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【前編】うつわやオブジェに込めた想い。陶芸家:脇山さとみさんのお話

買い物をしていると、出会いが突然やってくることがある。悩んでレジに足を運ぶことが決まったとき、予想外の展開にうれしい気持ちになる。

この、1枚のお皿を見つけたときもそうだった。

コッペパンが置けるくらいのサイズの平皿。
薄いグレーとくすみがかったホワイトの風合いに一目ぼれ。真四角なかたちも好きで、土でできている柔らかい手触りに一目惚れして即買いしたのは去年のこと。

早速インスタグラムに載せてみると、なんとこのお皿をつくった本人からお返事がかえってきた!

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『雲模様を写し取るような気持ち』なんて、素敵すぎる。
雲かぁ...。

このお皿をはじめて見たとき、私は「風」を想像していた。冬に吹く冷たい木枯らしではなくて、夏の避暑地で吹く涼しい風。
だから、コメントもらって嬉しかったけど、雲とわかってからも私には風に見える。
あぁ話をしてみたい・・と思っていたら先日、ご縁をいただいてご本人にお会いすることができた。


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陶芸家・脇山(わきやま)さとみさん。

私は、大阪市中央区の玉造にある脇山さんの工房を訪ねた。
「いらっしゃ〜い!」と元気よく迎えてくれた脇山さんの笑顔からは優しさがにじみ出ていて、緊張していたけどすぐに打ち解けることができた。
脇山さんは、陶芸教室をしながら個展があるたびに作品を発表している。うつわだけでなく、オブジェもつくっている。

この工房で私は色んな話を聞いたんだけど、まずは気になっていたあのお皿について聞いてみた。

迷路みたいなおもしろさ


ーインスタに載せたあの「雲」のお皿、大活躍しています!あれは実物をイメージしてつくったのでしょうか。

(脇山さとみさん 以下、脇)
これはね、いつも私がみている風景を切り取って、そのままお皿にうつしてみたの。新しいチャレンジが詰まった作品だったなぁ。つくり方、色の出し方は今までの作風とがらっと変えてみたし、時間もたっぷりかけてつくり込んだ。そういう意味で今までにない作品になったから今こうやってきょうこさん(私の名前)の手にわたってるのが不思議だし、なんだかうれしい。

ーありがとうございます。私もうれしいです。お皿の色がきれいで一目ぼれしました!

(脇)色を出すのは一番苦労した。パキッとはっきりした色ではなく、くすみのある色で、か細く流れる雲の様子を表現したかったから、白と透明の釉薬(うわぐすり)を色んなパターンで重ねたり削ったりして今の色を出した。

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かたちも、最初に真四角をつくってから削りに削って今のかたちにたどり着いた。

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これね、だいぶ、削ったよね...。地道に何度も。あぁ削った削った。
何回も言ってごめん(笑)

そもそもこのお皿、最初から完成形をしっかりイメージしてつくり始めた訳じゃなかったから、つくる過程で迷路みたいなおもしろさがあったお皿だったなぁ。「こうしたらどんな色が出るかな..」の連続で楽しかった。

ー私は「風」だと思っていたんです。あのお皿。

(脇)それもいいね!つくる側にとってはそれが聞けるのがとても嬉しい。人によって受け取り方はそれぞれでいいと思うし、どんな人が・なにを感じてくれて・どう拡がっていくのかを考えるだけでかわくわくする。究極を言ってしまえば、私がつくったって知ってもらえなくてもよくて、「この作品が好き!」と思って大事にしてくれればいいなと思う。
ところで私が描いた雲も、きょうこさんが想像した風も、「流れているもの」で一緒だね。


私の代わりに聞いてもらう


脇山さんは、うつわの他にオブジェもつくっている。
みんな口は半開き、目は開いているのかよくわからない具合で今にも喋り出しそうな、そんな不思議なオブジェたち。

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ー脇山さんがつくるオブジェに出てくる「人間(!?)」の表情が好きです。みてるとヒューっと吸い込まれていくような...身を委ねてしまいそうな気分になります。この人たち、なにか喋ろうとしているんでしょうか。

(脇)実はね、このオブジェたちは『聞き役』なの。もともと私は人の話を聞くのが好きで、でも身体は一つしかないから、「私の代わりにみんなの話、聞いてきて〜!」っていう気持ちを込めてつくっている。
実際、展覧会に出すとお客さんは楽しそうにオブジェを見てくれるし、心の中で話しかけてくれているようにも見える。

この子たちはきっと、私の知らないところでたくさんの想いに出逢っていると思うの。
展覧会から帰ってきたときは「誰と出逢ったの?どんな話を聞いたの?」と聞くし、旅立ったときは「また、いつか逢えるまで!私、頑張るよ~」って心の中で話しかけているんだ。
なんだか、魂の一部を分けた子どもみたいな存在なのかもしれない。

脇山さんがつくるオブジェは、仲間同士でペチャクチャ話したり、お客さんと話したりしていて楽しそうだ。きっと毎日、色んな面白い話を聞いているんだろうな。

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こだわりの小さなおじさん

ー脇山さんがつくる作品の色は全体的に焦げたような..スモーキーさがあると思います。たとえば同じ白色でも真っ白な色ではないと思うのですが、これはどうやってつくっているんでしょうか? 時間が経ったからこうなった..?

(脇)これはね。経年劣化でこうなっている訳ではなく、焼いたあとに黒い釉薬(うわぐすり)をかけて、すき間に入れ込んだあとにふき取る作業をしているんだよ。

ーすき間ってなんですか?

私は信楽焼の土をメインに使っているんだけど、この土は小さい石がたくさん入っていてゴツゴツしているの。だからすき間(ブツブツみたいなもの)がたくさんできるのよ。そこに釉薬を入れ込んでるからまだらに黒くなっているの。ツルっとしてない味わい深い仕上がりになるから好きなんだ。

工房に置いてあるオブジェも同じ技法でつくったやつ。

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ーすごい。この風合いを出すのにとても手間ひまかかっているんですね。ところでこの小さいおっさん、いい表情だなぁ。

(脇)いいでしょ。一生懸命つくっているとね、どんどん愛情が深くなっていくの。おっさんに名前なんか付けちゃったりして。
ただ、つくり方は昔と変わってきたかなぁ。だんだん「使う人」のことを考えるようになってきた。どういう人がどういうシーンで使うのか。これを考えることは作家にとって大事なことなんだけど、いつの間にかすっぽり抜けてしまうことがあるんだよね。

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後編につづきます。





〈脇山さんのインスタを紹介します〉

脇山さんのインスタ↓

※脇山さんは通販サイトをやっていませんので、気になることがありましたらインスタのDMよりお問い合わせください。価格帯は、うつわが2,000円~、オブジェが10,000円~になります。

★プレゼント企画★

2回にわたってお届けするインタビュー記事ですが、やっぱりうつわって
使ってみなければわからない!絶対にそう思うのです。
そこで、このnoteを見てくださり何らかのリアクションをしてくださった人、1名の方に脇山さんがつくったうつわをプレゼントします。
リアクションは私に届けば、なんでもかまいません。
詳細は後編のさいごにご案内しますのでどうぞお楽しみに...。

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