見出し画像

桜花賞を振り返る~暴れ馬が作り出したサバイバルと、枠順の作り出した運命~

桜花賞は木曜14時に枠が決まる。システム障害で騒ぎになっていた昼下がり、出てきた枠順を見てマスクは頭を抱えた。

サトノレイナスが18番を引いてしまったんだよ。

16年桜花賞で13番ジュエラー→12番シンハライト→10番アットザシーサイドで決まったように、もちろん当日の馬場傾向はあっても、基本的にこのレースは外枠有利になりやすい。実際外枠有利というデータを挙げる媒体は多かった。

しかしマスクとしては、今年に関しては本当にそうだろうか?という感覚が強かった。なぜなら今年は『桜花賞からBコース』だったからなんだよ。

通常大阪杯からBコースが使用されるのが阪神。それが京都開催がない影響で、天皇賞春まで阪神が使用されることから、今年は1週遅れ、桜花賞週からBコース開催となった。

Aコースから直線3m、コーナー4m分、内ラチを外にずらす。これによって先週までに使い込んだ内ラチ沿いがカバーされること、そして今開催の阪神は前の週に雨の中で競馬をやっても、翌週良馬場だと高速馬場が現れること、この2つの要素から、今年の桜花賞は一概に外枠有利が通用しないのではないかと見ていた。

なおかつ今年はソダシがいる

通常、レースにおいて強力な先行馬がいる場合、その真後ろにいる馬は有利になりやすい。前の馬が垂れてくる可能性が少ないこと、前の馬が自力で伸びてくれることで進路が開くことなどがその理由だ。

画像1

これは昨年の札幌2歳Sの向正面。勝ったソダシの真後ろにいるのが桃アオイゴールド。

新馬を勝った直後で12番人気は少々人気がなさ過ぎたとも思うが、ソダシが自分から動いて前を捉えに行った分、アオイゴールドの進路が開いてあと一歩の4着までやってきた。

画像3

画像2

これは昨年の阪神JF。ソダシが6番、サトノレイナスが7番だったことで、サトノレイナスは道中からソダシの真後ろにつけて競馬をすることができた。

ソダシに限らず、強力な先行馬は真後ろにいる馬を連れてきやすい。真後ろを取りやすいのはその隣にいる馬だ。以前キタサンブラックも似たような傾向を作っていて、17年大阪杯では隣のステファノスを連れてきている。

●2強の枠順
・阪神JF
3枠6番 ソダシ
4枠7番 サトノレイナス

・桜花賞
2枠4番 ソダシ
8枠18番 サトノレイナス

ソダシがまともにゲートを切ればその後ろがベストポジションになるのは、これまでのレースを見れば明らか。阪神JFでソダシの隣の枠から『ベストポジション』を確保したサトノレイナスが、今回ソダシから距離が離れている枠に入ってしまったことで、ルメールがどんな位置取りをするか、マスクの桜花賞の予想の焦点の1つだった。

●桜花賞出走馬
白 ファインルージュ
黒 ソダシ
赤 アカイトリノムスメ
青 メイケイエール
黄 アールドヴィーヴル
茶 ヨカヨカ
灰 ミニーアイル
橙 シゲルピンクルビー
紫 ソングライン
桃 サトノレイナス

画像4

桜花賞スタート後。大外枠から半馬身ほどゆったりゲートを出た桃サトノレイナスとルメール。選択肢は2つだった。

A.少し出していって外から上がっていく
B.下げて後ろから運ぶ

前者の場合、橙シゲルピンクルビーが中途半端な先行態勢を取っていたことから、更に外を回される可能性がある。

画像5

これは日曜の阪神7R。ルメールが騎乗した橙セントウルが逃げ、レースのラスト3F10.7-11.1-11.5という速い上がりの決着の中、最後まで粘って3着となっている。

つまりルメールは『内も走れる』ということを重々承知している。となれば、スタートが少し遅かったとはいえ出していって外を回すより、少しでもロスをなくすため、後方から運ぶ選択肢を取る可能性は高い。実際に取った作戦は後者だった。

相手のソダシは内枠。内も走れる馬場で好位にいるであろうソダシを逆転するには、大外を回っては届かないと判断したのだと思う。

画像6

前走サトノレイナスが獲得した、黒ソダシの後ろというベストポジション。枠順が決まった時点で右隣はブルーバード、左隣は赤アカイトリノムスメ。アカイトリノムスメのほうが後ろを取る可能性が高いとマスクは見ていた。

