眠りながら生きるためのいくつかのティップス

『cicago vol.01』(2012年 TOKYO ART BOOK FAIRにて販売)より再録

夢の話をしましょう。

「夢を見る」と普通に「見る」という言葉を使うけれども、そもそもどんな意味なのだろうか。「ゆめ」というのは「いめ」が転じたもので、イは寝、メは目のこと。眠っていながら見るもののことを意味するらしい。

「こんな夢を見た。」
ではじまるのは、夏目漱石の『夢十夜』。黒澤明の『夢』も同じ前置きから、夢の世界への扉が開かれる。夢というのは、その人の深層心理の現れなのか、はたまた外的刺激によるものなのか、それとも異界からのお達しなのか……。「夢」はおおくの哲学者、心理学者、画家、小説家たちを魅了し、「夢」に取り憑かれ、「夢」を再現したい、「夢」の世界に住みたい、とさまざまな創作を生み出してきた。
 私は夢を頻繁に見るほうではない。多分人並み。とはいえ、標準というのがどれくらいかわからないのでなんとも言えないけれど、まあ週に1、2回見られればいいほうだ。小さな頃は、何度も同じ住宅街をさまよったり、学校の教室に行くとチェッカーズのメンバーが級友になっていたり、父親を銃で殺したり(その父はまだ元気に生きているので逆夢だったのか)、家に帰ると兄が豚になっていたり(千と千尋!)、延々とほふく前進をしていたり、自分の笑い声で起きたことも。あ、あと、一応空も飛んだ。荒唐無稽という程ではないけれども、現実ではないことが起きる場所、それが夢。夢の内容から自分の深層心理なんて知りたいと思ったことはないが、自分がみたい夢を見られたら、とよく夢想した。

《ユメテレビ》
ドラえもんの道具のひとつ。他人の夢を見ることができるテレビ。緯度と経度を指定することで誰の夢でも見ることができる。同様の機能を持つマシーンに《ユメプロジェクター》がある。

 私は笑い声で起きたからよかったが、笑いながら死んだ人もいる。
 数年前にタイで男性が爆笑しながら死んだというニュースを聞いた。死因は心臓発作。しかし生前に健康状態に異常はなかったという。夫婦で寝ている時にドアをノックする音がした。その途端に旦那が爆笑し始めた。不審に思った妻がドアを開けに行くと誰もいない。妻は爆笑しながら寝ている旦那を揺り動かし起こそうとしたが、その時すでに息を引き取っていたのだそうだ。笑いながら起きたという話を友人にした時に、なんておめでたい人だと笑われたが、この話を聞いて、まったく笑い事じゃないし、むしろ背筋がぞっとした。

《夢見工房》
タカラから発売された、見たい夢が見られるマシーン。まずは、見たい夢を連想させる写真を正面のパネルに貼り付けて寝る前にイメージを高める。そして眠りにつくわけだ。「芳香剤発生機能」でリラクゼーション効果のあるアロマが出て快適な夢を見られる可能性を上げたり、タイマーつきのBGM再生機能で「恋愛」「勇気」「冒険」といったテーマソングを鳴らしてくれる。

 笑いながら死んだ人は、どんな夢を見ていたのだろうか。私が自分が見る「夢」を初めて意識したのは、高校の倫理の授業。荘子だ。有名過ぎる話「胡蝶の夢」である。

以前のこと、わたし荘周は夢の中で胡蝶となった。
喜々として胡蝶になりきっていた。
自分でも楽しくて心ゆくばかりにひらひらと舞っていた。
荘周であることは全く念頭になかった。はっと目が覚めると、
これはしたり、荘周ではないか。
ところで、荘周である私が夢の中で胡蝶となったのか、
自分は実は胡蝶であって、いま夢を見て荘周となっているのか、
いずれが本当か私にはわからない。
荘周と胡蝶とには確かに、形の上では区別があるはずだ。
しかし主体としての自分には変わりは無く、これが物の変化というものである。
(ウィキペディア「胡蝶の夢」の訳文より)

 ユングは「夢とは、夢をみる人が舞台、俳優、プロンプター、演出家、作者、観桜、批評家であるような劇場である」と述べ、夢の内容すべては本人の心の状況が投影されたものと考えた。
 フロイトは「夢は実生活で抑圧された願望の表れである」と言った。
 荘子が「胡蝶の夢」で語っているのは、蝶も荘周も、どちらも正だということ。「夢が現実なのか、現実が夢なのか。いや、そんなのはどっちでもよいことだ」という考え方にいたく納得した。そう、夢が現実でも現実が夢でもどっちでもよいのだと。

