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レールを敷く投資家たちの葛藤:減価償却誕生秘話


税理士の高木です。 前回のブログでは中古資産の耐用年数について述べましたが、そもそも、減価償却ってどうして産まれたのという、誕生秘話のお話しをします。

19世紀、アメリカ大陸を駆け抜けた鉄の馬車、鉄道。その発展を支えた投資家たちは、大きな壁に直面していました。それは、投資時期による不公平です。

線路や車両などの巨額投資は、鉄道会社の収益を何年も支えます。しかし、会計上は購入時に一気に費用計上されるため、初期に投資した会社は、後発組よりも利益が少なく見えてしまうのです。

投資家にとって、これは看過できない問題でした。そこで生まれたのが、減価償却という画期的な制度です。

減価償却とは、固定資産の価値減少を、耐用年数にわたって費用として計上していく方法です。つまり、線路や車両などの投資額を、使用年数に応じて少しずつ経費として認識することで、投資時期による利益の偏りを是正できるのです。

このアイデアは、1850年代に登場したと言われています。当時はまだ制度化されていませんでしたが、鉄道会社の間で広く採用され、会計の透明性と公平性を高めるのに貢献しました。

そして1913年、アメリカで法人所得税が導入されると、減価償却は税務上の制度としても確立されました。企業は、投資額を適切に費用化することで、課税所得を圧縮し、税負担を軽減できるようになったのです。

減価償却は、単なる会計処理を超えた、投資家と企業の双方にとって画期的な発明と言えるでしょう。それは、鉄道事業の飛躍的な発展を支えるだけでなく、現代の会計制度にも欠かせない基盤となりました。

減価償却の誕生秘話から、当時の投資家たちの苦悩と革新への意欲を感じることができます。

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