が、フタを開けてみたら、ソダシの後ろのベストポジションを獲得したのはファインルージュだった。騎乗していたのは福永。馬場をよく読むタイプのジョッキーだ。

画像7

画像8

これは日曜の阪神10R大阪ハンブルクカップ。福永が騎乗した赤ミスマンマミーアは、4コーナーに入るところで一旦内に入れている。そして直線で外に出した。

馬場をよく読む福永が、悪い内ラチにわざわざ自分から入っていくとは考えづらい。3コーナーのポジションを考えると内が悪ければずっと外を回すだろうし、あえて内に入ったということは、『内ラチ沿いの馬場が使える』からに他ならない。

ソダシのゲートの早さを考え、枠が決まった段階で福永は、馬場が良ければソダシの後ろを確保し、インで脚を溜めるという作戦を決めていたのだと思う。早々とソダシの後ろを確保すると、ガッチリとベストポジションをキープ。100点満点の進路取りと言っていい

100点満点の位置取りができた馬がいれば、どうにもなっていなかった馬もいる。

画像9

画像10

青メイケイエールだ。

今回の桜花賞で最大のポイントになっていたのがメイケイエールの位置取りだろう。

●メイケイエールという馬
スローで掛かるのではない
前に馬がいると追いかけてしまう
先頭に立つとハミが抜ける

●メイケイエールの考えられたパターン
A.ハナに行く
B.中団に控える
C.最後方

戦前、メイケイエールのこの癖を基に、『ハナに行けばいい』という声が盛んに上がった。

もちろんチューリップ賞で4コーナー先頭に立った際、そこからハミが抜けて落ち着いたことからも、前に馬がいない逃げであればメイケイエールは折り合って運べるだろう。Aプランの可能性はありえた。

ただハナに行くという作業は簡単ではない。そもそもゲートが速く、テンもある程度速い馬であればハナを切りに行ける。

しかしメイケイエールはそんなにゲートが速いわけでもないし、テンも普通。ハナを取りに行くには相当強引に押していくしかないだろうし、仮にもっと速い馬がいてハナを切られてしまっては、リズムを崩してしまう可能性が高い。

そうなるとBプランかCプラン。

画像11

チューリップ賞の白メイケイエール。1ヶ月前にこんな状態だった馬が、調教だけでどうこうなるわけがない。それはノリさんも重々理解していただろうし、これまでのVTRを見てゲートがそんなに速くないことも分かっていただろう。

これが大外や7枠くらいなら、ゲートを出てから外に出せる可能性が高い。実際大外だった阪神JFはスタートから大外を回し、馬群に近寄っていない時は掛かっていなかった。

しかし引いてしまった枠は8番。両サイドに馬がいる。ゲートで遅れてしまったら確実に前に馬がいる。引っかかってしまうのは間違いない。

迎えた今回の桜花賞。メイケイエールは出遅れてしまった。

パドックではおとなしかったものの、返し馬で他馬に反応し、テンションが高ぶってしまった。その姿が映像に残っている。テンションが高いままゲートの中に入ったら暴れる。その分の出遅れと見ていいだろう。

出遅れたことで両前に馬がいる。メイケイエールにとって最悪の形だ。なまじこの馬が難しいのは、跳びが大きくて脚力自体高い点。相手は1馬力だから、ジョッキーがいくら抑えても、行きたがる馬は行きたがる。脚力のあるメイケイエールはそのまま行ってしまう。

画像12

画像13

内回りと分かれる地点だから、残り1300m地点付近。青メイケイエールが抑えきれていない。そのまままっすぐ進んでいくとより他馬を巻き込むから、ノリさんはやむなく外へ出そうとする。ここで灰ミニーアイルが手綱を引く不利を被っている。

考えたいのが位置関係だ。これ、もしサトノレイナスが同じ外枠でも7枠を引いていたらどうなっていただろう。ミニーアイルの位置にいたのはサトノレイナスだった可能性があるのではないか?

