見出し画像

【この作品いいよね!】 マンガ「オナニーマスター黒沢」のすすめ

Kindle Unlimitedで全4巻読める傑作

1週間ほど前にKindle Unlimitedの自動更新停止の手続きをした。今月中旬には、Kindle Unlimitedに含まれている作品が端末から読めなくなってしまう。データが消えてしまう前に、Kindle Unlimitedで読める作品を紹介しようと思う。今回紹介するのは、全4巻が読み放題となっているマンガ「オナニーマスター黒沢」である。

ストーリーの概要

web上で伝説的人気を誇った『オナニーマスター黒沢』がついに電子書籍化!中学二年生の黒沢の楽しみ…。それは学校の女子トイレで同級生をオカズに自慰にふけること。しかし、クラスでイジメに遭っている少女に見つかってしまい……。

出所:Amazon ウェブサイト

「オナニーマスター黒沢」はエロマンガか

まず、タイトルが「オナニーマスター黒沢」だ。すごいタイトルである。ちなみにAmazonで検索すると、内容を確認するのに年齢確認が必要だ。
このタイトルからどんな内容のマンガを想像するだろうか?性欲、性衝動をテーマとする、主人公の妄想を描いたエロマンガと思う方も多いだろう。
もちろん、作中では、タイトル通り主人公の中学生「黒沢」はオナニーをする。しかも学校の女子トイレで(外れた場所にあるため、普段利用する女子生徒はほとんどいないが)。登校するたびに、その個室で黒沢は女子生徒について妄想し、自慰に励む。そして、女子生徒の持ち物に精液をかけるなどして事件を起こす。ここまで書くと黒沢はただの変態である
しかし、俺はこの作品の核はエロではないと感じた。それでは見出したテーマは何か?それは「人との繋がり」である。このマンガは、黒沢が他者と人間関係を構築したいという欲求を抱いていることを自覚し、対人関係の構築に向けて行動する様子を描いているのである。

※以下、ネタバレを含みます。この記事をここまで読んで、ネタバレをされたくないと思った方は、いったん「オナニーマスター黒沢」を読んで頂いて、その後にこの記事の残りを読んで頂けたら嬉しいです。

オナニーマスター黒沢は人との繋がりを欲していた

当初、黒沢はクラスメイトの誰とも仲良くなる気は毛頭なかった(オタクやいじめられっ子などのスクールカースト下位者も含めて)。

出所:オナニーマスター黒沢 伊瀬カツラ・YOKO(ナンバーナイン)

彼はみんなと交流する気は全くなかった。唯一の外界との接点と呼べるものは、彼が女子生徒に向ける性的な目線と想像であった。それは黒沢からの一方的なものであり、交流とは言い難いものだった。彼はその想像を校舎の片隅にあるトイレの個室の中で行っていた。

けれども、一匹狼の黒沢も、修学旅行などを通じて少しずつ周囲と関わっていく。図書室でマギステル(誰にでも分け隔てなく接する女子生徒)と会話を重ね、長岡(オタクのボス的存在)たちとカラオケに行く。そして黒沢はマギステルに恋心を抱くようになる。しかし、結果は失恋となり、さらに黒沢は匿名で事件を起こして彼女を大きく傷付けてしまった。その後、黒沢は、傷ついた彼女の夢(みんなでまた旅行に行くこと)を知り、「人との繋がりに溺れていた」ことを自覚する。

出所:オナニーマスター黒沢 伊瀬カツラ・YOKO(ナンバーナイン)

一室に閉じこもって、一方的な妄想とともに自分ひとりで快感に浸るという行為は、対人関係を構築したいという思いの裏返しであった。

出所:オナニーマスター黒沢 伊瀬カツラ・YOKO(ナンバーナイン)

そして、人との繋がりを築くため、黒沢はクラスメイトと向き合っていく…。彼は、マギステルの一件だけではなく、複数の事件を引き起こしており、その清算を行う(いじめられっ子「北原」と黒沢の二人で事件を起こした)。

一人の世界は狭く完結している

たぶん黒沢はこれまで人と関わることを面倒に思っていたのだろう。一人で妄想に浸ればそれなりには楽しいし、気持ちも良い。これまでの彼の世界は、彼一人しか存在できないほど狭かったのだ。しかし、他者と関わるほど、彼の世界は広がっていった。そして、マギステルに恋し、自分ひとりの生活では抱くことができない感情と巡り合った。むろん、自分だけの世界ではないため、思い通りにならないことも多いが…。

マギステルへの失恋を経て、黒沢は「もう言いそびれるのはイヤだろ」という思いを抱く。そんな決意を胸に実際に行動できた黒沢は、一匹狼のときよりも大きく成長していた。

出所:オナニーマスター黒沢 伊瀬カツラ・YOKO(ナンバーナイン)

何か重要なことを決意して誰かに伝えることは、何歳になっても難しい。中学生・高校生の時期にして、それを成し遂げた黒沢は、まさに「マスター」の称号にふさわしいといえるのではないだろうか。

※小説版もあります

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?