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髪を寄付した話

数年ほど伸ばし、へそ近くまであった髪を昨年末に切った。髪が長くなればなるほど、男性である自分に対して「なぜ伸ばしているのか」と聞く人が増えたことを覚えている。そう聞かれるたびに、特に深い理由も意味もないことを伝えた。

逆に、自分の髪型について、その理由を語れる人間がいるのだろうかと疑問に思う。憧れている人と同じ髪型、楽な髪型など、いろいろな理由がありそうだが、明確に答えられる人間はそう多くないだろう。

自分の行動や選択の理由を明らかにすることは難しい。仮に言葉にまとめられたとしても、それが真に自分のモチベーションを表しているかは誰にもわからない。そもそも、理由を述べる事に意味があるかどうかもわからない。

自分が髪を伸ばし続けた積極的な理由としては、「髪の長さで自分を覚えている人がいるから」「髪が長いと髪型のバリエーションが作れるから」などがあり、消極的・潜在的な理由として「髪を切るのが面倒だった」「髪を切るという概念が自分の中で消失した」ことが挙げられる。しかし、結局なぜ自分が伸ばし続けたのかは自分でもよくわからない。

自分の言動には明確な理由がないということを認められたことは新しい境地だった。合理的な行動をとることが良しとされる時代だが、実は自分のモチベーションを理解することは非常に難しい。自分を理解しようとすることはもはや非合理なのだ。

髪を切ると決心した理由も特にはない。理由もなく決心するというのも変な感じだったが、確かに決心だった。数年間一緒に過ごした体の一部を自分から切り離すのは、なんとなく切ない。

数年振り美容院に行くと、いつもカットしてくれていたスタッフは結婚して店を辞めていたが、自分を知っている別のスタッフは残っていた。自分の髪の長さに驚きつつ、ヘアードネーションをしようと言う話になる。

31cm以上髪を切る場合は髪を寄付をすることができる。寄付された髪はウィッグ制作などに使用されるらしい。美容師さんがヘアードネーション用の切り方を知っていたので、お任せで束ねて切ってもらった。

美容院から団体へ送ることもできるが、自分から送ることも可能と知り、せっかくなので自分で送ってみることにした。

今回はJapan Hair Donation & CharityなるNPO法人に送ってみた。やり方含め、Webページに全て書いてあるので関心がある方は一読を勧める。


送ってから1ヶ月弱経ったタイミングで受領証が届く。

深い意味も理由もなく伸ばした髪も人の役にたつ、というオチにするつもりはない。ただ、ヘアードネーションについて知らない人が結構多いと気づいたので、そういう選択肢もあるよという話。

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