あくまで仮にだが、サトノレイナスがミニーアイルのポジションにいた場合、メイケイエールが前をカットすることでリズムを崩される可能性が高い。ノリさんも人気馬の前を安易にカットするとは考えにくいが、もうそんなことも言っていられないくらい行きたがっている。

ルメールがレース後「18番枠、ありがとう。すごくいい競馬をしてくれました。仕方がないね。オークスに行きましょう」と話しているのだが、これは18番に対する皮肉に加えて、18番に対する感謝の気持ちも込められたコメントだったとも取れるのではないか。これが14番だったりしたら、メイケイエールに斜行されて被害を受けていたかもしれない。大外だったから回避できたとも言える

まー、最初からもっと内枠で、ソダシに近かったら話は大きく変わった。外枠有利と言われる桜花賞でも、今年に限っては大外は不利に働いてしまっていた

画像14

画像15

外枠勢でもっとも青メイケイエールの被害を受けたのは桃ソングラインだった。灰ミニーアイルも不利は受けているが、桃ソングラインは致命的。

枠がメイケイエールより内であればこんな不利は受けずに済んだのだがね。決まった枠で競馬をするしかないとはいえ、一生に一度の舞台でこの不利はあまりにもかわいそう。

別に俺はメイケイエールを桜花賞に出すな、出さないほうが良かったとは言わない。調教再審査処分も食らっていない馬を出さない、出せないルールなど存在しないし、相手は生き物。『今回はスムーズに走れた』かもしれない。ある意味生まれた時代が悪かったと言うべきか…

画像16

行きたがった青メイケイエールは外回りの3コーナーで外に持ち出され、手綱を緩められて一気に先頭へ立った。これによって変わってくるのがラップだ。

●21年桜花賞
12.1-10.8-11.2-11.1-11.6-11.2-11.2-11.9

※参考記録
・21年チューリップ賞
12.9-11.6-11.8-11.4-11.3-11.0-11.5-12.3

・19年桜花賞
12.2-11.1-12.1-12.3-11.7-10.8-11.0-11.5

昨年の桜花賞は道悪で参考にならないとして、19年の桜花賞や今年のチューリップ賞と比べたら違いは一目瞭然。

とにかく速い。馬場が高速だった分、ペースが必要以上に速くなってしまっていた。そこにメイケイエールのまくりが入った。

●21年桜花賞
12.1-10.8-11.2-11.1-11.6-11.2-11.2-11.9

メイケイエールが先頭に立ったのが残り1000m地点。そこからの200mは太字で記した11.1

この区間、19年グランアレグリアの桜花賞が12.3、今年のチューリップ賞が11.4。ちなみに18年アーモンドアイの桜花賞のこの区間は12.1

いかに今回の桜花賞、残り1000m→800mが速かったかが分かる。この地点は外回りの3コーナーで、本来は脚を溜めたいところ。少しペースが緩む地点だ。

ところが今年はメイケイエールが動いたことで、3コーナーのラップが一切落ちなかった。しかも今年はテンからずっとラップが速い。結局8つある区間ラップのうち、5つの区間が11.2以下

●桜花賞の区間ラップ8つ中、11.2以内だった区間の数
16年 1区間 良
17年 2区間 稍重
18年 1区間 良
19年 3区間 良
20年 1区間 重

21年 5区間

近年の桜花賞と比べると圧倒的に今年が多い。簡単に言ってしまえば、今年の桜花賞は『ずっと速く走る力』を求められたレースと言っていい。

当然地力が求められるから、力の足りない馬は通用しない。こういうラップは人気サイドで決まりやすい。加えて、ずっと速いラップで走るレースは物理的に内を走った馬のほうが強い。それはそうだよね。走る距離が異なるんだから。

画像17

ここで改めて3コーナーの隊列を見ると、黒ソダシ、白ファインルージュは内ラチ沿いを走っている。

対して赤アカイトリノムスメ、黄アールドヴィーヴルと桃サトノレイナスは内を離れている。道中一切緩まないペースになったことで、物理的に考えると、ソダシ、ファインルージュのポジションは圧倒的に有利だ。

画像18

改めて注目したいのは赤アカイトリノムスメの位置取りだ。

前述したように、黒ソダシの後ろはその名の通りベストポジション。よほど自爆しない限り、先行したソダシの真後ろは、ソダシを除けば『最も3着以内に入る確率が高いポジション』と言える。

ソダシの真後ろを一番取りやすいのは両隣りというのも書いた通りだ。ブルーバードか、アカイトリノムスメの2羽が該当する。

ソダシが好スタートを切った以上、アカイトリノムスメは押せばその後ろを確保できた。ソダシから一番近いところにいるわけだからね。ところがアカイトリノムスメの横山武史は入らなかった。

