見出し画像

初めて分かった、ヨーグルトの味。

「ヨーグルトに何入れる?」

母親からよく聞かれた質問だ。
我が家では、朝ごはんに毎日ヨーグルトが出ていた。
砂糖だったり、はちみつだったり、ときには特製の手作りジャムがヨーグルトと一緒に入っていた。

私は寝ることが好きでギリギリまで寝るタイプ。だから朝は忙しくてイライラしていることが多かった。そんな状態で質問されたとき、私は大抵「なんでもいい」と答えていた。
「なんでもいいって言ってるじゃん! 」と強めの口調になってしまうこともよくあった。

それでも毎朝出してくれていた、ヨーグルト。


社会人になって一人暮らしを始めたとき、当たり前に出てきたヨーグルトはもう出てこなくなった。出してくれる人はもういない。自分が意識して出さなくちゃ出てこない。当たり前のことだった。

近くのスーパーでヨーグルトを買うようになった私は、毎朝「自分のために」用意する。ヨーグルトをうつわに盛って、砂糖類をかける。うつわに盛るときは、ヨーグルトと砂糖類、それぞれ違うスプーンを使った方がいいということも一人暮らしをして初めて知った。
ヨーグルトを食べた日と食べなかった日は、心なしかお通じの調子が違うし、何より心が落ち着く。習慣として身体に染み込んでいるんだ、ということも初めて分かった。

自分で出すヨーグルトは、まだ少し頼りない。忙しいときは、何もかけないで掻き込むときもある。


余裕があるときは、前日に自家製ジャムを作って一緒に食べるようになった。

ジャム作りも簡単じゃない。果物の皮を剥いて、砂糖漬けにして、灰汁を取りながらゆっくり煮詰める。

これも母親がよくやってくれたことだった。



独り立ちして初めて分かった、ヨーグルトの味。
今は、「自分のために」作っているけど、私もいつか「誰かのため」に作りたい。

そう思いながら、明日の朝も私はいつも通りヨーグルトを食べるのだ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?