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Parker「インジェニュイティ」の雑感

フランスの高級筆記具ブランド「パーカー」が打ち出した「第五の筆記具」【インジェニュイティ】を購入してしばらくガシガシ使って、なんとなーくいいところ・微妙なところが見えてきたのでレビューっぽいものです。

久しぶりに文具部活動です!
万年筆との差別化だとか、コスト面だとか、だいぶ真面目に考えてみましたが、結局なんかよくわからなくなってきたのでいつものごとくライトに書きます。
文具ライトユーザーなので٩( 'ω' )و

  
では、早速、インジェニュイティとはなにか、から行こうと思います。

公式サイトによると……

パーカー インジェニュイティ独自の「パーカー 5th テクノロジー」を採用した「パーカーインジェニュイティ」は、書き手の筆記スタイルに呼応して、滑らかで快適な書き心地を実現します。

次世代のペンと謳われる「インジェニュイティ」

(……何回も打ち間違えるし、言いづらいし、よくわかんないし、すごいですね、インジェニュイティ)

ちなみに、インジェニュイティは新世代は新世代でも第5世代とのことですが、第1世代は万年筆、第2世代は油性ボールペン、第3世代は水性ローラーボール、第4はペンシルだそうです。
シャープペンシルは第4なんですねー。思ったより最近のご登場だった……

というわけで、第5世代は「これまでの筆記具の長所を併せ持ったもの」として作られたらしいです。
長所を併せ持った……うん、そうだね。
……そうかな?

ちなみに、見た目はこんな感じですよー。

ペン先はどことなく万年筆風ですが、このフード(覆い)はほぼ飾り。
 

      

【個人的雑感】

『いいところ』

・インクの乾きが早い。
 これがいい。とにかくいい。さっと書いてすぐ触ってもインクが擦れない。
 メモを書くときの普段使いが、職場では水性のボールペン、家では水性インクの万年筆なのですが、このふたつ、書いてすぐちょっとでも触っちゃうとよく伸びる……
 汚い文字+ペンを浮かせないで次の文字を書く(日本語なのにまるで筆記体)癖があるので、書いたそばから手でよく擦ってしまう私にはこれに勝る利点がなかなかなかった……

 自然と走り書きが多くなるネタ帳にドッキングさせると相性抜群です。素晴らしい。

 そして、書いてすぐページ閉じてもページうつりしない。
 乾くの早いってイイね……
    

・馴染むペン先に育つ
 
万年筆とはそもそも全然違うものだ、ということを念頭に置いたうえで読んで頂きたいのですが、自分の書き癖に合わせてペン先が変化します。

 樹脂チップになっているペン先が使っている人の筆記角度に合わせて削れるんですね。
 それによって紙とペン先との摩擦面がその人の書きやすいように変わるので、インクが掠れることなく書けるようになっています。走り書きでも掠れにくいですよ。

 そして、これはペンを立て気味に書いていてもペン先が削れるので、普段はボールペンを使っている、あるいは、万年筆は使ったことがない、というひとでも使いやすい仕組みなんじゃないかなぁ、と思います。

 万年筆はボールペンに比べると寝かせ気味じゃないと掠れますからね……わたしはやはりボールペン使っている時間が長いのでどうしても立て気味に書いてしまって、万年筆では掠れることがあります。
 それがないから、ある意味ストレスフリーかなぁ、と。
   

・走り書きにも負けず、掠れない
 
この馴染むペン先、かなり書き心地が滑らかです。
 キャッチフレーズに「書くというより撫でる感覚」という謳い文句がありますが、これに関しては偽りなし。
 ペンの自重で滑らかに書けます。摩擦感がないというか。

 ぬるー、っと書く感じなので、好き嫌いはかなりあると思います。
 代わりに、思考速度に筆記速度が負けがちな感じがだいぶ減少します……めったに掠れないし。

 水性ボールペンで走り書きすると、結果、何も書かれていないページにペン先が走った跡だけが残る現象が多発しますが、インジェニュイティはこれが少ない。
 ペン先が紙に乗った瞬間にちゃんと書ける、っていうのは利点だと感じます。

