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22年皐月賞を振り返る~強力なトラックバイアスと身体的課題~

皐月賞の振り返りだ。

マスクが私用のため時間が限られている。いつもより駆け足になってしまうが、今回の皐月賞を振り返っていこう。

太字にしたり、馬名入れたりは後でやっておく。ごめんな、ちょっと時間が足りなかった。


●皐月賞 
白 ①ダノンベルーガ 川田
黒 ②アスクビクターモア 田辺
青 ⑦ボーンディスウェイ 石橋
水 ⑪オニャンコポン 菅原明
緑 ⑫ドウデュース 武豊
紫 ⑬ビーアストニッシド 和田竜
橙 ⑭ジオグリフ 福永
桃 ⑱イクイノックス ルメール

まず皐月賞、最大のポイントとなったのは馬場だ。雨上がり、どのラインが一番伸びるか頭を悩ませた人間も多いと思う。

マスクは土曜の中山9Rで中山芝に対して外伸びという確信を得た。だってルメールが教えてくれたんだもの。

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これは土曜中山9R山藤賞。桃ローシャムパークのルメールが、内ラチ沿いを開けながら早めに進出していった。

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3、4コーナーがこれ。パトロール見なくても分かるくらい内を開けていた。つまり土曜の時点でルメールが内を捨てている。仮に内が良かったらこんなことをする必要性がないよね。

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結果ルメールはここまで外に行ってしまった。さすがにこれは極端とはいえ、ローシャムパークの圧勝劇を見る限り、皐月賞はこのルメールの通ったラインを通れた馬が上位に来る可能性が高い、そう考えられる。


さて、続いてみんな気になっているであろうドウデュースの話をしよう。

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これは皐月賞のスタート後、最初の直線。何より凄かったのは出遅れ癖がある橙ジオグリフが、いいスタートを切って前を視界に捉えていることだ。

ジオグリフのゲートが安定しないのは周知の事実だが、テン乗りで完璧にゲートを決めてきた。さすが、日本で一番ゲートが上手い男、ゲートの達人福永祐一だ。もう一回遊べるドン。

決して緑ドウデュースのスタートも悪くない。ただ今回に関しては並びが良くなかったな。水オニャンコポンが外に張り出してきたんだ。

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こんな感じ。緑ドウデュースの前に水オニャンコポンが入ってしまった。オニャンコとしては馬場のいいところを走らせたいという目的があったのだろう。

本来であれば、このポジションをドウデュースは譲ってはいけなかったんだ。よく俺が書いているだろう、『有力馬の後ろは絶好のポジション』という話を。

仮にドウデュースがオニャンコポンのポジションにいたとしたら、前はジオグリフ。それがオニャンコに前に入られたことで、オニャンコの後ろというポジションになってしまった。

客観的に見てオニャンコポンとジオグリフ、どちらが強いかと言ったら後者だ。では本来、ジオグリフの後ろを取らないといけないのに、ポジションを取れなかったのはなぜか、という話になる。

これはドウデュースの体型に関わってくると思うね。あの馬は馬体を見てもマイラー寄り。もちろん馬体が全てではないが、体型的限界というものはある。

皐月賞、そして次の日本ダービーを狙っていく上で、どちらの優先度が高いかというと後者、日本ダービーで間違いないだろう。皐月賞から400mの距離延長になる。次を見据えた時、押してオニャンコをどけて強引にポジションを取るのはリスクがあるんだよな。

馬は前走の出来事を覚えているという。ドウデュースの操作性がいかに良くても、次400m延長が控えているのに、マイラー質体型の馬で強引にポジションを取りに行く作戦は少々有効性がない。

もちろん皐月賞を勝ちに行くのなら押していくべきだったのだろうが、弥生賞で距離をこなしたとはいえドウデュースの良さはピッチの回転の速い反応。後ろに脚を溜めておくのが正解となると、俺も押してポジションを取るのはリスクがあると思う。

