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成人映画館

20歳の東京で仕事をしていた時だ
僕は好奇心で全てのものが美しく新鮮に感じていた
スカイツリーって大きいなぁ浅草寺って赤いなぁ
上野に行ったときの話である
上野でアメ横、国立博物館と一般的な観光をしていた
不忍池の周りを歩いてた時だ
「成人映画 オークラ劇場」という怪しげな看板があった
好奇心スイッチが急に反応した。

入場料が1500円、何事も経験がモットーの僕
チケットを握りしめ昭和のレトロな内装の
映画館に入り込んだ…
「1階と2階があるのか」僕は1階の座席に座ることにした

「なんだ?」
座席に座っているお客が僕のことをジロジロ見ている
おそらく還暦は迎えたであろうおじさま達が見てくる
元気なもんだなぁと感心すらしていまう

前の席が空いていたので座った
すると映画を見始めて間もなく
女性が僕の隣に座ってきた
すごいミニスカートを履いた女性だった
「うわぁ成人映画館でミニスカート女子とか…」
一瞬、ここは天国かと思ったのもつかの間であった

がっし…

太ももを鷲掴みされた
?が脳裏に走る…
その答えを掴んだ相手の顔を見て気付いた

え、めっちゃ男やん、むしろ男やん。

女装をした男、この成人映画館は
同性愛者の社交の場、通称ハッテン場という場所の
メッカみたいなものだったのだ
何も知らずに同性愛者の出会いの場に
飛び込んだウブな東野20歳、震えることしかできない

やばい…手を掴まれた。

特別職国家公務員自衛官として
国を防衛する訓練はしてきた
自分を守ることをずっと怠ってきたのだ
逃げろ俺、俺逃げろぉぉ!!!

走った、映画館を走った
出口に大きな女性が手を広げて出口を塞いでいる

いや、女じゃない…

やばい計画的な行動、そして組織的
とっさにトイレに行きたい素振りを見せた
「トイレ、やばいトイレ」

何とかトイレに入った助かった
いや、むしろ最悪の状況を作ったのだ

同性愛者の交流にトイレは頻繁に使われる
焦って大の方に入って鍵を締めた
ヒールの音が響く、二人入ってきた

やばい、襲われる

焦った、お腹が痛くなった
考えた、考えた、考えつかない…
そして本能的に僕がとった行動は

「#@¥%@&@々仝?`ゝ−`〜・:!!!!!」

そう奇声を発するという野生的手段をとった
体感で約5分間叫んだ、ドアを開けると
映画館の管理人のおばちゃんがポツンと立っていた

「アンタも色々あるんだね」そう言って去っていった

僕は何故か泣いた。

これが僕が同性愛者に襲われかけた話だ。

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