 とはいえ、インクどばどばー、とはならないのですごいです。ボールペンだって一か所にペン先触れさせてたらインク玉できるのに。わけわかんない。

 そして、インジェニュイティは「インクどばどば事件が起こらない」+「ドライアップ(インク乾き)しづらい」という利点もあります。
 キャップ開けたまま、ぼやーっと考え事して、たまーに書いて、またぼやーっと思考を巡らす、という事をしてもインクが乾かず、また、書き始めた瞬間にぬるーっとインクが出る、という。
 万年筆でこれやったらインク出なくなりかねないので、これも強みかな。

 適当に入れても必ず一定方向に入るペン先。
 ペン先のうねうねがしなることによって、滑らかな書き心地と筆圧調整もしてくれるらしいです。色々考えられてるのね。
  

・インク補充が楽
 
万年筆の恐ろしく面倒くさいところがインク補充です……いやまぁ、カートリッジなら楽なんですけども。

 下手くそだとインク補充の際に指にインク付いちゃうし(私だ)、うまく吸えてなくて全然距離書けないし(私だ…)、出先で補充ってなかなかできないし(私だ……)、なんかとにかく結構面倒くさい。

 正直、これが万年筆を使う上での楽しみでもあるわけですが、わりと面倒くさいが先に勝つのが私です。
 結果、出先で使うのはやめて家の子になっている万年筆……インク漏れとか怖いし。

 しかし、インジェニュイティはボールペンタイプの替え芯になっているので、くるくるっと軸を開けてカートリッジ入れ替えればそれでおしまい。
 楽だ……

 (ただ、ペン先ごと交換になるのでペン先が育て直しなのはご愛嬌……)

     

『わるいところ』

・高い。
 本体のことだと思うでしょう?
 いやまぁ、本体も高いんですよ? 2万とか普通にしますよ? 一番安いやつで8,000円? それ安いの? 状態なのですが。

 結構コスト面でしんどいのが替え芯です。

 1本1,000円です。
 まぁ、パーカーはボールペンの替え芯も800円しますからね。新機構のペンだから替え芯がそれより高くなるのは仕方がない……
 けども、それは筆記距離が長ければ、の話なんですよね。

 正直、万年筆のカートリッジ程度の筆記距離です。
 体感ですが、だいたいおんなじぐらいじゃないかな……

 Parkerの万年筆カートリッジは1本100円程度なわけで、10倍出して同じぐらいの筆記距離と考えると、まぁ、なかなか……

 もちろん、インジェニュイティはドライアップの心配がそこまでないので、じっくり何か考え事しながらつらつら書く、という動作にはよく合っていますし、考えながらの筆記作業は書くことが大量にあるってこともないと思うので、コスト感は使いようによって全然違うかと思います。

 実際、私自身は走り書きに対応してくれて、ペンの自重で軽く書けて、早く乾いてくれればそれで十分な人間なので、あんまりコストパフォーマンスは悪くないかな、と思ってます。
 万年筆でぼんやり考え事しながら小説のプロット組むわけいかないしね……一回それやって、水性インク使ってるくせにドライアップさせたからね……orz
    

・ペン先が太くなる
 
ペン先が削れて自分に馴染むようになる。という長所の反面、削れた分だけ少し太くなります;
 紙との接地面が広くなるので当たり前なんですがね。

 私は万年筆もF(細字)が好きな万年筆ライトユーザーなのでインジェニュイティもFを買いましたが、削り削れて書きやすくなった反面あっという間にM(中字)相当に。
 細字ってなんだ!?