これ、先週の大阪杯回顧にも似たようなことを書いた。モズベッロがコントレイルの真後ろに入り、終始マークする展開。コントレイルが進路を作ったことで、後ろで脚を溜めたモズベッロが絶好の展開となった。強い馬の後ろはそれだけ恩恵がある。

しかし大阪杯回顧に書いたように、この作戦は『後手』とも言えるんだ。そうだろ?前の強い馬が動かないことには自分も動けない。動くタイミングを前にいる強い馬に委ねることになる

もちろんこの真後ろマークが悪いとは言わない。単純に力量比較をした際、ちょっと劣る馬を上位に持ってくるならこの作戦が一番いいからね。

アカイトリノムスメは内に入らなかったのは『勝ちに行くため』だろう。ずっとソダシを左斜め後ろでマークしている。このポジションなら自分から動いていける。

しかもこのポジションを道中譲らなかった。GIはポジション争いが激しい。ジョッキーの間隔も狭くなって、接触も増える。その中でポジションを守り抜き、直線を向いた。ソダシの後ろで脚を溜めたファインルージュに最後は交わされてしまったものの、勝ちに行っての競馬で4着は評価されるべきことだと思う。

武史は5年目、まだ22歳。粗いレースももちろんあるが、今回のレースを見て、『横山武史はGIでも戦えるジョッキー』であることを確信した。タイミングさえあえば、GI勝ちはそう遠くない話になると思う。

画像19

画像20

直線入口。ソダシが前を走るストゥーティ、隣にいるジネストラの間をこじ開けるように伸びているのが分かる。

こうなると、ソダシの後ろにいる恩恵が生きる。白ファインルージュは自動的に進路が開く。スタートから道中ずっと、ソダシの後ろのポジションをキープし続けた福永の騎乗はまさに100点満点。一切の無駄がない進路取りで、人気薄を上位に持ってくるお手本のような騎乗だった

もちろん勝ったソダシの(吉田)隼人もほぼノーミス。インで溜めて、メイケイエールにまくられても焦らず、直線に向いた時用のポジションも作り、正攻法の競馬、まさに理想的なレースだった。

隼人自身「プレッシャーはありました。話題だけで本当に強いのかと見られていましたし、見返してやろうと」と語っている。ソダシは見た目とは裏腹に気難しい。ゲートも先入れになるように、ゲート再審査予備軍。道中の口向きにも気を付けなければいけない。

確かに今回、枠に恵まれたのは事実。超高速ペースでラチ沿いにいる恩恵は大きいからね。ただ内枠というのはちょっとゲートをミスすれば外から被されて、一気に恩恵がなくなる。相当なプレッシャーがかかっていたと思うよ。

簡単に乗ってきたように見えたことが、ジョッキーの上手さの証明だろう。実際は乗り難しい馬だろうし、断続的に11.2以内が刻まれたハイラップを3番手から押し切った馬の実力と共に、ジョッキーの完璧な仕事も讃えられるべきだろう。

オークスともなればサトノレイナスに加点が入るから勝てるかとなると疑問もあるが、このようなハイペース持続戦なら今後も簡単には崩れないだろうね。逆に、スローの瞬発戦だとGI級なら取りこぼしがありそうだ。

画像21

この黒ソダシがストゥーティ、ジネストラの間のスペースをこじ開けて抜けてきたのが、実は外、桃サトノレイナスに影響を与えていた。

ソダシが1頭分外に出したことで、ジネストラが反応。その外にいた馬たちが『1頭分ずつ外に弾き飛ばされる形』となった。

その影響で橙シゲルピンクルビーが、更に外にいる黄アールドヴィーヴルを弾き飛ばしている。アールドヴィーヴルはこの接触がなければワンチャン3着まであったかもしれない

画像22

橙シゲルピンクルビーが内から弾かれてしまったことで、その内にいる茶ヨカヨカとシゲルの間に1頭半近いスペースが生まれる。普通スペースが開いたら突くよね。

しかしサトノレイナスという馬は本質がオークス向き。だからこそダービーも登録している。マイルは若干短い。サフラン賞も、阪神JFも、追い出してからすぐに反応しているわけではない。一瞬置かれるんだよな。