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ここで武さんのレース後のコメントを見てみよう。

結果的に後ろ過ぎたかな。大事に行こうと思ったけど、流れなかった

大事なのは『結果的に』という部分。大事に行こうとしているのは次距離延長があるから。出たなりで運ぶのはレースプラン通りだったのだろう。

ただオニャンコに前に入られて、しかもオニャンコが写真のように挟まれかけて下がってきたことでポジションが2列ほど後ろになった。これは武さんの誤算。

それでも前走淀みないラップで逃げたデシエルトやビーアストニッシドがいるから、ある程度流れるという読みだったのに、この2頭が行かず、なぜかアスクビクターモアがハナだった。これが『流れなかった』『結果的に後ろ過ぎた』というコメントに繋がる。

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向正面。橙ジオグリフはもう桃イクイノックスの後ろにいる。絶好位と言っていいね、外のほうがいい馬場で、外にいる一番の有力馬イクイノックスの後ろ。

たぶん福永のレースプランは、スタートを完璧に決めてイクイノックスがドウデュースの後ろにつけることだったのだろう。実際そういう動き。この時点で福永は理想的な展開だと思っていたはずだ。

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対して白ダノンベルーガは、馬場があまり良くない内を走らされている。内ラチ1、2頭分は明確に悪かったからあえて外して、少しでもいいところを走らせているが、前にいるのはビーアストニッシド。桃イクイノックスが前にいる橙ジオグリフとはポジションの差があり過ぎる

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そして緑ドウデュースはというと、前にいるのはラーグルフとジャスティンパレス。どちらも悪い馬ではないが、GIで自力でポジションを上げていけるほどの馬ではない。

前が動かないことには、外から交わしていくしかない。いくらなんでも3コーナーから大外ぶん回して競馬するのは強引過ぎる。武さんとしてはギリギリまで仕掛けを待つしかない

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白ダノンベルーガの3コーナー。ここが川田にとって難しい判断だった。

通常であれば、やはり馬場のいいところ、つまり外に出したい。桃イクイノックスの後ろ、橙ジオグリフの前あたりが理想だ。

ただジオグリフがわざわざご丁寧にダノンベルーガに進路を譲るわけもない。自分が一番いいところにいるのに、自分から譲る人はいないよね。

そうなるとダノンベルーガの進路は内になる。前は青ボーンディスウェイ。ボーンディスウェイがGI勝てるクラスならまだしも、弥生賞3着馬の後ろに入って、自分の運命を託すのはリスクが高過ぎる

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結局白ダノンベルーガ川田は内ラチ沿いを選択した。紫ビーアストニッシドが邪魔だったんだよね。この馬を飛び越えていかないと外には出せない。

以前からダノンベルーガは右トモに致命的な欠陥があると書いてきた。今回皐月賞を前にメディアにもようやく取り上げられるようになった話だが、マスクは昨年の秋からこれについて触れている。だから東京デビュー→東京共同通信杯というローテを採用している馬。

右トモが悪いから、右手前になるとぎこちない走りになるんだよな、この馬。右回りのコーナーは右手前で走る。強引に最内から外に出すと、他馬に迷惑をかける可能性が出てくる。

だったらラチを頼らせて走るという作戦だ。ラチを頼らせて右トモをカバーする発想は分かる。この状況でいえば最善だったのではないかな。なぜ外に出せなかったのかという意見も結構あるが、『外に出せなかった』と見るのが自然だ。

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緑ドウデュースも難しい選択を迫られていた。勝負所、イクイノックスやジオグリフがフリーで動いているところで、ドウデュースは前のオニャンコやジャスティンパレスが邪魔で動けない。

しかもサトノヘリオスが少し内を開けるものだから、オニャンコとジャスティンが更に外を回され、ドウデュースが上がっていくスペースがない。外を回すしかないが、そうすると終わる。

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4コーナー。白ダノンベルーガは内ラチ沿いを使って上がり、早めに外に出したい。

対して桃イクイノックスのルメールはずっと馬場のいいところを走り続けている。この動き、どこかで見たことはないだろうか。

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土曜中山9R、山藤賞のローシャムパークなんだよ。ローシャムのほうが1頭分内だが、このラインがいいことをルメールは知っている。前日、俺たちに教えてくれている。