《夢はしご》
ドラえもんの道具。夢と夢の間を行き来できるはしご。これを使うと自分の夢の中から他人の夢の中に入り込んだり、逆に他人を自分の夢の中に誘い込んだりできる。他人を誘い込んだ場合は、自分の夢なので他人を思いのままに操ることができる。

「夢とうつつが結びつけば人生は完璧になる」
 これは、チェコのシュルレアリスト、ヤン・シュヴァンクマイエルが映画『サヴァイヴィング・ライフ ~夢は第二の人生~』で引用した、クリストフ・リヒテンベルクの言葉だ。この映画は、主人公のエフジェンが現実の文句ばかり言う妻ミラダと夢で出会った美女エフジェニエの間で揺れ、だんだんと夢の世界の比重が大きくなっていく。ミシェル・ゴンドリー監督の『恋愛睡眠のススメ』のガエル・ガルシア・ベルナル扮する主人公のステファンも似たような設定。恋した相手のステファニー(シャルロット・ゲンスブール)との仲がうまくいかず、夢の中で自由自在に彼女とのデートを楽しむのだ。どちらの主人公も、現実世界では冴えないゆえ、どんどん夢に逃避していき、ずぶずぶずぶとあちらの世界にハマっていってしまう。(余談になるが、『サヴァイヴィング・ライフ』と『恋愛睡眠のすすめ』、夢の中で恋愛するという設定も似ているが主人公とその恋人と名前の付け方も酷似している。エフジェンとエフジェニエ、ステファンとステファニー。これは、現実にはあり得ないカップルであることを暗喩しているのだろうか。はたまた単なる偶然なのか)
 夢の世界と現実の世界を自由に行き来するという設定は、小説や映画でよく用いられるシチュエーションである。現実の生活でうんざりしていても、夢の世界に逃避できる。そこでバランスを取って現実世界に戻ってくる。何の問題もなく戻ってこられるのであればいいのだが、大抵はそこでバランスを欠いて、現実世界に戻るためにあれやこれやしなければならなくなる。果たして、現実世界に戻ってきたほうがいいのか、そうでないほうがいいのか、それは観客の判断に委ねられる。

《睡眠学習機》
1970年代に発売された、睡眠学習用の枕。「SLシータップDX」(三井企画)という商品で、タイマー付きのスピーカが枕に仕込まれており、暗記したい内容をテープに吹き込んだラジカセを枕につなぎ寝ている間に聞くという代物。レム睡眠時に記憶を脳に定着させるという触れ込みだったそうだが、効果のほどは定かではない。

 「思い通りの夢を見る」のは物語だけの世界ではない。どうすれば自分の思い描いた通りの夢を見ることができるかを真剣に研究してきた人がいる。明晰夢研究のパイオニア、エルヴェ・ド・サン=ドニ侯爵だ。
 一八二二年パリに生まれたエルヴェは、孤独な幼年時代を過ごし、十四歳から夢を記録しはじめる。彼が匿名で発表したという謎の本『夢の操縦法』で、夢についての分析や自身の体験を通した夢の操り方を記載している。彼の理論は「夢のない眠りはない」「夢のあらゆる像は、現実の生活から集められた記憶の陰画紙(断片)から生まれる、言い換えれば、われわれはかつて見たことのあるものしか夢に見ない」「眠りの中で考えよ、それが夢となって現れる」というもの。
 この3つの眠りの原則を元に、エルヴェはどうすれば自分が呼び起こしたい記憶にいち早くたどり着けるかを模索し、即座に快感を味わえる夢を見る方法を以下のように結論づけた。
1,特殊な感覚とある種の思考(あらゆる精神現象)との相関関係を人工的に、それも即座に恒常的に生み出すことに成功するなら、ある感覚が刺激されるたびに、この感覚に連動した思考が呼び起こされ、同じ夢が現れるはずである。
2,夢においては、われわれの思考が夢になって現れるということ、つまり、眠っている者が眠りの仲でその器官に影響を与え、ある感覚を喚起できるという事実は、触発された感覚に連動する主題を夢にできる可能性があるという結論に至る。
 要はパブロフの犬のように、ある記憶を引き出すための外的刺激の特定条件を自分の中に刷り込み、睡眠中に無作為に同じ環境に自らを置けば、その記憶が夢の中で引き起こされるのではないかということ。

