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【劇場公開映画の作り方】HIPHOP映画「唾と蜜」ウラ話<その10:リアルクラブナイト①>


🔥🔥🔥映画「唾と蜜」制作秘話🔥🔥🔥

⚡️⚡️⚡️EPISODE10(リアルクラブナイト①)⚡️⚡️⚡️
💓なぜクラブシーンがリアルなのか???💓

前回は、美術館シーンの苦労話について。

今回はやっぱり一番大変だったクラブシーンについて。ご紹介するのは、はじめて主人公がクラブに足を踏み入れるシーンの撮影について。この日は、リハーサルも含めて朝から晩まで神戸のとあるクラブを貸し切りにしていた。東京からSh0h君、当時まだ大阪に住んでいたEIN君を呼び寄せ、他のHIPHOPアーティストも大集合!クラブオーナー兼・プッシャー役のコワモテJさんももちろん朝からリハーサル。しかし、Jさんが見当たらない。その時、Jさんから電話が「もうすぐ着きますわ!・・・お、そこ真っ直ぐ」とか話していると、クラブ裏側にタクシーが到着。後部座席には、もはやアレにしかみえない黒づくめのJさん。大阪方面からなので、電車で来ると思っていたらタクシーで登場。

「すんませんね、遅れて。なんか途中で道分からん言うて」
「えっ!大阪からタクシーで?遠くなかったですか??」
「僕、電車嫌いやねん」(自分のこと僕とか言う)

「・・・はぁ」
「ほな、おおおきに。」と運転手さんにゴツイお財布から運賃を支払って出てくるサングラス姿のJさんは、もうすでに配役のチバにしか見えなかった。もうタクシーの運転手さんも、Jさんが何者か全く分からないので道を間違えてしまったことに恐縮しっぱなし。

ちょっとポカンとした僕らだったが、さぁ気を取り直して、撮影の準備だ!!!午前中は楽屋シーン。楽屋の中を良い感じに散らかしまくる!!飲みかけのコーラー、ビール、タバコの吸い殻、ポテチ、なんか分からんゴミとか!よしっ!良い感じっ!ここでは、イケナイものを巻いている横で、チバの側近役として登場するラッパーさんが誰かに電話で怒っているシーン(この人にだけ僕はビビってずっと「さん」付けしている!よっ、頑張れ小心者!)。

そう、この人とは、いまや神戸HIPHOPシーンの中心人物といえるラッパー阿修羅MICさん。実は、クラブへの交渉も、阿修羅さんと一緒に回ったりと、撮影前から色々とお世話になっている。見た目はJさんバリにコワモテ(若い頃のJさんに結構似てる)だし、その昔は神戸のストリートにこの人アリ!(いまはラップ一筋!!)といわれるぐらい男の世界で生きてきた人なので、オーラがバッリバリなのである!!
でも友達や仲間には、男気の塊みたいな人で、めちゃめちゃ責任感が強くて優しい。これ、怖いからお世辞で言ってるとかじゃなく、本当に。実際、クランクアップ後に大阪で追加撮影が必要になった時とかも、自分の出演出番はまったくないのにわざわざ神戸からふと急に現れたりする。
「えっ!?今日出番全くないですよ??」
「ひっさしぶりに監督の顔、見にきましたよ!」
とかこちらが照れそうになることをサラッとしたりする。まぁ、ちょっと一言では語れないし、だいぶ年下だけど、「アニキ」って呼ばせてくださいって思う。今も僕はちょくちょく彼のLIVEに遊びに行かせてもらっている。