スペースが開いて、一瞬で反応すればこのヨカヨカとシゲルの間のスペースから突き抜けていた可能性がある。ルメールはレイナスの一瞬の反応の鈍さをよく知っている。

ここでルメールはシゲルピンクルビー和田の思考を読んでいたのでは?という動きを見せた。

シゲルピンクルビーは外に弾かれてしまったことで、アールドヴィーヴルにぶつかった。当然体勢を立て直そうとするよね。

改めて上の、ぶつけられた時の写真を見ると、和田は右ムチを持っている。しかし体勢を立て直すとなると、自分から見て右側に馬を戻さないといけない

画像23

自身から見て右側、内のほうに馬を戻すため、和田が左手にムチを持ち換えた。叩かれれば橙シゲルピンクルビーは内へ戻っていく

桃サトノレイナスのルメールは恐ろしいことに、このシゲルピンクルビーの動きを先読みしてるんだよな。進路が開いているのにスペースに入らず、和田がムチを持ち換え左ムチを叩いた瞬間、サトノレイナスの進路をやや外に向けている

スペースは開いている→でも和田さんは体勢を立て直しにかかるはず→左ムチに切り換えるだろう→スペースはすぐ埋まる

この計算を一瞬でやっているとしか思えない動きだ。切り返しは斜め前、レースをライブで見ている時に分かっていたんだが、単にスペースがないから切り返したのだと最初は思っていた。パトロールを見たら全然違ったね。本当にこのフランス人は周りが見えている

画像24

画像25

画像26

もしあのまま橙シゲルピンクルビーとヨカヨカの間を突いていたら、進路はなくなって詰まっていたかもしれない。本当に一瞬のではあるが、桃サトノレイナスが黄アールドヴィーヴルの外に出された動きは、ちょっと鳥肌が立った。

結果的にこの一瞬で反応できない面が今回の敗因の一つ。阪神JFのように内目の枠なら、強い馬の後ろから上がっていって、もっとスムーズに進路を確保できたかもしれない。しかし大外枠だと難しい。

大外枠というロス、直線の切り返しなどがありながら、結果ソダシとクビ差、自身も1:31.1で走り、上がり3F32.9の脚を使っている。かなり強い内容と言っていい。当然、距離延長となるオークスでは逆転の可能性が高まってくる。改めてサトノレイナスの強さを感じさせられるレースだったよ。

5着アールドヴィーヴルも道中やや外を回りながら、このラップに対応した。走るね。体重が減り続けているだけに、まずは馬体の回復が求められる。脚力をしっかり発揮できる状況を整えることができれば、重賞を勝てる馬になる

13着エリザベスタワーは、パトロールを見ると3コーナーから外に張っていることが分かる。チューリップ賞やそれ以前にも見られた癖で、調教で矯正しているものの、実戦でなかなか治らない。まだキャリアも浅い馬だけに、これからだろう。

実力はGIでも通用するものがある。こちらもアールドヴィーヴル同様、脚力をしっかり発揮できる状況を整えてからだろうね。まだ3歳の春。キャリアは始まったばかり。これからに期待したい。

さて、最下位18着に敗れたメイケイエールに話を戻そう。マスクは前走チューリップ賞の振り返りでこう書いた。

これだけの課題、伸びしろがあるとは考えられるが…このままだと競走馬として過ごすのは難しくなるかもしれないね。事故の危険性もある。能力は高いものの、その能力を発揮できる状況ではない。

1ヶ月後の今回、前走同様エキサイトしてしまって、他馬の進路をカットし、他馬を弾き飛ばしてしまった。このままだと本当に事故が起きる

当然平地調教再審査となったわけだが、単走が中心の再審査が果たしてこの馬の『他馬が前にいると燃える』気性に見合っているのか、非常に疑問が残る。

もちろんスタッフさん始め陣営は相当努力されているだろう。現状、この状況では短距離、マイル、中距離、どの距離でも変わらないと思う。放牧に出されて成長を促されるだろうが、ちょっとの放牧では改善しないレベル

ただ1つ、この馬にとってポジティブな要素がある。これまで騎乗した福永祐一、武豊、横山典弘といった日本を代表する腕達者たちが、『最初から狙ってハナに立たせていない』点だ。

最初から押してハナに立たせてしまうと、掛からなくはなるだろうが、もうハナ以外の選択肢が取れなくなる。他に速い馬がいたら勝負にならないだろう。暴発して他馬に迷惑をかける可能性がある。

ここまで最初からハナに行かせず、テンは我慢させようとしていることで、決して一本調子の馬にはなっていない。ここまでの教えは無駄にはならないと思う。

能力が高いことは間違いないだけに、逆にここから競走馬として成立できるのか、能力を発揮できず引退してしまうのか、非常に興味深い。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?