エルヴェの実験①
香水店にいって、最も厳選された香水をひと壜購入し、休暇に出る。滞在中はこの香水を染み込ませたハンカチを必ずポケットに入れて歩く。滞在期間が終わって帰る前に香水の壜はしっかりと蓋をする。数ヶ月放置した後に、熟睡している時に、無作為に執事がこの香水を数滴枕に垂らす。
結果①
滞在での記憶を鮮明に思い出せるような夢を見ることに成功した。その後、別の記憶を植え付ける際に違う匂いを使い、2種の香水を融合させると夢が融合するのかという実験も行われたが。それも成功に至った。

エルヴェの実験②
社交界にて。夢に見てみたい二人の女性と踊るたびに、著しく独創的なワルツ二曲を演奏してもらい、それぞれの女性は決まった曲でしか踊らないようにして曲と女性を自分の中に刷り込む。次にオルゴール職人のところへ行きをの二曲のオルゴールをつくる。目覚まし時計代わりにオルゴールを鳴らすように改良をして就寝。
結果②
最初の晩は失敗したが、次の日以降は成功。夢に登場する女性は必ずしも舞踏会にいるわけではなく、さまざまなシチュエーションで登場することがわかった。

 これらの実験からエルヴェは、「自分が夢を見ている状態を意識する者は、つねに支離滅裂な夢の展開を先導し、調整し、変えることができる」と述べ、夢の中で意識を持って行動を行った。

エルヴェの実験③
天気のよい日に馬に乗って散策をする夢を見ていた時に、エルヴェは自分が油mを見ていることがわかり、夢の中で行動を起こす。「さて、この馬は幻覚でしかなく、この田園有名も幻覚にすぎない」と独白した。
結果③
独白をすることで、自分が夢を見ていることに意識的になり、馬の操作をすることに成功したのだ。

 こんな要領で、五感と自らの肉体を駆使しさまざまな実験を行ったエルヴェは、眠りの幻想を支配するための三条件を以下のように結論づけた。
1,眠っているときに、眠っている意識を持つこと。これは、夢の日記をつけるだけで、かなり短期間で習慣となる。
2,ある感覚を思い出して一定の記憶と結びつけること。睡眠中にこの感覚が現れたとき、われわれが結びつけた思考=夢を夢の中に導入するためである。
3,したがって、思考=夢が、夢の舞台をつくり、思考の原則に基づいて展開していくように(夢を見ていることを知るのに欠かせない)意志を働かせるとき、それが夢を操縦するということである。

《官能的な夢を見る方法》
野性の鴨の卵黄に溶かしたテレピン油二ドラクマ、フラカルボールの下痢止め一ドラクマ半、粉末にした赤いバラ二十四分の一オンス、山羊またはウマの乳八オンス、カキドオシ一握り、ハゴロモグサまたはエーデルワイス、オオバコまたはローマカミツレをそれぞれその半分、アメリカオトギリソウの穂先四つまみ、鹿の角の削ったもの十二分の一オンス、オオカミの陰茎三ドラクマ、鯨の陰茎六本を用意する。たっぷりと用意したブランデーで、このすべてを煮込む。この液一オンスと塩化アンモニアの精分六ドラクマを珊瑚とヒエンソウの濾過液八オンスの中に加える。この煎薬を陶の器に入れ、低温の場所に三ヶ月ねかせておく。しばらくしてそれをマムジー酒三パントに入れ、酒がなくなるまで蒸留する。この酒精を密閉された瓶に入れ、夏の間中、太陽の温かみと光線を吸収できるように天気のよい昼の前後三時間空中につるしておく。普通の水にそれを三滴たらし、それをあたためて、寝る前に足や手、頭や胃を洗う。(『夢によって幸福になる方法、すなわち、見たい夢を見る法』より)

