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【劇場公開映画の作り方】HIPHOP映画「唾と蜜」ウラ話<その11:リアルクラブナイト②>

🔥🔥🔥映画「唾と蜜」制作秘話🔥🔥🔥
⚡️⚡️⚡️EPISODE11(リアルクラブナイト②)⚡️⚡️⚡️
💓なぜクラブシーンがリアルなのか???💓

前回は、僕がクラブのフロアにひっくり返した酢豚をたいらげたところまで。

午前中に楽屋シーンもおおかた撮りきり、午後からはステージまわりのリハーサルや、受付まわりの撮影などなど、1日で撮らなきゃいけないカットは山ほどある。それらを着々と撮りながらも、ある一つのことが頭の片隅にはずっとあった。夜7時頃からリハをして8時から撮りはじめる予定の、観客を入れたシーンだ。予告編でも使っているあのシーンである。吉幸がはじめてクラブに足を踏み入れ、その騒然とした、ギラギラした、音の洪水の中に身を委ねるあの感じを表現するには、クラブがギュウギュウになるほどの観客が必要だ。

とうに7時を過ぎているが、観客役で来てくれているエキストラは3名だけ。観客の誘導ほかで撮影の手伝いに来てくれていたM女史が僕に駆け寄る「監督、ヤバイですよ。まだ、3人です。」観客がいないと本番が撮れない。この時の僕はどんな心境だったかというと、意外と落ち着いていた。

クラブを丸1日貸し切るにもお金は結構かかっているし、今日は出演者総出のシーンだし、機材やら何やらで1日で20万円近くはかかっている一番大事なシーン。でも、これまでの経験上、もうなんとかなるときゃなるし、なんともならんもんはならん(そのままだが)と思っていた。その日までに、できることは全部やった。

観客は、フィルムオフィスや、僕の知り合いからも声をかけてはいたものの、メインで考えていたのは、阿修羅MIC君のファンや友人たち。阿修羅君は、普段のLIVEでいつも100人以上は集めるので、この日も彼がミニLIVEを実際に行うのでそこにリアルな客を動員するという計画で、すべてを任せていた。そして、7時から8時へ。

まだ、観客は3人。さすがにもう他にリハーサルをするカットもなく、クラブを借りているのは10時まで。そして、その後は終電までに撮影現場でを変えて、別カットの撮影がある。

「あの、、、観客の方、そろそろどうでしょうか???」
と恐る恐る聞く僕に、阿修羅君もさすがに少し険しい表情。
「声はかけてるんスよ。ただ、マズイことに今日たまたま別のハコで2つでかいイベントが入ってもて、そっちに客が流れてるみたいスね。俺いまから声掛けまくるんで、もうちょい待ってもらって良いスか?」
「分かりました」もう、阿修羅君に頼るしかない。

クラブ内の不穏な空気に、Sh0h君、EIN君、TAIJIも、今から来れそうな知り合いやファンを探してくれるも、「いますぐ神戸のクラブに撮影のために来て欲しい。」と言って来られる人など、そういない。

阿修羅君は、クラブのフロアの真ん中にヤンキー座りをしながら、ひたすら電話をかけてくれた。
「おぅどこ?今日って言うたよな、ダッシュ。しばくぞ」
「今日や。おう、早よ来い。コ◯スぞ。」
「せや、俺や今すぐや。 走れ。」・・マジでこんな感じ。

30分もしないウチに、クラブにタトゥーバリバリの人やらなにらイカツいメンツが100人以上、一気に押し寄せた!!!
唖然とするスタッフ一同。熱気であふれかえるクラブ。

阿修羅君が僕の耳元で囁く。
「監督、今すぐバーカン(バーカウンター)開けて酒出してください。コイツら今は集まってますけど、別のイベントに行きたいハズなんで、もって30分から1時間ス。」
「分かりましたっっっ!!!!!」

ステージに駆け上がる、阿修羅君。
「みんな今日はほんまにありがとう!俺もLIVEするしや、色んなラッパーも来とるし。今日は映画の撮影やねんけど、ここからみんなでKOBEをあげて行って、オモロイこともっとしていこうや!!」

一気に盛りがる観客。正直、僕は阿修羅君はコワイ人だと思っていた。。。が、観客と阿修羅君との「阿修羅ー!かっこつけんなぁ!www」「ヤカマシイ!しばくぞ!!w」みたいな掛け合いをみて、めちゃくちゃ地元に愛されているラッパーであることを実感した。本当に人望がないと、30分で100人以上は集まらない。

僕も慌てて駆け上がる「監督の牧です、みなさまどうぞよろしくお願いします!!じゃあ、本番行こう!!もう、回しながら!!お客さんは、普通に楽しんでください!!」

撮影のためフロア後方に駆けて行った際、いままでの流れを見守っていたフィルムオフィス新人のAさんが呟いた。
「牧さん、渦が見えます」
「えっ!?渦?」
「大きな渦がこのクラブの中にあって、いますべてがその波に乗って流れているのが私には見えます」
「なるほど。。。」と、笑いそうなるのを堪えながら神妙な面持ちで僕はしっかりと頷いた。
それぐらいみんな感慨に耽っていたし、高揚していた。

ふぅー、今日も「生の、今を、LIVEで切り取った良い画」が撮れるぜーっ!!!と安心する暇もなく、客が離れ始める10時ごろまで繰り返し撮り、そこからすぐに移動して、別カットを終電まで。キャストを慌てて帰して、後片付け。

今週も乗り切った。来週は何の撮影やったけ。。。
コーヒーを飲みながら、見えないゴールを追いかけるように深夜の2号線に車を走らせた。


⚡️⚡️⚡️EPISODE12(警察に通報される???)⚡️⚡️⚡️


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