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『あの人の英語の、ホントのところ』のこと

KEC は、英語を自由に使える日本人を対象に、英語をどうやって学んだかなどをお聞きして、ポッドキャストとブログで発信しています。2017年5月にはじまったこのインタビューシリーズは、現在までに22回・23名の多彩なゲストをお迎えしてきました。

01. 村井 裕実子さん(マサチューセッツ工科大学メディアラボ 博士研究員)
02. 平松 里英さん(通訳者)
03. 嶋田 健一さん(ハーバード大学医学部 博士研究員)
04. 松川 倫子さん(NPO法人Acumenマネージャー)
05. 礒谷 有亮さん(ニューヨーク市立大学美術史学科 博士号取得候補者)
06. 下向 依梨さん(教育クリエイター)
07. 井清 桜さん&蘭さん(米系航空会社 客室乗務員)
08. 郡司 まり香さん(ハードウェアエンジニア)
09. 野藤 弓聖さん(TED字幕翻訳者)
10. 立石 亮さん(三菱商事勤務、スタンフォード大学MBA)
11. 四宮 貴久さん(俳優、ダンサー)
12. 安田 奈々さん(翻訳家、米国公認会計士)
13. 関根 大輔さん(アメリカン大学 アスレティックトレーナー)
14. 岩野 仁香さん(小児救急医)
15. 井内 詩麻さん(現代アーティスト、アートエデュケーター)
16. 太田 みず穂さん(カリフォルニア大学サンディエゴ校 生物化学博士課程)
17. 梅田 麻友子さん(日系精密機器メーカー勤務)
18. 橋本 有子さん(お茶の水女子大学 体育・ダンス専任講師)
19. 山本 真一郎さん(米系複合企業HRビジネスパートナー)
20. 栄枝 直子さん(オクラホマ大学気象学部アシスタント・プロフェッサー)
21. 山本 未生さん(World in Tohoku代表理事)
22. 木村 綾乃さん(プロフェッショナル・バレエダンサー)

ゲストのほとんどは私がアメリカでお世話になった方々。各方面で大活躍のみなさんですが、「英語学習者のためなら」と快くご協力いただきました。

このインタビューをはじめたきっかけは、たくさんの学習者とお話しする中で、彼らが英語を使える日本人に会う機会はめったにないと気づいたことでした。私自身、「英語しゃべってよ」と言われたり、英語を話すとすごく注目されたり、「頭の中どうなってるの?」と聞かれたりすることがありますが、あれも日本に住む人たちにとって英語を話す日本人が珍しいことを示しているのでしょう。

英語を使う日本人に会うことすらない環境では、自分がこのまま英語学習をつづけていったらどうなるのか想像しにくいだろうと思います。ある朝起きたらペラペラになるのか、いつまでたっても英語は話せるようにならないのか。わからないから、いろんな教材やサービスを手当り次第…ということにもなっていそうです。

そこで、学習者と、彼らにとっていわば“向こう岸”にいる人たちとの間の橋渡しをしようと考えました。そんなわけで、インタビューでは学習者が聞いてみたそうなことを尋ねるようにしています。ま、学習プロセスは私の興味のどまんなかなので、基本的には聞きたいことを聞いているんですけど。

もうひとつの目的は、「ひとくちに英語を使える日本人といっても、その人物像はさまざまだ」と知ってもらうことです。育った環境、学習歴、性格、考え方、勉強の得意・不得意、英語の好き嫌いなど、みーんな違うのです。ということは、どの学習者にも“向こう岸”へたどりつく可能性がある。まずは「こういう人が実在するんだ」と知ってもらい、そこから「自分にもできるかも」と思ってもらえたらうれしいなと考えました。

そうやってはじまったインタビューですが、回を重ねるうちに、これが私にとって良いトレーニングになっていることに気づきました。スタート当初には思ってもみなかったことです。

インタビューは毎回リアルなやりとりにしたいので、打ち合わせなしのぶっつけ本番。だからこちらからお願いしているわけではないのですが、ゲストの多くは英語で苦労したエピソードを語ってくれます。「ネイティブが何を言っているか、さっぱりわからなかった」とか、「自分の英語が通じなくて凹んだ」とか。そういうとき、私は居たたまれなくなり、僭越ながら「助けになりたかった…」などと思ってしまいます。

ゲストにとっては過去の話で、それを乗り越えたからこそ現在があるわけです。まして、私に何かできたかもと考えるなんて、おこがましいこと。でも、つい「そのとき、この人にはあのやり方が合っていたんじゃないかな」ということを思いついてしまうのです。おせっかいというか、職業病というか。

この経験は、コーチとして貴重なものでした。音声や記事の編集をしながら、ケーススタディのような感覚で「もしこのときの彼・彼女が自分のクライアントだったらどうするか」を考えるのです。難局に立った彼らが、なるべく遠回りせず、効率よく前に進めるように、どんな言葉をかけるか。また、結果的にゲストはそこを乗り越えたわけですから、その事実は今まさに学習に励んでいる受講生にとってモデルケースになります。インタビューで聞いたエピソードをコーチング・セッションで引用させてもらうこともあります。

実はこのインタビュー、スタート当初は10回シリーズのつもりでした。20回でおしまいにしようと思っていたこともありました。今は、お話をうかがってみたくなる、魅力的なゲストがいる限り、ゆるく続けていこうと思っています。


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