関西学院大学ロースクール入試民法A日程2021年


設問1 

(1)

①本問では、BがAをだましていることについて、Cが認識していたのであるから、詐欺による契約の取り消し(法96条2項、以下民法は法と省略する。)を主張して、甲の取り戻しを請求することが考えられる。

②96条2項の取り消しの要件は、㋐相手方の意思表示に関して第三者が詐欺を行ったこと㋑相手方が詐欺の事実について悪意又は有過失であったこと、である。

③本問では甲の価値は本当は350万円であるところ、BがAを騙してCに大幅に安い値段で売らせたので、Aの意思表示は第三者の詐欺によるものといえる。(㋐)また、Aが騙されていたことについてCは知っているので、Cは悪意である。(㋑)

④以上により、AはAC間の売買契約を取り消して甲を取り戻すことができる。

(2)

①AはCとの間で甲の売買契約を締結する際に、甲の価値について重大な勘違いをしていた。よって、契約の錯誤取消(法95条)を主張することが考えられる。

②95条の取消の要件は、㋐表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反すること。(1項2号)㋑錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものである(柱書)㋒事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていること。(2項)㋓表意者に重大な過失がないこと。(3項)である。

③本問を見ると、Aは甲の価値について、本当は350万円であるところを20万円と勘違いして50万円で売却したのであり、AC間の売買契約の基礎としていた事情についての認識が真実に反していた。(㋐)また、Aは甲の価値を本来の10分の1以下と認識していたので、取引上の社会通念に照らして重要な錯誤があったといえる。(㋑)AはCとの契約にあたり、甲は偽物であるので購入金額よりも大幅に安い金額で売ると伝えてあり、甲の価値について大幅な勘違いをしていたという事情が契約の基礎とされていることが表示されている。(㋒)Aは、骨董商であるBから甲の価値を判定されて信じ込んだものであるので、Aには重大な過失があったとはいえない。

④以上によりAは契約を取り消して、甲の返還を請求することができる。

設問2

①本問では、XはZに本件不動産を売却する権利を与えたうえで契約を締結しているので、原則として契約の効果はXに帰属する。(法99条1項)よってYとしては、Xの請求に従う必要は無いとして拒むことが考えられる。一方Xは、YはZが購入代金を、自己の借金を返済する目的に使用することを承知のうえでZの銀行口座に振り込んでいるのであるから、代理権の乱用(法107条)を主張して、契約の効果が自己に帰属しないと主張することが考えられる。

②107条の要件は、㋐代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をしたこと、㋑相手方が悪意又は有過失であったこと。である。

③XはZに、本件不動産を売却する権利を与えたうえで契約が締結されたので、代理権の範囲内の行為をしたといえる。また、Zは代金を自己の借金の返済に使用する目的を有していたので、自己の利益を図る目的で行為に及んだといえる。(㋐)そしてYはZから、代金はZの借金を返済する目的で受け取ることを聞かされていたので、Yは悪意であったといえる。(㋑)

④以上により、Xは本件不動産の売却契約は無権代理行為であると主張し、登記の抹消及び所有権の確認を主張することができる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?