 現代の明晰夢の研究者にスティーヴン・ラバージがいる。彼は、スタンフォード大学の神経生理学者で、一九八五年に『明晰夢─夢見の技法』という著書を出し、記憶による明晰夢誘導法(MILD=Mnemonic Induction of Lucid Dreams)を推奨している。明晰夢は、夢と各政治の生活のよき循環を助け、生活の質を向上させると主張している。その方法は以下である。
①早朝、自然に夢から覚めたら、記憶するまで何度も夢を思い返してたどる。
②次に、ベッドに横になったまま眠りへと戻りながら、「次に夢を見るとき、私は、自分が夢を見ていると認識することを思い出したい」と自分に言い聞かせる。
③リハーサルとして、夢の中に戻ったときの自分自身を視覚化する。ただし今度は、実際に夢を見ていると認識している自分を想像する。
④自分の意図がはっきりしたと感じるか、寝入ってしまうまで、②と③の手順を繰り返す。
 もしその夢が悪夢だったとしたら、その状況を見据えて意識的に恐怖に打ち克つよう方向づける、とラバージは言う。夢に現れる悪夢というのは、現実における不安や葛藤である。故に、夢の中でそれを克服できれば、覚醒時の精神も成長するというわけだ。
 自己実現のための明晰夢をラバージは強く主張するが、明晰夢の有用性について問われ研究費がつかず、ラバージはスタンフォードを去る。その後セミナー等で研究を続けているというが、アカデミズムの中でラバージは変わり者扱いをされているということも事実である。

《ドリームキャッチャー》
ネイティブアメリカンに伝わる輪を元にした装飾品。粗い編み目が輪の中に組み込まれ、羽根やビーズで飾られている。「悪夢は網目に引っかかったまま夜明けと共に消え去り、良い夢だけが網目から羽を伝わって降りてきて眠っている人のもとに入る」という言い伝えがある。

 変わり者の学者は、ラバージだけではない。とりわけ夢研究に変わり者の学者が多いわけではないと思うが、「マラヤの夢理論」を唱えた人類学者のキルトン・スチュアートも相当風変わりだったようだ。マレー半島に住む、夢が生活の中心にあるというセノイ族について書いた論文がすべて彼の妄想の夢理論であったというのだ。
 スチュアートの活動と発言については、ウィリアム・ドムホフが書いた『夢の秘法 セノイの夢理論とユートピア』に詳しい。この夢理論によると、夢を他者と共有することで、創造性を強化し、心の健康を改善し、おまけに、より平和で協力的な文化を生み出すことができる。さらにこうした利益をもたらすために、夢そのものを変型し、コントロールできる。スチュワート曰く「セノイ族にとって、夢は知的および社会的興味の中心であり、それによって暴力犯罪や破壊的な経済対立の問題を解決し、凶器や神経症や心因性の病いをほとんどなくしてしまうのである」という。
 セノイ族の生活は夢とともにあると言っても過言ではない。朝彼らは家族で夢会議を行う。「セノイの父親は、朝食のとき、子どもに夢を見たかどうかを尋ね、夢を見たことを褒め、その夢の意義について議論をする」という。そして、共同体の中で夢について再度議論し、夢で起きた問題について語り合い解決法を探る。セノイ族が視たい夢を見る時の三つの原則がある。
1,夢の中では、つねに危険に立ち向かい、制服せよ。もし動物がジャングルからぬっと出てきたら、向かっていけ。もし誰かが攻撃をしかけてきたら、戦え。
2,夢の中では、つねに快楽的な経験を得る方向に向かえ。もし夢の中で誰かに魅惑されたなら、それに身をまかせて、自由に性的な交渉をもつがよい。もし空を飛んだり水泳をしたりして快感を感ずるなら、リラックスしてその気分を堪能せよ。
3,夢を好ましい結論へ導き、そこから創造的な産物を引き出せ。この点でもっとも好ましいのは、夢に登場した者から、詩、歌、踊り、装飾品、絵のような贈り物をもらうことである。
 セノイ族の夢見の技法は、それ自体の信憑性もあるが、真実だったとしても、ストレスフルな社会生活を営む私たちがそのまま適用できるわけではないだろう。しかし、人びとの精神の安定や質的向上のために夢を共同体で共有し、夢見が機能的に用いられるとしたら、それは素晴らしいことだと思う。