ルメールとしてはいいところを忠実に回ってきているだけなんだよね。逆に内ラチ沿いの悪いところをずっと通されているダノンベルーガとはすでに差が生まれている。

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白ダノンベルーガとしては直線入口で外に出したい。ただ黒アスクビクターモアの田辺が、逃げながら内を開けて、自分もいいところを通ろうとしているんだよね。

●22年皐月賞
12.6 - 11.0 - 11.6 - 12.2 - 12.8 - 12.3 - 12.3 - 12.0 - 11.4 - 11.5

今年の皐月賞は武さんが思ったより流れなかったと言っているように、ビーアストニッシドとデシエルトが行かなかったことで、田辺がマイペースで刻んだラップになった。

12.8というラップが中盤に入っている。アスクはここで息をしっかり入れることができたから、直線に入っても簡単には下がらない

おかげで白ダノンベルーガが外に出せない状況が生まれてしまったんだ。まー、ダノンは今回運がなかったとしか言いようがない。最内に入った時点で競馬のパターンはどうしても少なくなる。

対して外枠を引けた橙ジオグリフ、桃イクイノックスはこの時点で馬場を味方につけられている。桜花賞でも内を使ったナムラクレアが3着に食い込み、外枠の差し馬みんな飛んだように、どうしてもトラックバイアスという要素は競馬に大きな影響を与えてしまう

ディープインパクトレベルの怪物ならまだしも、通常のGIであればトラックバイアスで結果は変わる。これは普通のレースにおいてもそう。枠順の差が結果に直結してしまう。


ダノンベルーガに関してはもうトラックバイアスと、内を回さざるを得ない状況、身体的問題であったことに尽きる。仕上がり自体は話に聞いていたように本当に良かった。返し馬もいい

普通に考えれば左回りのダービーは大歓迎で有力馬の一頭だ。勝ち負けになる。ただ今回仕上がり過ぎていたのもまた事実で、反動も大きいはず。ここから作り直して1カ月でまたMAXに持ってこられるか、厩舎力が試される。

MAXでなかったのは2着イクイノックスも一緒。休み明け、ある程度できていたが、もう一段、二段上があるデキ。馬場のいいところを通ったとはいえ、8割強の仕上がりでこの差の2着なら次、上がれば頂点まである。

ここで難しいのはジオグリフの扱い。今回は福永が完璧過ぎた。レースプラン通り、たぶん会心の騎乗。イクイノックスの後ろに入って、馬場のいいところを終始使っての1着。

ここからダービーで勝つ、となるとイクイノックスとダノンベルーガのどちらかを上手く使う必要が出てくる。加えてノドの懸念もある。まだダービー馬は決まっていない

ドウデュースは距離を見据えた乗り方というのもあるが、前の馬の並びなど、全てが悪いほうに転んでいた。それでいて上がり3F33.8。馬場を考えればかなり速い。

ただし、写真で見て分かるように3コーナー、4コーナーまで前が壁になっていて動かなかった影響もある。そこからのピッチの速さは特筆モノだが、上がりがいい=中団だったら差し切れたかはまた別の話

仮にオニャンコのポジションだったら、自分から捕まえにいく立場になる分、上がり3Fはもっと掛かっている。乗りやすい馬ではあるのだが、2400mのダービーでどこまで攻めた騎乗をしてくるか、そこがポイントになってくる

ダービーの見どころだね、武豊の延長戦は唸らせられる騎乗が多いから、どう乗るか、という部分が楽しみ。


息を入れて5着だったアスクビクターモアにダービーでの逆転の目はほぼないと思う。それよりデキ8割で内を突いて13着だったキラーアビリティのほうが、次以降楽しみが持てる。アスクビクターモアはセントライト記念でまた会おう

あとは16着デシエルト。躓いてハナに行けず、他馬と並ぶとヒートアップする悪い癖が出ていて勝負にならなかった。ハナを切れた場合、近年の若葉S最高の数字だったことを考えると一変までありうる。かなり走る馬。ハナかどうかで結果は変わるが、注視しておきたい1頭だよ。

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