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唐津の話

陶芸の「唐津焼(からつやき)」を見てみたくて佐賀県の唐津にいった。
去年から陶芸にハマり、日本各地の窯元を見てみたい!と思い、えいやっと思い切って平日休みを取っていってみた。

平日の昼間に唐津駅に到着。
街は、しーんと静か。観光客で歩いているのは、私だけだった。
まずは一番館という器屋さんで、窯元マップをゲット。


早速、「帆柱窯」というところを訪ねてみた。



到着して、入口で「ごめんくださーい」と叫んでみる。
・・誰も出てこない。

入口をのぞくと、真っ暗。蜘蛛の巣もはってあって、人がいないんだと思った。もう、ここで器をつくってないんだろうな、と思ってダメもとで窯元マップにあった電話番号に電話をしてみたら、出てくれた。
そして、しばらくすると女性が出てきて、開けてくれた。

はじめての唐津、はじめての窯元。
ドキドキわくわくで、中を見させてもらった。

わぁ、すごい。と、大興奮。

はじめて、窯元という名の「仕事場」に入らせてもらった。
陶芸家さんにとって、とてもプライベートな空間。それを一般の人に見せるってすごいことだと思う。
ここで、焼き方や釉薬の種類、絵付けの方法を色々説明してもらった。

この場所の雰囲気、ことばにするのが難しいけど「味がある」。
ここで、唐津焼を支える作品が何代にもわたりたくさん出来てきたと思うと、ぐっとくる。

ひとり興奮している私に、その女性の陶芸家さんは本音も話してくれた。

「陶芸で生活するのは大変だよ」

唐津焼。バブルの80年代がピークで、それからはお客さんも全然来なくなり、作品も売れない。父から継いでやっているけど、今の現状は廃れるばかり。

ここの窯元も、観光客の体験をやっているが、お客さんが来るのはちらほら。旦那さんが会社員だから、なんとか生活できている、とポツポツと話してくれた。

話を聞いて、興奮の熱がちょっと落ち着いた。

窯元の横には併設してギャラリーがあった。
そこには作品がたくさんあり、どれも伝統的で素敵な唐津焼ばかり。
話を聞きながらじっくり見ていると、どれもホコリを被っていた。

あ、、全然売れていないんだ。。
少しドキッとした。

私は作品を吟味して、唐津焼の「そばちょこ」を買った。
とても素敵なそばちょこ、たったの1,000円。

女性は、梱包を丁寧にしてくれた。
1,000円なのに申し訳ないな...と思っていたら、「お花好きっていい趣味ね。これもつけてあげる」って、なんとそこに小さな花瓶をつけてくれて、おまけに箱に筆で唐津焼の模様を描いてくれた。

その気持ちに心から嬉しい気持ちと、さみしい気持ちで。

帰り際、最後まで手を振ってくれていた姿が心に深く刻まれた。
とてもおだやかな方だけど、少し疲れを背負ってるような感じに見えて、こうやって伝統工芸は小さくなっていくのかなと思った。

なにか、私も力になれることはあるのかな。
唐津の、「影」の部分を見た気がして帰り道に色々考えた。

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