 内部構造的に難しいのもわかりますがEF(極細)がほしいですね……それでも削れたらF相当になるんだろうし。
 細い字が書けないので、乾くの早いからスケジュール帳とは相性いいんだろうけど太くてあまり使えないと思います。
     

・重い
 ペンの自重で書くものなのでこれを言ったら終いかもしれませんが、いやでもそれにしたって重くない? って感じです。

 私が勝ったのはスリムタイプなのでまだ軽い方なんですが、バランスが悪いのかなんなのか、お尻にキャップ差すと重いわ重心取れないわで書きづらい。キャップは取り外して書くのがデフォになります。

 私はボールペンでもキャップは尻に差さず放置するタイプの人間なので気にもしませんが、無くさないために尻にキャップ差す派の人は許せないでしょうね(笑)

 その一方、インジェニュイティ アーバンシリーズはキャップまで差して人体工学に合った書きやすい重心を再現するタイプなので、使うもの次第なものでもあります。
 少なくともスリムタイプは重心ガタガタになるからキャップ差して書くのは難しい。

 なお、スリムじゃない方は重くて取り回せる気がしなくて即却下でした。
 IM(インジェニュイティ廉価版)とスリムは軽めなので扱いやすい方かと。
        

・つくりが安っぽい
 芯を取替えようと開けて気づきますが、どことなくつくりが安っぽいです。

 軸の奥に筆圧調整用のばねがあるくらいで、ほかは特に何もない……
 ペン軸内部のペン先と軸がドッキングする「くるくるくる」ってなってるところもプラスチック……!

 貴様、張りぼての高級感か……!

 割と「え、こんなんでこの値段するの?」という気持ちにさせられます。
 軸中は暗くてほぼ見えないからいいけど、開けて見えるところは、なんかステンレスとかのほうがうれしかったかな……

 外見をかっこつけている分、中見るとちょっと切ない。

 
  

『感覚的に似てる気がするもの』

・ステッドラー ピグメントライナー
・サクラクレパス ピグマ

 このふたつはミリペンなので均一な線を得意とするためインジェニュイティを考えるとちょっと違うのですが、ペン先の書き味なんかは似てるんじゃないかなぁ、と思いました。
 あとインクの濃さとか。そもそものインクが似てるかも。

 とはいえ、インジェの方が太いし、文字を書くことを考えると高級サインペンの趣がある……
      

・ぺんてる トラディオ・プラマン
 プラスチック万年筆の「プラマン」さん(約500円)はペン先が樹脂製でペン先とカートリッジ一体型、という、インジェニュイティの先輩で優良コストパフォーマンス商品です。
 とめ、はね、はらい、といった日本語を書く上で重要な要素が綺麗に出るので、書いてて面白さはあります。

 その一方、インクが乾くこともありますし、そもそもの書き味がどことなくシャリシャリ感があるので、一概に「似てる」と断言しづらいところもあります。

 プラマンも掠れないし、さらさらっと書けるところは似てると思うんだけど、紙との接地感が違うのは筆記具の違いとして大きいものだよなぁ……

  
  

『結論』

個人的には「どの層に向けて作ったのかよくわからん」って感じでした。

万年筆ユーザーが好むペン先を育てる感じは、ペン先ごと替えるカートリッジの仕組みで無に帰してるし、万年筆で特有のインクの濃淡による「味」みたいなものは正直無いです。

ボールペンユーザーが使うにはおそらく文字が太いし、取り回しがきかないし、重いし携帯性は悪いと思います。
さらに、お値段もなかなかなので、ボールペンユーザーがあえてこれ選ぶか? って思うと、そもそもモノが違うし候補に挙がってくるのかどうか……

       

その一方で、万年筆に憧れがあって、でも普段はボールペンとか使ってて、一度は高級感ある文房具持ってみたい! っていう人には試して、しっくりくるかどうか考えてみてもいいと思います。
まぁ、価格が壁として立ちはだかりますが、一番安いのなら8,000円からなので、万年筆買おうか考えるぐらいの人なら予算範囲に入ってくるモノがあるかもしれない。

逆に、万年筆使い慣れてて愛好している人ほど「なんじゃこれ」ってなりそう(笑)

あとは左利きの人にもいいのかもしれない。
乾くのが早いのでインクが手につかないですよ。

      

大きめの文具取扱店だとインジェニュイティの試し書き台が設置されてるので、一回書いて試してみるのも面白いと思います。

あ、ちなみに私はインジェニュイティを打たれ弱いモレスキンで使っているのでガンガン裏うつり・裏抜けしておりますが、いまのところコピー用紙なら問題なくつかえたので(裏うつりもなし)普通の紙なら問題なく使えると思いますよ!

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