌野さんのお話
今までうつわ屋って身近に感じることができなかった。洗練されたオシャレ空間であればあるほど、自分の生活や価値観とはかけ離れている気がして、お店に入っても何も買わずに出ることが多かった。
だけど2年前、「器MOTO(うつわもと)」に出会ってからうつわ屋のイメージが変わった。
このお店に入った瞬間から、時間と呼吸のスピードがゆっくりになる気がした。
気持ちよさそうに佇むうつわたち。これは、うつわそのものが持つ力なのか、光やスペースなどの演出によるものなのか、よく分からないけどもっと、もっとじっくり見たい。
それから私はこのお店に通うようになり、たくさんのうつわに出会った。
店主の鎌野明子(かまのあきこ)さんから、たくさんの話を聞いた。
今回、鎌野さんのことを書きたくて、
「鎌野さん、インタビューしていいですか?」
と聞くと、
「恥ずかしいなぁ。やめた方がいいよ。こんなおばあさんの話なんて、誰も興味ないと思うわよ」
と言われ続けた。
「興味あります」
「ないよ」
「あります! 」
「ないよ......」
このやり取りを続けて半年以上。やっと書かせてもらえることになりました。渾身のnote、よかったら見てってください。
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器MOTOは、東京の小田急線「千歳船橋駅」から徒歩7分のところにあるお店。
店主の鎌野さんの年齢は、70歳。
65歳でこのお店をはじめてから、もうすぐ5年になる。
行くといつも、部屋の奥にある暖簾から「いらっしゃいませ」と出てきてくれる。
お店は、「うつわ展示スペース」と「くつろぎスペース」に分かれていて、この写真はくつろぎの方。
展示スペースは鎌野さんセレクトのうつわが並べられている。
最初に言っておくと、鎌野さんは写真があんまり好きじゃない。
だから、このnoteには鎌野さんの写真は1枚しか出てこないのだけど、よかったら想像をふくらませながら読んでもらえると嬉しいです。
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毎日がどきどき
ー私、このお店とても好きなんです。他のうつわ屋さんにも行きましたが、この空間が心地よくて。他であんまりうつわを買えないんです。
(鎌野さん ※以下、鎌)
あら!嬉しい。そんなことを言ってもらえると励みになるわ。
今こうしてうつわ屋をやっているけど私、自信がないのよ。毎日、「こんな感じでいいのかなぁ」と思うのよ。
ーえ、自信がないんですか!まだインタビュー始まったばかりなのにいきなりのネガティブ発言ですね。
(鎌)突然ごめんね。私、このお店をやるまではずっと主婦をやってきて家にいることが多かったから、人に積極的に話しかけたりすることが苦手でね。ほら、このお仕事していると作家さんやお客さんと話すでしょ。毎回緊張するのよね。
ー緊張しているんですか。そんな風には見えませんでした。
(鎌)特に作家さんと話すときが一番緊張する。私から声をかけることが多いんだけど、「このお店にあなたの商品を置いてもらえませんか」を入り口に、自分のお店のことを話したりするのが、もう苦手で。断られると少しは傷つくしね。
商売やっているのにこの性格、おかしいわよね。
ー鎌野さん、繊細な性格なんですね。そんなどきどき状態でうつわ屋をやるって。私だったら耐えられません。
(鎌)もうこの年齢になってこんなにどきどきするなんて思わなかったわよ。
お茶を出すこと、お花を生けること
(鎌)それでもうつわ屋をやれているのは、やっぱりうつわが好きだからかな。専門的なことは今だに分からないことばかりだけど、私は「これでもいいか」って思っている。何より作家さん、お客様とのご縁を自分のできる範囲で大切にしたいと思っているわ。お店をやめるとダラっとしてしまう自分も見えているしね。気力がなくなるまで続けよう、かな?
ーそれを聞いて少し安心しました(笑)うつわが好き。いつからお好きなんですか?
(鎌)20代の頃からね、うつわを見るのが好きだった。転勤族の主人といろいろな土地で暮らしたんだけど、そのたびに必ず地元の「うつわ屋」を訪ねていた。ただ、うつわって消耗品ではなくずっと使うもの。自分で持てる数は限られているでしょ。だから、昔からプレゼントとして選ぶことでうつわ欲を満たしていたところがあるのよ。
ープレゼントされていたんですね。
毎回、私は鎌野さんから「おもてなしの心」を強く感じます。例えば、お店へ行くとうつわを買っても買わなくてもいつも「お茶とお菓子」を出してくれますよね。お茶なんてお抹茶たててもらえることもあったり。
それって、プレゼントしたい気持ちのあらわれと似ているような気がします。
(鎌)来てくれただけで嬉しいもの。私はありがとうの気持ちをお茶とお菓子で表してるのかもね。
お花も、季節のお花を生けるようにしている。私はもともとお客さんにお茶を出したり、お花を生けたりする生活に憧れていたから今こうやってお店を開いて、当たり前にできることが嬉しいの。
(※写真:脇山さとみ個展より)
きっかけは、3.11
ー先ほど鎌野さんは20代の頃からうつわが好きだったと言っていましたが、このお店は60歳を過ぎてつくりましたよね。40年間、あたためてきたのですか?
(鎌)あたためてきたというより、そもそも私がうつわ屋をやるなんて思っていなかった。ほら、私こういう性格でしょ。踏み切ったり決めたりすることが苦手で。
ーそれがなんで、お店を開くまでになっちゃったんですか。
(鎌)きっかけは、2011年の震災だったのかな。私は東京にいたんだけど、テレビで被災地の状況を見ていて、自分は何も出来ないし明日の命もわからない無常観を感じてしまった。
もう年齢も60歳を超えていたし残りの人生を考える時期でもあったから、「生きているうちに何かやらなきゃ」という気持ちに駆られたの。
ー震災がきっかけだったのですね。
(鎌)そう。何かに突き動かされたように一生懸命考えた。「私にできることはなんだろう?」と。そんなとき、よく行っていた「うつわ屋」のことを思い出したのね。うつわ好きだし、お店をやってみたい気持ちが沸き上がってきた。
ただ、現実にやろうと思っても全くの未経験・ド素人だったからまずはトライアルとして小さな市場の貸店舗に出店して2日間だけうつわを売ってみたのよ。好きなうつわを集めてね、車で会場へ運んで販売スペースに並べて。もう、そのときも同じくどっきどきよ。ちゃんと見てくれるかなぁ、と。
結果、ちゃんと見てくれる人がいたの。自分が選んだものをお客さんが興味持って、触って、買ってくれる。こんなに嬉しいことはないって思ったし、ありがたいって思った。
ー自分が選んだうつわを見てくれる。それは嬉しいことですね。はじめてうつわを売ったならなおさら。
(鎌)嬉しかったよ。それから、バタバタと陶器市にいったりギャラリーを訪ねたりしながら、お店オープンに向けて準備をしていったの。
後編はこちらをどうぞ↓
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〈器MOTOのウェブサイトとインスタを紹介します〉
ウェブサイト↓
インスタ↓
★プレゼント企画★
2回にわたってお届けするインタビュー記事ですが、ぜひ鎌野さんに会ってこの空間でうつわに触れてほしいと私は勝手に思うのです。
そこで、前回に引き続きこのnoteを見てくださり何らかのリアクションをしてくださった人、1名の方に鎌野さんのお店への招待チケットをプレゼントします。
リアクションは私に届けば、なんでもかまいません。
詳細は後編のさいごにご案内しますのでどうぞお楽しみに...。
※プレゼント企画は終了いたしました。ありがとうございました。
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