閑話休題。

で、この阿修羅MICさんが誰かに電話で怒っているシーンの話。もちろん、映画で演技とは初体験。電話してるフリとかって、やってみたら分かるけど、誰かと普通に会話するよりも“間”が難しい。そこで、楽屋から出たところにいる後輩のラッパーの人と電話で喋ることに。「うん、これなら良いかな?」と思っていると阿修羅さんから、「監督、雰囲気でないですね。ほんまに電話して良いですか?」と提案が。「はぁ、やってみましょか?」
そして、普通にいまちょっと直面しているらしいちょいトラブルの電話をしはじめる阿修羅さん。電話のトーンが激しくなる、普通に電話越しになにやら怒り始める阿修羅さん。
よしっ!「回せ回せ!!」とカメラマンとまわりの役者に手振りで合図を送り撮影開始!!阿修羅さんが電話中の間のテイク2ぐらいで、撮りきった!!劇中の「・・・それオマエ、トコトンの話なるでな」というセリフはリアルに怒っています。もちろん会話内容の収録は、ご本人の承諾済み!というか、ご本人からの提案!ということで、良い画が撮れた!!

で、予告編にもある、Jさんが机をバーーーンッッッ!!!と蹴り上げるシーン。これ、1発勝負でアル。だって、ジュースもビールも零れるし、この机の上のゴミとかの配置をもういちど寸分なく元通りにするなんて無理だし、変わると画が繋がらなくなる。Jさんが、机の配置をする前に蹴る練習をしたいというので、上に何も載せない状態でやってみることに。僕は机が向かいの壁に当たって傷つかないように、机の前方に立つ。
「じゃあJさん、一度軽く練習してみましょうか?」
バァーーーンッッッッッッッ!!!!!!!!
「痛ぁーーーーーーーっ!!!」
Jさんがまんきんの力で蹴ってきて、机が猛スピードで僕の右脛(弁慶のなきどころ)に直撃した。
出演者一同、大爆笑!!!阿修羅君とか一番ウケてる。もう、「君」付けで良い。
「監督、そんなとこ立ってたらアカンやん!」
いやいや、大げさな。と思うかもですが、ほんまに叫ぶぐらい痛かったし、血でたし!
「もう、練習せんでヨシっ!!!」と笑う皆を横目に、僕は準備を始めた。で、本番は僕の名誉の負傷の甲斐あり、一発OK!グラスがめっちゃエエ感じに巻き上がり、みんなのその後のヘコんだ表情とかもバッチリ!!
その後も、外人アーティストととの絡みなど、楽屋シーンも、一通り良い感じに撮影完了!!

ふぅーっ!!まだ午前中だぜ!!

お昼、お弁当や!!!!若い撮影スタッフの子と2人で、坂の下の中華料理屋さんまで、20〜30人分ぐらいのお弁当を取りに走る!!お腹すいた!!!まずはみんなに好きなのを選んでもらって。。。でも、俺、酢豚食べたいな。。。と思ってたら、酢豚1個残った!!よしっ!!
「はぁー!みんなおつかれさま!!1時間弱ですけど休憩してください!!」僕も、バーカウンター近くの空いたスペースに腰をおろして、弁当の蓋を開けるが、セロハンテープがくっついてたのか、上手く開かない。「うんっ!」と力を入れると、開いたとたんに見事に真反対なりに床にそのまま落下する弁当。中身が全部、クラブの黒ずんだ床の上に散乱。

「あぁーーーーーっっっっっっっ!!!!!」

僕の本気の叫び声に、みんなが振り向く。一同、またまた爆笑!!ヤバーイッ!とか良いながら写メを撮る輩まで。
僕は3秒ルールを思い出して、全部拾って、箱に入れる。予算も限られてるし、また買いに行く時間もないし、なにより酢豚食べたいし!ということで、気合いを入れて、全部完食した。まだ午前中、この日は日付が変わるまで撮影。栄養をつけておかないと、夜中までもたない!!

はぁ、書いててなんか疲れてきた!!!ここで書きたかったのはこれじゃなくて、クラブのLIVEシーンでの奇跡的なこと。だったのに、脱線しすぎた。今日はここまで!!

⚡️⚡️⚡️EPISODE11(リアルクラブナイト②)⚡️⚡️⚡️


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