《夢まくら》
ドラえもんの道具。この枕で寝て見た夢は必ず正夢となり、夢の出来事が現実にも起きる。どんな非現実的な夢でも実現する。

 キルトン・スチュアートの研究について、「否定する根拠はない」といっているのは、宗教学者の中沢新一である。一九九一年に発行された「imago」の河合隼雄責任編集「夢」の中で、河合隼雄と「汎神論風夢理論のこね方」という非常に興味深い対談を行っている。

中沢 僕の個人的な体験から言うと、チベットの夢の理論とか実践などを見ていると、まんざらこれはキルトン・スチュアートの作り話ではないだろうという気がするんです。精神臨床をやっている方などは、すごくリアリティを感じるのではないでしょうか。
河合 そう思いますね。私も、まんざら嘘ではないというよりも、そうだろうなという感じがします。チベットでは、夢は相当大事にするんですか。

……と、中沢によるチベットの「夢」の話がはじまるので、簡単に抜粋したい。
 メディテーションの体系の中に「夢」の主題が組み込まれており、夢というものがどういう現象なのかを勉強する。そして、最初に眠りを浅くして夢をたくさん見る訓練をする。それができるようになったところで、呼吸法と観想法を塚って、夢を消していく。その他に、二人で向き合って相手の夢に入る訓練や、二人で共同の夢を見る訓練などもあるという。
 ここで大事なのが、チベットの僧侶たちは夢と現実を行ったり来たりすることと並行して、夢と現実の関係をきちんと把握し、現実に戻ってくること、である。

《夢たしかめ機》
大長編ドラえもんの作品によく登場する道具。使用者をつねって、現在発生している事象が夢か現実かを確かめられる機械。キャタピラ状になった機動部の上に、白い手のような形になったものが付いている。その手につねられて痛ければ現実である、という物質的なもので、精神面に作用するものではない。

 そろそろ紙幅が尽きてきたので、夢の世界から現実へ戻って、最新の「夢」動向を少し。
 夢を映像化するという技術が研究されているという。これは、UCバークレー研究者グループによるもので、実際には能の活動を映像化するという実験だ。事前に数枚の映像や写真を見せてその時の能の血流の流れの変化を見地して映像化するというもの。結果としては、わりといい精度で像が描けている。ドラえもんの《ユメテレビ》のように、眠っている間の頭の中を他人に覗かれてしまう日はまだ先だろうが、遠くはないのかもしれない。
 また、明晰夢とまではいかないかもしれないが、夢見アプリも探してみたらざくざく出てきた。似たようなものが多いのでいくつかピックアップして紹介する。ひとつは《ユメミ~ル》。これは使い方を選んで起きる時間を指定するだけ。あとはiPhoneを枕元に置いて置くとレム睡眠を感知して、選んだ夢にちなんだ音を再生するというもの。「空を飛ぶ夢」というテーマで使ってみたが、音が鳴った瞬間に起きてしまい断念してしまった。英ハートフォードシャー大学の心理学者リチャード・ワイズマンが実験段階だという《Dream on!》も似た仕組みのアプリだ。「熱帯雨林でリラックス」とか「明晰夢体験」といった面白サウンドスケープは有料でDLできる。そんなケチな!という方には《Dream ×Dream》がよいだろう。いくつか基本で音源が用意されている他にiTuneやDropboxからmp3を読み込めるので、自分が好きな音楽を睡眠中に鳴らせるのだ。
 明晰夢を見るためのアイマスクなんていうものも。《Remee The REM enhancing Lucid Dreaming Mask》というアイマスク型のマシンは、裏側(目に充てる側)にLEDが仕込まれており、レム睡眠時の急速眼球運動を感知して、LEDが特定のパターンで明滅するというもの。睡眠中にそれに気づいたらこっちのもの、自分の意志で夢をコントロールできるというわけだ。実際に試してみたいところだが、商品到着が間に合わないので、これはまた別の機会にしようと思う。

では、皆さん。枕元にペンとノートを持って、いい夢を。

参考文献
『imago 夢』青土社
『古代人と夢』西郷信綱/平凡社ライブラリー
『明晰夢 夢見の技法』スティーヴン・ラバージ 大林正博訳/春秋社
『夢の本』J.Lボルヘス 堀内研二訳/国書刊行会
『夢の操縦法』エルヴェ・ド・サン=ドニ侯爵 立木鷹志訳/国書刊行会
『夢の技法 セノイの夢理論とユートピア』ウィリアム・ドムホフ 奥出直人、富山太佳夫訳/岩波書店

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