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#ジャニーズ事務所は説明責任を果たしてください

2023年元旦、日本経済新聞にジャニーズ事務所の広告が掲載された。

そこには「私たちの約束」として
〇コンプライアンス体制の整備・実践
〇タレント・スタッフ・経営の三位一体体制
〇社会貢献活動の継続・発展
〇個性の尊重・人づくり
が掲げられており、端的に言うとコンプライアンスとガバナンスの徹底を謳ったものだ。

私がこれを一読して感じたのは違和感だ。
違和感の一つ目は、この広告は一体どこに向けたものなのかということ。
芸能事務所であるジャニーズ事務所の一番の顧客は、ファンクラブ会費や公演、CD、関連商品などの購買によって直接的に経営を支えているファンだろう。このファンに向けてのメッセージを届ける媒体として、果たして『日本経済新聞』が最適なのか。

違和感の二つ目は、この広告のタイミングだ。
新年最初ということで、心新たに自社の指針を表明するということはあるだろう。しかし同事務所には2019年に公取委による「注意」がなされたという経緯があり、コンプライアンスやガバナンスを言うのであれば、むしろそのタイミングで表明すべきだっただろう。
もちろん、同事務所に関しては2022年年末に「追徴課税」の事実も明らかになっており、そういう意味で改めてコンプライアンス、ガバナンスの徹底を謳う必要があったとは考えることができる。

しかしそのような具体的な瑕疵があった後にしては、この広告はそれらには一切触れることなく、何を反省し、何を目指すのかが漠然とし過ぎている。だからこそ、なぜこのタイミングで掲載されたのか疑問を持った。

それから数か月。
私が再びこの広告のことを思い出したのは、ジャニーズ事務所の創業者であるジャニー喜多川氏が起こしたという未成年への性的加害が、英国国営放送(BBC)のドキュメンタリーで報じられた時だった。

ここで取材申し込みをしたBBCに対して、同事務所が返した回答は元旦の新聞広告の内容に酷似している。
そして次にこの新聞広告を想起させたのが、ジャニー喜多川から受けた性加害について、元ジャニーズJr.岡本カウアンさんが日本外国特派員協会の要請によって行った記者会見後に、同事務所から共同通信社に寄せられたこのコメントだ。

弊社としましては、2019年の前代表の死去に伴う経営陣の変更を踏まえ、時代や新しい環境に即した、社会から信頼いただける透明性の高い組織体制および制度整備を重要課題と位置づけてまいりました。

 本年1月に発表させていただいておりますが、経営陣、従業員による聖域なきコンプライアンス順守の徹底、偏りのない中立的な専門家の協力を得てのガバナンス体制の強化等への取り組みを、引き続き全社一丸となって進めてまいる所存です。

一見してわかる通り、このコメントは元旦の新聞広告掲載に依拠している。
しかし問題は、BBCがこの件を報じ、被害者が実名及び顔を出して会見を行う「前」に出された広告が、創業者による重大な加害が公に指摘されたことに対する企業としての責任ある説明を代弁するはずがないということだ。

このコメントには、指摘されている加害事実についての言及が一切ない。
加害事実の否定もなければ、そうであるなら尚更書かれなければならない事実関係の調査、被害者への謝罪・賠償、関係者処罰、再発防止の意思も見られない。

紛れもなくこの事案への対応こそが、広告で謳われ、コメントで表明されている
「社会から信頼いただける透明性の高い組織体制および制度整備」
「経営陣、従業員による聖域なきコンプライアンス順守の徹底、偏りのない中立的な専門家の協力を得てのガバナンス体制の強化等への取り組み」
の具体を示すべきものであるのは間違いない。しかしそれにもかかわらず、その一切がなされていないことは明らかだ。

このような同事務所の企業としての社会的責任、道義的責任への不誠実な態度、そして大手メディア、特に地上波テレビがこれを適切に報道、指摘しないことが、さらに被害者への誹謗中傷などの二次加害、被害を表明していない同事務所所属及び出身タレントへの告発の強要や、不合理な責任追及の声を生み続けている。ジャニーズ事務所はタレントを守る立場でありながら、これらの対策すら放置している。

また、このような事態を看過することは、事実上「未成年への性的加害」を容認することと同義だ。告発事実を知りながらこれを問うことのないまま、同事務所との提携、取引を続ける企業やメディアや行政があれば、その道義的責任は免れない。
ジャニーズ事務所の対応は、これらの提携先に対しても不誠実である。このような同事務所の対応を決して許すべきではない。

わざわざ自ら『日本経済新聞』という一般紙上で明確に表明しているように、ジャニーズ事務所は広範囲に影響を与える社会的責任を有する一企業である。
これは「芸能ゴシップ」ではなく、その職務において長年にわたって続けてきた反社会的な行為が指摘された創業者と、その事業を引き継いだ現経営者が果たすべき、企業としての責任の問題である。


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私はファンとして事務所にお金を落としてしまった過去を持ち、創業者の加害を噂レベルだと認識して深く向き合わないで来た一人としての反省があります。
だから今、事務所に求めることを書きました。

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