閻魔様。さっきはバカと言ってしまってごめんなさい

子供の頃「地獄の閻魔様」の存在を信じていて
悪い事をすると「地獄行き」というのも知っていた。

「閻魔様はどこからでも自分が悪さをしていないか見ている」らしい。

わたしは閻魔様が怖くなって来た。
今の所自分は大丈夫だろうか?もうすでに地獄行きなのだろうか。

「怖くなんかない」と思い込むようにして恐怖心を消し去るというのがある。

わたしは怖さを消し去るために閻魔様を否定することにした。

ただ閻魔様はどこから見ているのだろう。


とりあえず四方八方に対して「怖くなんかねーよ!バーカ!」と「あっかんべぇ」をやっておいた。

しばらくしてわたしは大変なことをしてしまったことに気がついた。
今の行為が閻魔様の逆鱗に触れたらどうしよう。

地獄に行ったら大変だ。

石を積んでも積んでも鬼に崩される。

業火に焼かれた車輪に身体をくくられて鬼に回される

誰の血かわからない河を浮き輪なしで泳がされる

わたしは謝ることにした。

「さっきは閻魔様の事をバカと言ってしまってごめんなさい」

言った数と方向だけ謝った。

しまいには「発言した数より多く謝れば地獄に行く確率が減るかも知れない」と思い、

押し入れを開けて「閻魔様。さっきはバカと言ってしまってごめんなさい」

布団と布団の間をめくって「閻魔様。さっきはバカと言ってしまってごめんなさい」

ポットを開けてお湯に向かって「閻魔様。さっきはバカと言ってしまってごめんなさい」

冷蔵庫開けて昨日の残り物に向かって「閻魔様。さっきはバカと言ってしまってごめんなさい」

タンスをちょっとどかしてその奥の方に顔を突っ込んで「閻魔様。さっきはバカと言ってしまってごめんなさい」

ゴキブリホイホイの屋根を開けて「閻魔様。さっきはバカと言ってしまってごめんなさい」

閻魔様はひょっとしたら母親に化けているかもしれない。

閻魔様。

ん?

「閻魔様。さっきはバカと言ってしまってごめんなさい」

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